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参考答案 事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕 問題33 攻防対象論――上訴審における職権調査の限界

事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕
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【参考答案】

1 本件において、控訴裁判所が起訴事実の全部について有罪とするには、甲罪部分が控訴審に移審していることが必要である。
 もっとも、被告人が控訴理由として争っているのは、有罪とされた乙罪部分のみであり、検察官も理由中で無罪とされた甲罪部分について控訴していない。また、刑事訴訟法(以下法令名省略)357条は裁判の一部に対する上訴を認めている。そこで、本件の被告人による控訴が乙罪部分のみを対象とする一部上訴となり、甲罪部分には控訴の効力が及ばないのではないかが問題となる。

 2(1) 357条にいう裁判の一部に対する上訴とは、可分な判決主文の一部に対する上訴をいうと解する。
 そして、観念的競合の関係にある数罪について、一部を有罪とし、他の部分を理由中で無罪とした場合、主文は有罪部分について刑を言い渡す一個のものである。そのため、理由中で無罪とされた部分のみを切り離して確定させることはできず、控訴提起の効力は公訴事実の全部に及ぶと解する。

  (2) 本件において、甲罪と乙罪とは観念的競合の関係にある。そして、第1審判決は、甲罪については理由中で無罪と判断し、乙罪についてのみ有罪を主文で言い渡す一個の有罪判決である。
 したがって、被告人の控訴提起の効力は甲罪部分にも及び、甲罪を含む公訴事実の全部が控訴審に移審している。

 3(1) では、甲罪について、控訴裁判所が392条2項に基づく職権調査を行い、甲罪を有罪とすることができるか。

  (2) 控訴審は、第1審と同じ立場で事件そのものを審理する続審ではなく、当事者が主張した控訴理由を中心として第1審判決の当否を審査する事後審である。また、現行刑事訴訟法は当事者主義を基本としており、同項による職権調査は、その補充的なものにとどまる。
 そこで、第1審において理由中で無罪とされた犯罪事実について、被告人には不服を申し立てる利益がなく、検察官も控訴を申し立てていない場合には、その部分は当事者間の攻防の対象から外されたものと解すべきである。このような部分を控訴裁判所が職権で調査して有罪とすることは、被告人に不意打ちを与えるため、職権調査をすることはできないと解する。

  (3) 本件では、甲罪について第1審が無罪と判断しているため、被告人には甲罪部分について控訴する利益がない。他方、甲罪を有罪とする利益を有する検察官も、甲罪部分について控訴を申し立てていない。したがって、甲罪の成否は当事者間の攻防の対象から外されている。
 したがって、控訴裁判所は、甲罪部分について職権調査を行い、これを有罪とすることはできない。

4 よって、第1審判決を破棄して、甲罪および乙罪の双方について有罪とする自判をすることはできない。

以上

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