【参考答案】
1 検察官Pが、弁護人甲に対し、被疑者乙を現に取調べ中であることを理由に、接見日時を「翌日午前10時から12時までの間の60分間」と指定した措置は適法か。
被疑者を取調べ中であることが、刑事訴訟法(以下、法令名省略)39条3項本文の「捜査のため必要があるとき」に当たるかが問題となる。
2(1) 接見交通権は、弁護士等の援助を受ける機会を確保する弁護士依頼権(憲法34条前段)の保障に由来する重要な権利である。他方で、被疑者の身体拘束には厳格な時間的制約が課されていることから、接見指定制度の趣旨は、捜査権行使と接見交通権の行使との調整を図る点にあると解される。
したがって、「捜査のため必要があるとき」(39条3項本文)とは、接見等を認めることにより、捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られると解する。
具体的には、接見等の申出を受けた時に、①捜査機関が現に被疑者を取調べ中であったり、実況見分等に立ち会わせている場合や、②間近い時に右取調べ等をする確実な予定があり、申出に沿った接見等を認めたのでは予定どおり開始できなくなるおそれがある場合には、原則として捜査に顕著な支障が生ずる場合に当たると解する。
(2) 本件において、検察官Pは、弁護人甲から接見の申出を受けた際、被疑者乙を収賄事件について現に取調べ中であった。したがって、上記①の「捜査機関が現に被疑者を取調べ中」である場合に該当し、接見をそのまま認めれば取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずるため、原則として「捜査のため必要があるとき」の要件を充足する。
3(1) もっとも、接見指定の要件充足性が認められる場合であっても、その指定内容が「被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなもの」であってはならない(39条3項但書)。そこで、接見日時を「翌日午前10時から12時までの間の60分間」と指定したことが、「防禦の準備をする権利を不当に制限するようなもの」に当たらないか、その意義が明らかでなく、問題となる。
(2) 接見指定制度の趣旨が捜査権行使と接見交通権の行使との調整を図る点にあることに鑑み、不当な制限に当たるか否かは、(ⅰ)申出がなされた接見の重要性と、(ⅱ)即時又は近接した時点での接見を認めた場合の捜査への支障の程度の双方を考慮して判断されるべきである。
とりわけ、初回接見は、弁護人選任を目的とし、かつ、今後の取調べを受けるに当たっての助言を得る最初の機会であって、憲法上の保障の出発点を成すものである。
そこで、捜査機関は弁護人等と協議し、接見時間を指定すれば捜査への顕著な支障を回避できるかを検討すべきであり、これが可能なときは、特段の事情がない限り、短時間でも時間を指定して即時又は近接した時点での接見を認めるべきである。
(3) 検察官Pは接見日時等について弁護人甲と協議しようとしたが、甲がこれに応じなかった。甲が協議に応じなかった以上、Pが協議することなく一方的に接見指定をしたこと自体は、やむを得ない措置といえる。
しかし、本件接見は勾留2日目の申出であり逮捕直後ではないものの、被疑者乙には甲のほかに弁護人は選任されておらず、乙にとって初めての接見であった。そのため、本件接見が今後の取調べを受けるに当たっての助言を得る最初の機会であることに変わりはなく、(ⅰ)接見の重要性は極めて高い。
確かに、Pは乙を現に取調べ中であったが、比較的短時間取調べを中断するなどして接見時間をやり繰りすれば、(ⅱ)捜査への顕著な支障が生じるのを避けることは可能であったといえる。また、施設管理上の特段の事情もうかがわれない。
そうであるならば、Pは、即時でなくとも、少なくとも直近の休憩時などの近接した時点で、時間を指定した上で短時間の接見を認めるよう検討すべきであった。にもかかわらず、Pが「翌日午前10時」という遅い日時を指定したことは、乙の防御準備権を不当に制限するものである。
4 よって、Pの上記接見指定は、39条3項但書に違反し、違法である。
以上

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