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参考答案 事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕 問題15 訴因変更の要否

事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕
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【参考答案】

1 裁判所は、建造物侵入・窃盗の共同正犯の訴因について、訴因変更手続を経ることなく、同各罪の幇助犯を認定することができるか。
 本件訴因は、被告人が「甲と共謀の上」、甲と共同して乙百貨店に侵入し、宝石10点を窃取したという事実である。これに対し、裁判所が認定しようとするのは、被告人が、犯行前に甲へ乙百貨店の警備に関する情報を漏示し、甲による建造物侵入・窃盗を容易にしたという事実である。
 そこで、被告人の具体的関与行為及び共犯形態が、共同正犯から幇助犯へと変動する場合に、訴因変更を要するかが問題となる。

2 当事者主義(刑事訴訟法(以下法令名省略)256条6項、298条1項等参照)の下、審判対象は検察官が設定した具体的事実である訴因である。そのため、訴因事実と裁判所の認定しようとする事実との間に、審判対象の画定に必要な事項について実質的な差異がある場合には、原則として訴因変更を要する(312条1項)。
 もっとも、裁判所の認定しようとする事実が訴因事実に包含される場合には、検察官は、当該認定事実についても黙示的・予備的に主張していたとみることができる。この場合、裁判所による認定は、訴因と異なる事実の認定ではなく、訴因どおりの認定の一態様であるといえる。そこで、訴因事実と認定事実との間に、構成要件及び具体的事実の包摂・被包摂関係が認められる場合には、縮小認定として訴因変更を要しないと解する。
 ただし、縮小認定であっても、認定しようとする事実が審理における攻撃防御の範囲外にあり、被告人に不意打ちを与える場合には、裁判所は、当該事実を争点として顕在化させ、被告人に防御の機会を与える必要がある。

 3(1) 本件訴因は、被告人が甲と共謀し、甲と共同して乙百貨店に侵入して宝石10点を窃取したという、建造物侵入・窃盗の共同正犯の事実である。これに対し、裁判所が認定しようとする事実は、被告人が甲との共謀に至らず、犯行の2日前に甲へ乙百貨店の警備情報を漏示し、甲による建造物侵入・窃盗を容易にしたという各幇助の事実である。
 共同正犯と幇助犯とでは、刑法60条による共同正犯と刑法62条による幇助犯という関与形態の相違があり、さらに、被告人の具体的行為の日時、場所及び内容にも差がある。しかし、いずれの事実も、甲が乙百貨店に侵入し、同所から宝石10点を窃取したという同一の正犯行為を対象とするものである。また、認定事実は、被告人が正犯行為の全部について共同正犯として責任を負うとの訴因から、警備情報の漏示によって甲の犯行を容易にした限度で責任を負うとの事実へ、被告人の関与の程度を縮小するものである。
 したがって、建造物侵入・窃盗の各幇助事実は、その各共同正犯の訴因に黙示的・予備的に含まれていると評価でき、縮小認定として訴因変更を要しない。

  (2) もっとも、縮小認定であっても、争点明確化による不意打ち防止の要請は働く。
 本件において、裁判所が認定しようとする警備情報の漏示は、被告人自身が弁解として主張していた事実である。そのため、被告人は、当該事実が審理・認定の対象となることを認識しており、これについて防御する機会も有していたといえ、不意打ちとならない。また、幇助犯の認定は共同正犯の訴因と比べて被告人にとってより不利益な認定でもない。

4 よって、裁判所は、訴因変更手続を経ることなく、被告人について建造物侵入・窃盗の各幇助の事実を認定することができる。

以上

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