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令和8年度司法試験「受験実感」――CBT移行後第1回を受験して感じたこと

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1 はじめに

 令和8年司法試験から、論文式試験がCBT方式に移行しました。
 私自身、受験前に大学院の授業等でCBT体験版を利用し体験していました。しかし、実際に本番を受験してみると、事前の練習だけでは分からなかった点や、想定していなかった注意点があることに気付きました。
 そこで、本記事では、CBT移行後第1回となる司法試験を実際に受験して感じたことを、「受験実感」としてまとめてみようと思います。
 もっとも、司法試験会場は各都道府県に設置されており※、使用される機器や会場内の環境には差異があると考えられます。また、翌年度以降も同じシステム・運用が継続されるとは限りません。以下は、あくまで私が受験した会場における令和8年度司法試験の体験に基づくものです。実際に受験する際は、必ず当該年度の受験案内等を確認してください。

※ 司法試験会場は、各都道府県に設置されることが予定されていますが、受験希望者数が極めて少ないことを理由に試験会場を設置しない決定がなされることがあるようです。第1回では、青森県と島根県で試験会場が設置されなかったようです。

2 答案画面について

(1) 条文表示は消した方が使いやすい

 試験開始時には、問題文と答案欄に加え、条文を表示する欄も開かれていました。
 もっとも、今回は手元に紙媒体の六法が配布されていました。そのため、画面上にも条文を常時表示しておく必要性はあまり感じませんでした。むしろ、条文欄を表示していると、答案欄の表示範囲が狭くなり、入力しずらいと感じました。そのため、私は、画面上の条文表示を消し、問題文と答案欄を広く表示した方が使いやすいと感じました。
 一方で、後述の通り、条文はコピー・ペーストが可能であったため、条文を答案上に引用する際に表示して使用するのは有効だと思われます。
 ただし、当初は六法も画面上で参照する方式が予定されていたため、翌年度以降も紙媒体の六法が配布されるかは分かりません。

(2) 残り時間は画面右上に表示される 

 私の会場では、時計を試験室内に持ち込むことが禁止されていました。もっとも、残り時間は画面右上に常時表示されていました。そのため、時計を持ち込めないことによる不便は全く感じませんでした。
 なお、試験時間が終了すると、自動的に終了画面へ移行します。答案を保存したり、提出ボタンを押したりする操作は必要ありませんでした。

3 文字入力について

 CBTでは手書きの負担がなくなる一方で、文字入力特有の注意点に気付きました。特に、普段使用しているパソコンの入力環境に慣れている人ほど、注意が必要だと感じます。

(1)  キーボードによってはミスタッチが増える

 私の会場で使用されていたキーボードは、サンワサプライの「SKB-SL19BK」でした。普段使用しているキーボードとの配置の違いかミスタッチが増えました。
 もちろん、会場によって使用されるキーボードは異なる可能性が高いです。そのため、特定のキーボードを購入して練習する必要まではないと思います。

(2) 変換履歴や予測変換に頼ることができない

 本番の端末では、変換履歴が残らず、予測変換が使用できないようでした。そのため、普段の感覚で変換を使用すると、誤字となってしまうことが多々ありました。
 例えば、「原始取得」と入力しようとした際に、第一候補が「原子取得」と変換されるなどです。普段の使用しているパソコンでは、過去の入力履歴によって正しい法律用語が候補に出やすくなっていたため、本番では想像していた以上に変換結果を確認する必要がありました。

(3) ファンクションキーは使用できなかった

 私の会場では、ファンクションキーを使用できませんでした。私は普段、入力した文字をカタカナに変換する際にF7キーを使用しています。しかし、本番ではF7キーを使うことができませんでした。
 普段、ファンクションキーを利用して変換している人は、変換されず戸惑うかもしれません。

(4) 問題文はコピーできない

 自分が入力した答案部分と、画面上に表示された条文は、コピー・ペーストをすることができました。
 一方で、問題文の文章をコピーして答案欄へ貼り付けることはできませんでした。そのため、問題文中の事情を答案で引用・摘示する場合には、自分で入力する必要があります。

(5) 使用できる書式には制限がある

 答案欄では、インデントを付すことができませんでした。
 また、一般的な文書作成ソフトのような禁則処理もありません。行の折返し位置によっては、句読点が行頭に表示されることもありました。
 他には、半角の括弧や数字を入力した場合には、答案欄上では自動的に全角へ変換されるよう処理されているようです。
 さらに、私は条文等の一部を省略する際に「……」を用いることがありますが、本番では「……は入力できません」という趣旨の表示がされ、入力することができませんでした。
 もっとも、唯一困ったのは「……」の使用不可のみであり、これらの制限により困ることはほとんどないと感じました。

4 答案構成用紙と問題文へのマーキング

(1) 答案構成用紙は十分な大きさだった

 答案構成用紙は、A3サイズの両面を使用できました。
 私はもともと、詳細な答案構成をほとんど書かず、頭の中で構成を考えながら答案を書くことが多いため、用紙の大きさについて不便は感じませんでした。

(2) 問題文への線引きは可能だが、操作性はよくない

 問題文には、マウス操作によって書き込みやマーキングをすることができました。もっとも、紙の問題冊子にペンで線を引く場合と比べると、操作性は圧倒的に劣ります。
 ハイライトは、直線に補正されるため問題を感じませんでしたが、問題文に文字等を書き込むのは難しいと考えておいた方がよいと思います。

5 答案作成速度と身体的負担

 私の場合、CBTによって手書きの場合と比べて、答案を書く速度は上がりました。また、身体的な負担も手書き試験より少なくなったと感じます。
 ただし、私は、他の受験生と比べても手書きが遅い方である一方、タッチタイピングはできます。そのため、CBT移行による恩恵を比較的大きく受けた可能性があります。この点は、タイピング速度や手書き速度によって個人差が大きいため、一概にはいえません。

6 会場の環境

(1) 座席間隔とタイピング音

 隣の受験生との距離は比較的近めでしたが、各座席にはパーティションが設置されているため、気になりませんでした。
 また、周囲の受験生が一斉に答案を入力するため、当然ながらタイピング音は聞こえます。私はそれほど気になりませんでしたが、音が気になる方は、耳栓を持参しておくと安心だと思います。

(2) 机と椅子

 机はやや狭めでしたが、受験に支障を感じるほどではありませんでした。キーボードの位置等を調整すれば、紙媒体の六法を置くスペースも十分に確保できました。
 また、椅子の高さは調整できましたが、私の会場ではモニターの高さや角度を調整することはできませんでした。

(3) 室温

 会場内はエアコンが利いており、比較的涼しい環境でした。
 座席の位置や個人差によっては、寒いと感じる人もいると思います。上着などを持参し、体温を調整できるようにしておくとよさそうです。

(4) 荷物はロッカーに預ける

 私の会場では、荷物を試験室内へ持ち込むことはできませんでした。
 会場内の待機所にあるロッカーに荷物を預けたうえで、持込みが認められた物品だけを持って試験室へ移動する形式でした。
 ただ、私の会場は受験者数が20名程度と少ない会場であったため、このような運用になったのかもしれません。

(5) 飲料は水に限られていた

 私の会場で試験室内に持ち込むことができた飲料は、ラベルを剝がしたペットボトル入りの水のみでした。お茶やその他の飲料を持ち込むことはできませんでした。
 従来受験した予備試験と比べて、飲料の制限が厳しいように感じました。ただし、会場や年度によって運用が異なる可能性があるため、受験前に必ず当該年度の案内を確認する必要があります。

7 端末に不具合が生じた場合の対応

 私自身の端末には、試験中に不具合は生じませんでした。
 もっとも、近くの受験生の端末には、何らかの不具合が生じたようでした。その受験生については、他の受験生が試験を終了して退出した後も、答案の入力を続けることが認められていました。したがって、少なくとも私の会場では、端末の不具合によって失われた時間について、試験時間を延長する対応がされていました。

8 CBT体験版と本番との違い

 事前に公開されていたCBT体験版は、全体として本番の試験環境に近いものでした。そのため、受験前には一度触っておくと本番の際に操作法を確認する必要がなく安心できると思います。
 また、本番では、体験版で気になった挿入時の動作等が改善されており、システムが改良されていることも感じました。

9 短答式試験について

 短答式試験については、問題文と解答番号が画面上に表示され、選択した番号をクリックして解答する形式でした。
 基本的な問題の解き方や時間配分は、従来の短答式試験と大きく変わらないと感じました。もっとも、解答方法と試験後の自己採点については、CBT化による変更があります。

(1) マークシートを塗りつぶす必要がなくなった

 従来の短答式試験では、選択した解答をマークシートに塗りつぶす必要がありました。CBTでは、画面上で解答番号を選択すればよいため、マークを塗りつぶす時間や負担はなくなりました。
 また、従来は、問題番号とマークシートの解答欄がずれたまま解答してしまうおそれがありました。CBTでは、各問題に対応する画面上の解答欄を選択するため、少なくとも、マークシート特有の「塗りつぶす解答欄がずれていた」というミスは生じなくなったといえそうです。
 そのため、解答番号の選択という点では、従来よりも負担が小さくなったと感じました。

(2) 自己採点をするには、解答番号をメモする必要がある

 CBT化による大きな変更は、試験後の自己採点方法です。
 従来の短答式試験では、紙の問題冊子が配布されていました。そのため、問題を検討する際に、自分が選択した解答へ印を付けておけば、試験後に問題冊子を見ながら自己採点することができました。
 これに対し、CBTでは問題文も電子化されており、試験終了後に手元へ残るのは検討用紙だけです。画面上でどの番号を選択したかという記録を、試験後に確認することはできません。
 したがって、試験後に自己採点をしたい場合には、試験時間中に、自分が解答した番号を検討用紙へメモしておく必要があります。
 もっとも、解答番号をメモする作業にも時間がかかります。特に、試験時間中に余裕がない場合、自己採点用の記録ができないおそれがあります。
 そのため、自己採点をしたい人は、解答番号を控えておく必要があること、控える時間が必要となることを覚えておくとよさそうです。

(3) 短答式については、従来からの対策を大きく変える必要はない

 以上のような変更はありますが、問題を読み、選択肢の正誤を判断して解答するという短答式試験の本質は、従来と大きく変わりませんでした。CBT化に対応するために、短答式の学習方法を変更する必要はないと思います。
 もっとも、画面上で問題文を読むことや、クリックによって解答番号を選択することには、事前に慣れておくと安心だと感じました。

10 個人的な受験の反省と今後について

※ 本項目は、CBTの操作や会場環境とは直接関係のない、私個人の受験に対する反省です。CBTに関する情報のみを確認したい方は、読み飛ばしていただいて構いません。

 今回の司法試験を受験して最も強く感じたのは、単純に勉強不足であったということです。 
 本番の環境で、問題文を読んでも検討すべき事項を十分に拾えなかったり、必要な知識を正確に思い出せなかったり、答案としてどのように処理すべきか分からなかったりする場面が多くありました。これは、受験以前の基礎知識と問題処理の練習不足にほかなりません。

 試験結果が出る前の段階で合否を断定することはできませんが、少なくとも、合格を期待できるほどの手応えがあったとはいえません。今年の受験については、厳しい結果も覚悟しています。
 もっとも、今回実際に受験したことで、自身の課題がより浮き彫りになったと感じます。今後は、基礎知識を改めて整理するとともに、より実践的な練習を重ねていくつもりです。
 ブログについても、これまでどおり参考答案を投稿するだけでなく、今回の受験で明らかになった自身の課題を踏まえ、より学習に活用しやすい形へ改善していきたいと考えています。ブログの整備を自分自身の学習にもつなげながら、来年も見据えて継続して取り組んでいきます。
 今後も、その過程を温かく見守っていただければ幸いです。

11 おわりに

  実際に受験するまでは、CBTへの移行に伴い、従来とは大きく異なる対策が必要になるのではないかと心配していました。
 しかし、実際に受験してみると、答案作成システムそのものは比較的使いやすいと感じました。少なくとも、CBTに対応するために、これまでの学習方法や答案作成方法を根本から変える必要はないと思います。
 もっとも、事前にCBT体験版を利用し、基本的な操作を確認したうえで、パソコンを使った答案作成にある程度慣れておくことは必要だと感じました。
 CBTであることを過度に不安視する必要はありませんが、何の確認もせずに本番を迎えるのではなく、普段とは異なる入力環境でも答案を書けるよう、最低限の準備をしておくと安心だと思います。
 本記事が、次年度以降に司法試験を受験する方の準備に少しでも役立てば幸いです。

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