目次
【答案構成】
第1 文1 小問(1)について
1 設問に対する応答(Xは、Y社に対し、2021年11月15日開催の定時株主総会(以下、「本件総会」という。)における取締役選任決議の取消しの訴え(会社法(以下法令名省略)831条1項1号)を提起すべき)
2 当てはめ(Y社=取締役会設置会社→298条4項により、株主総会招集には取締役会決議が必要→本件総会の招集は取締役会決議を経ずに代表取締役A限りで行われた→298条4項違反認定。
Y社=全株式譲渡制限会社かつ非公開会社→299条1項により、招集通知は総会の1週間前までに行わなければならない→11月15日開催の総会の通知が発せられたのは同月10日→法定の招集期間不充足→299条1項違反認定。)
3 結論(第1-2で認定した2点の法令違反=株主総会の招集手続が「法令……に違反」(831条1項1号)する取消事由該当→本件総会決議の取消しの訴えを提起すべき。)
第2 文1 小問(2)について
1 問題提起(第1における本件総会招集手続の法令違反につき、裁量棄却(831条2項)が認められるか。)
2 当てはめ(取締役会決議の欠缺と法定招集期間の不遵守という瑕疵は、株主に対して総会への出席と準備の機会を保障するという、株主の基本的な権利を確保するための重要な手続に関するもの→その違反事実は「重大」なものと評価すべき=「違反する事実が重大でな」いとはいえない。)
3 結論(裁判所はXの請求を裁量棄却すべきでない。)
第3 文2について
1 問題提起(訴訟の係属中に生じた事情変更により、Xの訴えの利益が消滅しないか。)
2 規範定立(取締役選任決議取消しの訴えの利益に関する原則と瑕疵連鎖による特別の事情)
3 当てはめ(先行決議の取消しの訴えの係属中、当該決議で選任された取締役A・B・Cは任期満了退任→2023年の後行決議で再任。=原則によれば、Xの訴えは訴えの利益を失う。
先行決議が取り消されたとすると、Aらは取締役としての地位を遡及的に喪失→後行決議の招集決定は、取締役としての地位を有さない者による招集=瑕疵→後行決議自体の効力も争い得る状態。
→Xが瑕疵連鎖を主張し、後行決議の効力を争う訴えを併合提起するなど、後行決議の効力を争う意思を明確にすれば、「特別の事情」あり→先行決議の取消しを求める訴えの利益は維持される。)
4 結論(Xが後行決議の効力まで争うか否かにより、訴えの帰趨は左右される。)
【参考答案】
第1 文1 小問(1)について
1 Xは、Y社に対し、2021年11月15日開催の定時株主総会(以下、「本件総会」という。)における取締役選任決議の取消しの訴え(会社法(以下法令名省略)831条1項1号)を提起すべきである。
2 Y社は取締役会設置会社であるにもかかわらず、本件総会の招集は取締役会決議を経ずに代表取締役A限りで行われている。これは、298条4項に違反する。
また、Y社は全株式譲渡制限会社であり公開会社ではないから、招集通知は総会の1週間前までに行う必要がある。しかし、11月15日開催の総会に対し、通知が発せられたのは同月10日であり、法定の招集期間を満たしていない。これは、299条1項に違反する。
3 したがって、Xは上記2点が、株主総会の招集手続が「法令……に違反」(831条1項1号)するとして、本件総会決議の取消しの訴えを提起すべきである。
第2 文1 小問(2)について
1 第1における本件総会招集手続の法令違反につき、裁量棄却(831条2項)が認められるか。
2 本件における瑕疵は、上記第1で検討したとおり、取締役会決議の欠缺と法定招集期間の不遵守である。これらの瑕疵は、株主に対して総会への出席と準備の機会を保障するという、株主の基本的な権利を確保するための重要な手続に関するものだといえる。したがって、これらの違反事実は「重大」なものと評価すべきであり、「違反する事実が重大でな」いとはいえない。
3 よって、裁判所はXの請求を裁量棄却すべきではない。
第3 文2について
1 Xによる本件総会における取締役選任決議取消の訴え継続中において、後任の取締役が選任された場合、Xが取消しを求めていた2021年決議によって選任された取締役は、全員その任期を満了して退任したことになる。そこで、訴訟の係属中に生じた事情の変更によって、2021年決議の取消しを求める実益が失われ、Xの訴えの利益が消滅するのではないか問題となる。
2 取締役選任決議取消しの訴えは、当該決議により選任された取締役の地位を失わせることを主な目的としている。そのため、訴訟の係属中に当該決議によって選任された取締役の全員が任期満了などによって現存しなくなった場合には、特別の事情がない限り、もはや決議を取り消す実益はなくなり、訴えの利益は失われる。
もっとも、先行する取締役選任決議(以下「先行決議」という。)の取消判決が確定すると、その効力は遡及するため(839条)、先行決議は当初から無効であったことになる。その結果、先行決議で選任された取締役によって招集・開催された後任の取締役選任決議(以下「後行決議」という。)の手続にもその瑕疵が及ぶ。
そうすると、先行決議の取消事由の有無が後行決議の効力を判断する上での先決問題と位置づけられ、先行決議の取消訴訟に後行決議の効力を争う訴えが追加的に併合されているなど、原告が後行決議の効力をも争う意思が明確である場合には、先行決議を取り消すことになお実益が認められるから、特別の事情があるといえ、先行決議の取消しを求める訴えの利益は失われないと解すべきである。
3 本件では、Xが2021年に行われた先行決議の取消しの訴えを提起している間に、当該決議で選任された取締役A・B・Cは任期満了で退任し、2023年の後行決議で再任されている。そのため、原則によれば、Xの訴えは訴えの利益を失うことになる。
しかし、先行決議が取り消されれば、その決議で選任されたAらは取締役としての地位を遡及的に失う。そうすると、権限のないAらが参加して行われた後行決議の招集決定には瑕疵が生じ、後行決議自体の効力もまた争われ得る状態となる。
したがって、Xがこの瑕疵の連鎖を主張して、後行決議の効力を争う訴えを併合提起するなど、後行決議の効力を争う意思を明確にすれば、特別の事情が認められ、先行決議の取消しを求める訴えの利益は維持される。
4 よって、Xが後行決議の効力まで争うか否かによって、訴えの利益の有無、すなわち訴えの帰趨は左右されることになる。
以上

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