参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題36 取締役会の承認決議のない利益相反取引の効力

目次

【答案構成】

 1 問題提起(CのY社に対する本件土地返還請求権が認められるには、①X社・B社間の本件土地の売買契約が無効かつ、②その無効を転得者Y社に対抗できることが必要)

2(1) 前提(356条1項2号が定める「第三者のために」株式会社と取引をする場合=第三者の名義において取引をすること。
 →本件取引は、X社「取締役」であるA₂が、A₂が代表取締役を務める「第三者」であるB社の「ために」、X社との間で行う売買契約である。
 =本件取引は利益相反取引。X社=取締役会設置会社→取締役会において当該取引につき重要な事実を開示+承認が必要(365条1項)。⇔本件では取締役会が招集されておらず、承認は存在しない。
 →問題提起(取締役会の承認を欠く利益相反取引の効力がどのように解されるか)

(2) 規範定立(取締役会の承認を欠く利益相反取引の効力)

(3) 当てはめ(本件取引はX・B社間では無効。転得者Y社は悪意として、対抗可能か。
 →B社代表取締役A₂とY社代表取締役は、同じ秘密結社の長と構成員という極めて密接な関係。+B社は本件土地を地価の半額という不当に安い価格で取得し、Y社に地価相当額で転売。
 →A₂とY社の代表取締役が通謀し、X社を犠牲にして不当な利益を得て、それを分け合う意図があった→Y社は、本件取引がX社の利益相反取引に該当すること、および取締役会の承認がないことにつき悪意であったと評価。
 →Y社は悪意の第三者に当たり、X社はY社に対し、X・B間の本件土地取引の無効を対抗可能。)

 3 結論

 

【参考答案】

 1 X社代表取締役Cは、Y社に対し、所有権(民法206条)に基づく物権的請求権としての本件土地返還請求を求めることが考えられる。
 この請求が認められるためには、①X社・B社間の本件土地の売買契約)以下「本件取引」という。)が無効であり、②その無効を転得者であるY社に対抗できることが必要となる。

2(1) 356条1項2号が定める「第三者のために」株式会社と取引をする場合とは、第三者の名義において取引をすることを意味する。
 本件取引は、X社「取締役」であるA₂が、A₂が代表取締役を務める「第三者」であるB社の「ために」、X社との間で行う売買契約である。
 したがって、本件取引は利益相反取引にあたり、X社が取締役会設置会社である以上、取引に先立ち、取締役会において当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければない(365条1項)。にもかかわらず、本件では取締役会が招集されておらず、承認は存在しない。
 そこで、取締役会の承認を欠く利益相反取引の私法上の効力がどのように解されるかが問題となる。

(2) 356条1項の趣旨は、取締役による地位の濫用を防止し、会社利益を保護することにある。一方で、取引安全の観点との調和を図る必要もある。
 そこで、原則として会社との関係では無効となるものの、会社は善意の第三者に対してはその無効を対抗できないと解する。

(3) 本件取引はX社とB社との関係では無効となる。では、転得者であるY社に対抗することができるか。
 B社代表取締役であるA₂と、Y社代表取締役は、同じ秘密結社の長とその構成員という極めて密接な関係にある。さらに、B社は本件土地を地価の半額という不当に安い価格で取得し、それをY社に地価相当額で転売している。
 これらの事情からすれば、A₂とY社の代表取締役が通謀し、X社を犠牲にして不当な利益を得て、それを分け合う意図があったといえる。そうであれば、Y社は、本件取引がX社の利益相反取引に該当すること、および取締役会の承認がないことにつき悪意であったと評価できる。
 したがって、Y社は悪意の第三者に当たり、X社はY社に対し、X・B間の本件土地取引の無効を対抗することができる。

 3 よって、本件土地の所有権は依然としてX社にあり、X社代表取締役Cは、Y社に対して、所有権に基づき本件土地の返還を請求することができる。

以上

コメント