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参考答案 事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕 問題10 逮捕に伴う無令状捜索・差押え(2)

事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕
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【参考答案】

第1 小問(1)について

1 Kは、Gを通常逮捕(刑事訴訟法(以下法令名省略)199条)したNホテル411号室において、同室に居合わせた第三者Xの抵抗を排除し、Xのズボンのポケットに手を入れるなどしてその身体を捜索し、発見した大麻草を差押えている。
 そこで、逮捕現場に居合わせた第三者Xの身体に対する無令状捜索及び引き続く差押えが、220条1項2号・3項により許されるかかが問題となる。

2 220条1項2号・3項による逮捕に伴う無令状捜索差押えが令状主義(218条1項、憲法35条)の例外として許されている趣旨は、逮捕の現場には、被疑事実と関連する証拠が存在する蓋然性が一般的に高く、令状請求を行った場合、「正当な理由」(憲法35条)が認められるのが通常であることから、裁判官による令状審査を経るまでの必要がないためである。
 したがって、220条1項2号による無令状捜索の対象は、一般的・類型的にみて、逮捕事実と関連する証拠が存在する蓋然性が高い場所、身体又は物に限られると解する。
 そして、逮捕現場に居合わせた第三者の身体には、逮捕事実と関連する証拠が存在する蓋然性が一般的・類型的に高いとはいえないから、第三者の身体は、原則として同号による捜索の対象にはならない。
 もっとも、第三者が捜索・差押えの目的物を身体に隠匿した高度の蓋然性が認められる場合には、捜索に対する妨害を排除し、原状を回復するための「必要な処分」(222条1項、111条1項)として、必要かつ相当な限度で第三者の身体に有形力を行使することができると解する。

3 本件において、XはGの友人であり、GとNホテル411号室に同宿していたものの、このことから直ちに、XがGの覚醒剤取締法違反の被疑事実と関連する証拠を所持しているとはいえない。また、Xは、Gの逮捕及び室内の捜索中、右手をズボンのポケットに差し入れたまま出そうとしなかった。しかし、この事情からは、Xが何らかの物を所持している可能性は認められるとしても、それがGの逮捕事実と関連する証拠であることまでは認められない。
 加えて、Xが、411号室に存在した捜索・差押えの目的物をズボンのポケットへ隠匿したことをうかがわせる事情もないから、妨害排除・原状回復のための必要な処分としてXの身体に有形力を行使できる場合にも当たらない。
 以上より、KがXの抵抗を排除し、ズボンのポケットに手を入れるなどして行った本件身体捜索は違法である。そして、Kは、この違法な身体捜索によって大麻草を発見し、その発見を根拠としてXを現行犯逮捕した上、直ちに同大麻草を差し押さえている。したがって、本件捜索と一体として行われた大麻草の差押えも違法である。

第2 小問(2)について

1 警察官Lは、公道上でYを通常逮捕(199条)した後、約1km離れた最寄りの警察署へYを連行した上で、身体・所持品を捜索し、盗品を差し押さえている。本件逮捕事実は、窃盗罪であり、Yの身体・所持品には盗品等の被疑事実関連証拠が存在する蓋然性が高く、捜索・差押えの必要性があり、差押対象物も盗品の一部であり、逮捕事実との関連性を有する証拠物に当たる。
 そこで、逮捕現場から離れた警察署で行われた本件捜索・差押えを220条1項2号にいう「逮捕の現場」における捜索・差押えと同視することができるかが問題となる。

2 220条1項2号は、逮捕に伴う無令状の捜索・差押えを「逮捕の現場で」行うことを要求しているから、逮捕現場から離れた場所における処分は、原則として許されない。
 もっとも、逮捕した被疑者の身体又は所持品に対する捜索・差押えについて、逮捕現場付近の状況に照らし、被疑者の名誉等を害し、被疑者らの抵抗による混乱を生じ、又は現場付近の交通を妨げるおそれがあるなど、その場で直ちに処分を実施することが適当でない事情がある場合には、220条1項2号に基づく捜索・差押えを実効的に行うための付随的措置として、被疑者を速やかに処分の実施に適する最寄りの場所まで連行することができると解する。
 そして、連行先において、逮捕現場で発生し、その行使が留保されていた捜索・差押えの権限を行使することは、「逮捕の現場」における捜索・差押えと同視することができ、適法であると解する。

3 本件において、本件捜索・差押えの対象は、被逮捕者であるYの身体及び所持品である。また、LがYを連行した警察署は、逮捕場所から約1km離れた最寄りの警察署であるから、処分の実施に適する最寄りの場所であると認められる。そして、問題文上、連行に不相当な遅延があったことをうかがわせる事情もない。
 もっとも、問題文からは、公道上で直ちに捜索・差押えを行うことにより、Yの名誉等を害し、Yの抵抗による混乱を生じ、又は現場付近の交通を妨げるおそれがあったなど、その場で処分を実施することが適当でない具体的事情は明らかでない。
 そこで、その場で処分を実施することが適当でない具体的事情が認められる場合には、本件捜索・差押えは「逮捕の現場」における捜索・差押えと同視することができ適法である。他方、そのような事情が認められない場合には、本件捜索・差押えは「逮捕の現場」におけるものとは同視できず、違法である。

以上

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