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参考答案 事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕 問題9 逮捕に伴う無令状捜索・差押え(1)

事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕
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【参考答案】

1 本件において、KはXを覚醒剤所持で現行犯逮捕(刑事訴訟法(以下法令名省略)212条1項)した後、捜索差押許可状の発付を受けることなく、X方の応接間、書斎、寝室等を捜索し、覚醒剤、天秤及びビニール袋を差し押さえている。
 そこで、これらの捜索・差押えが、逮捕に伴う無令状捜索・差押えを認める220条1項2号・3項により適法となるか。①応接間以外の各部屋が捜索の許される「逮捕の現場」(220条1項2号)に含まれるか、②覚醒剤、天秤及びビニール袋が無令状で差し押さえることのできる物に当たるかが問題となる。

 2(1) まず、Xを現行犯逮捕した応接間以外の各部屋が「逮捕の現場」(220条1項2号)に含まれるか。「逮捕の現場」の範囲が明らかでなく問題となる。

 (2) 220条1項2号・3項による逮捕に伴う無令状捜索差押えが令状主義(218条1項、憲法35条)の例外として許されている趣旨は、逮捕の現場には、被疑事実と関連する証拠が存在する蓋然性が一般的に高く、令状請求を行った場合、「正当な理由」(憲法35条)が認められるのが通常であることから、裁判官による令状審査を経るまでの必要がないためである。
 したがって、「逮捕の現場」とは、現実に逮捕が行われた地点だけでなく、逮捕場所と同一の管理権の下にあり、逮捕事実と関連する証拠が存在する蓋然性が認められる範囲に及ぶと解する。

 (3) 本件において、Kは、X方の応接間において、Xを覚醒剤所持の現行犯人として適法に逮捕している。
 そして、応接間、書斎及び寝室は、いずれも一つの住居であるX方を構成する部屋であり、Xの一個の管理権の下にある。また、Xが自宅で覚醒剤を所持していたことからすれば、X方の他の部屋にも、他の覚醒剤や、覚醒剤の保管・計量等に用いられる物など、覚醒剤所持の事実と関連する証拠が存在する蓋然性が認められる。
 したがって、書斎及び寝室を含むX方の各部屋は、「逮捕の現場」に含まれ、Kがこれらの部屋を無令状で捜索したことは適法である。

 3(1) では、覚醒剤、天秤及びビニール袋を差押えることが認められるか。220条1項2号による差押えについては、222条1項により99条1項が準用されるため、差押えの対象は「証拠物又は没収すべき物と思料するもの」でなければならない。
 また、逮捕に伴う無令状差押えが、逮捕の現場には逮捕事実と関連する証拠が存在する蓋然性が高いことを根拠として認められる以上、差し押さえる物には、逮捕事実との関連性が必要であると解する。

 (2) Xが所持していた覚醒剤は、覚醒剤所持という逮捕事実を直接証明する物であるから、逮捕事実との関連性を有する証拠物に当たる。また、天秤は覚醒剤を計量するために、ビニール袋は覚醒剤を小分けにして保管するために用いられ得る物である。これらが、Xが覚醒剤所持の現行犯人として逮捕されたX方の寝室から発見されたことを併せ考えれば、Xによる覚醒剤の所持態様や取扱状況を明らかにする物として、逮捕事実との関連性を有する。
 したがって、覚醒剤、天秤及びビニール袋はいずれも、無令状で差し押さえることのできる証拠物に当たり、その差押えは適法である。

4 以上より、KがX方の応接間、書斎、寝室等の各部屋を捜索し、覚醒剤、天秤及びビニール袋を差し押さえたことは、いずれも適法である。

以上

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