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参考答案 基礎演習行政法〔第2版〕第Ⅳ部 国家補償 第2問 国家賠償法2条

目次

【答案構成】

第1 設問1について

1 原則的な賠償主体の提示(国(国賠法2条1項、高速自動車国道法6条))

2 費用負担者の責任(A県(国賠法3条1項、高速自動車国道法20条1項))

3 結論(Xは、国とA県を被告とすることができる)

第2 設問2について

1 請求の趣旨(国賠法2条1項に基づく損害賠償請求)+要件の提示

 2(1) 規範定立(要件①「公の営造物」の意義)

  (2) 当てはめ

 3(1) 規範定立(要件②「設置又は管理の瑕疵」の意義)

  (2) 当てはめ

4 当てはめ(要件③「損害の発生」と因果関係)

5 結論

第3 設問3について

1 被告の反論の趣旨の提示

 2(1) 反論①(利用状況)

  (2) 反論②(講じていた対策)

  (3) 反論③(対策の困難性・予算)

3 結論

 

【参考答案】

第1 設問1について

1 国家賠償法(以下「国賠法」という。)2条1項は、「国又は公共団体」が損害賠償責任を負うと規定する。本件自動車道は、高速自動車国道法6条に基づき国の行政機関である国土交通大臣が管理するものであるから、その設置・管理の瑕疵から生じた損害について、まず国が賠償責任を負う。
 したがって、Xは国を被告とすることができる。

2 これに加えて、国賠法3条1項は、公の営造物の設置・管理の「費用を負担する者もまた」、損害賠償の責任を負うと規定する。そして、高速自動車国道法(以下「法」という。)20条1項によれば、高速自動車国道の管理費用については、国だけでなく都道府県も負担する場合があるとされている。

3 よって、本件自動車道の管理費用をA県が負担している場合には、Xは国に加えてA県も被告とすることができる。

第2 設問2について

1 Xは、本件自動車道の設置又は管理の瑕疵により損害を被ったとして、国賠法2条1項に基づき損害賠償を請求する。
 その要件は、①「公の営造物」の②「設置又は管理に瑕疵があつた」ために③「他人に損害を生じた」ことである。

 2(1) 「公の営造物」とは、国や公共団体によって直接、公共の目的のために使われる有体物や物的施設をいう。

  (2) 本件で問題となっている物は、高速自動車国道という有体物ないし物的施設であって、直接、公用に供されており、その管理主体は国の機関たる国土交通大臣である。
 したがって本件自動車道は国家賠償法2条1項の「公の営造物」に該当する。

 3(1) 国賠法2条1項にいう「設置又は管理に瑕疵があつた」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態をいう。
 そして、通常有すべき安全性を欠いているか否かは、当該営造物の構造、用法、場所的環境、利用状況等の諸般の事情を総合考慮して、個別・具体的に判断する。

  (2) 本件自動車道は、法4条にいう「自動車の高速交通の用に供する道路」であり、最高速度が時速80キロとされ、人の通行が禁止され(法17条)、立体交差が原則とされる(法10条)など、一般道とは異なり、車両の高速走行が予定されている。
 そのため、道路管理者は高速走行を阻害し、重大事故を誘発しかねない障害物が本線に侵入することを防ぐべき高度の安全確保義務を負うといえる。
 にも関わらず、本件道路には金網の柵と地面との間に約10cmの隙間があり、地面がコンクリートで覆われていなかったため、キツネ等の小動物が容易に侵入しうる状態にあった。これは、高速走行の安全性を確保すべき道路の構造に問題があったと評価できる。
 本件区間では毎年約40件のロードキルが発生しており、道路管理者としては、動物の侵入が常態化していることを認識していたはずである。加えて、本件自動車道では平成6年にロードキルに起因する死亡事故が現に1件発生しており、動物の侵入が重大な人身事故につながる危険性を具体的に予見できたといえる。 また、動物保護団体からは、地面との隙間がない金網の設置やコンクリートによる被覆といった、危険を回避するための具体的な対策が提案されていた。にもかかわらず、道路管理者は、有効な対策を講じることなく放置していた。したがって、結果回避義務に違反したといえる。
 さらに、その対策費用が約1億円であったとしても、本件自動車道のような人工公物の場合、予算の制約は設置管理の瑕疵を否定する理由にはならないと解されているから、予算の制約を理由に瑕疵の存在を否定することはできない。
 以上の諸事情を総合考慮すれば、本件自動車道は、高速自動車国道として通常有すべき安全性を欠いており、その「設置・管理に瑕疵があつた」と評価できる。

4 そして、上記瑕疵である小動物が侵入しうる危険な状態が放置されていたことが原因となって、Xはキツネを避けようとして中央分離帯に激突し、重傷を負うという損害を被っている。
 したがって、瑕疵と損害との間には相当因果関係も認められる。

5 よって、国家賠償法2条1項の要件をすべて充足するため、Xは損害賠償を請求できると主張する。

第3 設問3について

1 Xの主張に対し、被告は、以下の諸般の事情を総合考慮すれば、本件自動車道は通常有すべき安全性を欠いておらず、「設置・管理に瑕疵」はなかったと主張する。

 2(1) 本件区間では、毎年約40件のロードキルが発生していたものの、これに起因する死亡事故はこれまで1件も発生していなかった。本件自動車道全体で見ても、死亡事故は平成6年の1件のみである。このことは、仮に動物が本線に侵入したとしても、通常は運転者の適切な運転操作によって事故が回避できていたことを示しており、道路の安全性が決定的に欠如していたとはいえない。

  (2) 事故現場付近には動物注意の標識が設置されており、道路管理者として、運転者に対し動物の飛び出しへの注意を促すという最低限の措置は講じていた。

  (3) 動物保護団体が提案した対策は、全国の道路及び本件自動車道においても、広く普及しているものではなかった。このような一般的に採用されていない対策を講じていなかったからといって、直ちに管理に瑕疵があったとはいえない。
 また、過去の事故後に防止策が議論された際、有効な対策には約1億円という多額の支出を伴うことが判明している。限られた予算の中で道路全体の安全性を確保する必要があることからすれば、発生頻度の極めて低い事故の対策に多額の費用を投じるという判断をしなかったことには合理性があり、この点をもって瑕疵があったと評価すべきではない。

3 以上の事情を総合考慮すれば、本件自動車道は通常有すべき安全性を欠くものではなく、その「設置・管理に瑕疵」はなかったといえ、国賠法2条1項の要件②を欠くから、Xによる国賠法2条1項に基づく損害賠償請求は認められない。

以上

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