目次
【答案構成】
第1 設問1について
1 目的:許可処分を得ること+申請に対する処分済
→申請満足型義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)を選択
2 申請満足型義務付け訴訟の訴訟要件として、併合提起が必要
3 出訴期間内のため、取消訴訟を選択するのが適切
第2 設問2について
1 申請満足型義務付け訴訟の本案勝訴要件①・②
2 ①=併合提起する取消訴訟の本案勝訴要件を充足=「処分の違法」
第3 設問3について
1 規範定立(要件裁量の定義と有無の判断基準)
2 当てはめ
3 結論
第4 設問4について
1 規範定立(効果裁量の定義と有無の判断基準)
2 当てはめ
3 結論
第5 設問5について
1 主張すべき内容の提示
2 本案勝訴要件① 処分の違法性(取消訴訟の主張)について
(1) 規範定立(裁量権の逸脱濫用)
(2) 当てはめ・小結論(本案勝訴要件①の充足)
3(1) 本案勝訴要件②について
(2) 許可処分をすべきであったことの解釈
(3) 小結論(本案勝訴要件②の充足)
4 結論
【参考答案】
第1 設問1について
1 Xは、掘削許可(温泉法(以下「法」とする)3条1項)を得るという目的を達成するため、甲山県知事に対し、許可処分を義務付ける判決を求める必要がある。そして、本件では申請に対する拒否処分がなされているから、申請満足型義務付け訴訟(行政事件訴訟法(以下「行訴法」とする)3条6項2号)を提起すべきである。
2 申請満足型義務付け訴訟を提起するには、拒否処分の取消訴訟または無効等確認訴訟を併合提起しなければならない(行訴法37条の3第3項)。
3 本件では拒否処分がされた直後であり、取消訴訟の出訴期間(行訴法14条1項)を経過していないため、無効確認ではなく取消訴訟を併合提起するのが適切である。
よって、Xは拒否処分の取消訴訟と申請満足型義務付け訴訟を併合提起すべきである。
第2 設問2について
1 申請満足型義務付け訴訟の本案勝訴要件は、①併合提起した「請求に理由がある」ことに加え、②羈束処分の場合、処分・裁決をすべきことが根拠規定から明らかであること又は、裁量処分の場合、処分・裁決をしないことが裁量権の逸脱・濫用であることである(行訴法37条の3第5項)。
2 ①の併合提起した「請求に理由がある」ということは、併合提起する取消訴訟の本案勝訴要件を充足するということ、すなわち、処分が違法であることをいう。
そして、処分の違法性につき、裁量処分であっても、裁量権の逸脱・濫用があった場合には同処分は違法となる(行訴法30条)。
第3 設問3について
1 要件裁量とは、法定された処分要件が満たされているか否かの判断について、行政庁に認められる判断の余地をいう。行政裁量の有無は、処分の根拠法令の文言、処分の内容および性質を考慮して決せられる。
2 温泉法4条1項3号は、許可の消極要件として「公益を害するおそれがあると認めるとき」と規定しており、「公益」という不確定概念を用いている。
そして、同法1条の目的規定や、同条項1号、2号が温泉保護や災害防止という専門技術的な事項を掲げていることからすれば、3号の「公益」の内容も、これらに関連する専門技術的な見地から判断されるべきものである。このような専門技術的判断については、行政庁の判断が尊重されるべきであるから、同号の要件該当性の判断につき、行政庁の裁量が認められる。
3 よって、温泉法3条1項に基づく掘削許可について要件裁量は認められる。
第4 設問4について
1 効果裁量とは、処分をするか否かや、いかなる処分をするかの判断について、行政庁に認められる判断の余地をいう。行政裁量の有無は、処分の根拠法令の文言、処分の内容および性質を考慮して決せられる。
2 温泉法4条1項は「当該申請が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、同項の許可をしなければならない」と規定している。これは、法定された拒否事由に該当しない限り、行政庁は申請者に対し許可を与える法的義務を負うことを意味する。
したがって、法定の拒否事由がないにもかかわらず、行政庁が許可をするか否かを任意に選択する余地は認められない。
3 よって、温泉法3条1項に基づく掘削許可について効果裁量は認められない。
第5 設問5について
1 Xは、本件拒否処分の取消訴訟及び申請満足型義務付け訴訟において、本案上の主張として、本件拒否処分が裁量権の逸脱・濫用にあたり違法であり、かつ、甲山県知事はXに対し掘削許可をすべき法的義務を負う旨、以下のように主張することが考えられる。
2(1) 本件拒否処分には、要件裁量が認められるものの、裁量権の逸脱・濫用があれば違法となる(行訴法30条)。具体的には、行政庁の裁量判断は、無制約なものではなく、当該処分の根拠となる法律の趣旨・目的に従って行使されなければならず(目的拘束の法理)、判断の過程において、法律の目的とは関係のない事項を考慮して(他事考慮)処分を行った場合には、その処分は裁量権の逸脱・濫用として違法となる。
(2) 温泉法1条は、同法の目的を「温泉を保護し、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止し、及び温泉の利用の適正を図る」ことにあると定めている。したがって、同法4条1項3号の「公益」の有無を判断するにあたっても、この法目的に関連する事項、すなわち温泉の保護や災害防止等の観点から考慮がされるべきである。
しかし、甲山県知事は、本件処分の理由として、これら温泉法の目的とは直接関係のない「交通状況等、地元住民の生活環境の悪化」という事項を考慮している。これは、同法が考慮することを予定していない事項を考慮したものであり、「他事考慮」にあたる。
よって、本件拒否処分は、裁量権の逸脱・濫用として違法である。
3(1) 上記2に加え、甲山県知事は本件申請に対し許可処分をすべき法的義務を負っていたといえる。
(2) まず、知事が唯一の拒否理由として挙げた「生活環境の悪化」は、他事考慮であり、温泉法4条1項3号の拒否事由として考慮することは許されない。そして、問題文の前提によれば、これ以外に同号の要件を充足しうる事情は存在しない。したがって、同号に定める拒否事由は存在しない。また、問題文の前提によれば、温泉法4条1項1号、2号、4号~6号に定める他の全ての拒否事由にも該当しない。
そして、設問4で論じた通り、温泉法4条1項は「……の場合を除き、……許可をしなければならない」と定めており、効果裁量が認められないから、法定の拒否事由が存在しない以上、知事が任意に許可を拒否する余地はない。
(3) したがって、本件申請には温泉法4条1項に定められた法定の拒否事由が一切存在せず、かつ効果裁量も認められないから、甲山県知事はXに対し、掘削許可をすべき法的義務を負っていたといえ、本件許可処分をしないことは、裁量権の逸脱濫用となる。
4 よって、設問2において示した本案勝訴要件は、取消訴訟及び義務付け訴訟のいずれにおいても充足されるから、Xの請求は認められるべきである。
以上

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