目次
【答案構成】
第1 設問1について
1 情報公開法と情報公開条例の適用関係の提示
2 当てはめ(本件ではA市教育委員会(地方公共団体の機関)が保有する文書を対象とすることの指摘)
3 結論
第2 設問2について
1 なし得る不服申立ての種類=審査請求であることの指摘
2 不服申立先=処分庁であるA市教育委員会(∵上級行政庁が存在しない)
3 結論
第3 設問3について
1 Xの目的→申請満足型義務付け訴訟を提起すべき
2(1) 訴訟要件として併合提起を要することの指摘(行訴法37条の3第3項)
(2) 本件では、出訴期間内であるため、取消訴訟を併合提起すべき
3(1) 被告適格=処分庁が所属する国or公共団体(行訴法11条1項)
(2) 被告=A市(∵処分庁であるA市教育委員会はA市に所属)
4 結論
第4 設問4について
1 本件訴訟の本案勝訴要件充足を基礎づける本件非公開決定が違法かつ公開義務を負うことを主張すべき
2(1) 問題提起(義務付け訴訟の要件(行訴法37条の3第5項)として、まず取消訴訟の請求に理由があること(非公開決定の違法性)を主張する)
(2) 規範定立(条例9条2号の「他の情報と照合」の解釈)
(3) 当てはめ(本件文書は非公開情報に該当しないこと及び要件裁量の否定)
(4) 小結論(取消訴訟の請求に理由があること充足)
3(1) 問題提起(公開決定をすべきことが「法令の規定から明らか」といえるか)
(2) 条例の構造から効果裁量が否定されることの指摘
(3) 本件決定には要件・効果に裁量が認められない=羈束行為であり、非公開決定が違法である以上、公開義務は明らかである→「法令の規定から明らか」の要件充足。
結論(以上のように主張し、本案勝訴要件充足を基礎づけるべきである)
【参考答案】
第1 設問1について
1 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)は、国の行政機関が保有する行政文書を対象とする(情報公開法2条1項、3条)。
他方、地方公共団体の機関が保有する情報には、当該地方公共団体が定める情報公開条例が適用される。
2 本件でXが開示を求めている本件文書は、A市教育委員会が保有する文書である。そして、A市教育委員会は、A市という地方公共団体の機関(A市行政情報公開条例(以下「本件条例」という。)2条1項)である。
3 したがって、本件に適用されるのは、本件条例である。
第2 設問2について
1 まず、行政不服審査法上、処分に対する不服申立てとしては、審査請求、再調査の請求、再審査請求がある(行政不服審査法1条2項)。このうち、再調査の請求及び再審査請求は法律に特別の定めがある場合にのみ可能であるが(行政不服審査法5条1項、6条1項)、本問ではそのような定めはない。
よって、Xがなし得る不服申立ては審査請求である。
2 次に、審査請求は、原則として処分庁に、上級行政庁がない場合には当該処分庁に対して行う(行政不服審査法4条1号)。
本件における処分庁は、非公開決定を行ったA市教育委員会である。そして、地方公共団体は相互に独立した法人格を有するため、都道府県の教育委員会が市町村の教育委員会の上級行政庁となることはなく、地方自治法は執行機関の多元主義を採用しており、各執行機関は独立して事務を執行するため、A市長がA市教育委員会の上級行政庁となることもないから、A市教育委員会に上級行政庁は存在しない。
そのため、XはA市教育委員会に対して審査請求を行うことになる。
3 以上より、Xは、A市教育委員会に対して、審査請求をすべきである。
第3 設問3について
1 Xの目的は、本件文書を公開してもらうことにある。この目的を訴訟によって直接実現するためには、行政庁に対し、本件文書を公開するという処分をなすべき旨を命ずる判決を求める義務付け訴訟(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条6項)を提起することが最も適切である。
そして、本件はXによる情報公開請求(条例5条)という「申請」に対し、非公開決定という「処分がされた場合」にあたるから、提起すべきは申請満足型義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)となる。
2(1) 申請満足型義務付け訴訟は、単独で提起することはできず、取消訴訟または無効等確認訴訟を併合して提起しなければならない(行訴法37条の3第3項2号)。
(2) 本件では、A市教育委員会による非公開決定という処分が現に存在しており、Xは「直ちに」法的手段をとろうとしていることから出訴期間内(行訴法14条)であると考えられる。したがって、本件非公開決定の効力を失わせるため、義務付け訴訟に取消訴訟を併合提起するのが適切である。
3(1) また、これらの訴訟の被告は、「当該処分をした行政庁が所属する国または公共団体」(行訴法11条1項1号、38条1項)である。
(2) 本件における処分庁はA市教育委員会であり、これは公共団体であるA市に所属しているから、本訴訟はA市に対して提起すべきである。
4 よって、Xは、A市を被告として、公開決定を命ずる義務付け訴訟を提起するとともに、本件非公開決定の取消訴訟を併合提起すべきである。
第4 設問4について
1 Xは、上記3の訴訟において、本件非公開決定が違法であり、A市教育委員会は本件文書を公開すべき義務を負うことを本案上の主張として、以下の通り主張すべきである。
2(1) 申請満足型義務付け訴訟が認容されるためには、併合提起した取消訴訟の請求に理由があること、すなわち本件非公開決定が違法であることが本案勝訴要件の一つとされている(行訴法37条の3第5項)。
そこで、本件非公開決定は、本件文書が本件条例9条2号所定の非公開情報に該当しないにもかかわらず、これに該当するとしてなされた点において、違法であると主張すべきである。
(2) 本件条例9条2号は、非公開情報として、個人に関する情報であって「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む」と規定する。そして、A市教育委員会は、関係者が「特別な調査」を行えば個人が識別されうることを根拠に、本件文書がこれに該当すると主張する。
しかし、「特別な調査」により得られる情報まで含めてしまうと、ほとんどの情報が非公開情報となりえ、市民の知る権利を保障するという本件条例の趣旨(1条、3条2項)が没却される。そのため、「他の情報と照合」とは、一般人が通常の手段で入手しうる情報との照合を意味すると解すべきである。
(3) 本件文書は、中学校別のいじめの認知件数を記載した統計情報にすぎず、通常入手しうる他の情報と照合しても、特定の個人を識別することはできない。したがって、本件文書は本件条例9条2号の非公開情報に該当しない。
加えて、本件条例9条2号の非公開事由に該当するか否かの判断は、専門技術的ないし政策的な判断を要するものではなく、裁判所による法解釈及び事実認定が可能な事柄であるからであるから、要件裁量は認められない。
(4) 以上の通り、本件文書は非公開情報に該当せず、要件を充足しないにも関わらず、要件を充足するとしてなされた本件非公開決定は違法である。
3(1) では、「行政庁がその処分……をすべきであることがその処分……の根拠となる法令の規定から明らか」と認められるか(行訴法37条の3第5項)。
(2) 本件条例は、市民の知る権利を保障し(本件条例1条)、公開を原則とする(本件条例3条2項)。その上で、非公開事由に該当しない限りは行政情報を公開しなければならないと定めている(本件条例9条柱書)。
このような条例の構造から、行政庁が非公開事由に該当しない情報を公益上の理由など独自の判断で非公開とすることは許されておらず、効果裁量も否定される。
(3) したがって、本件非公開決定は行政庁の裁量が認められない羈束行為である。そのため、本件非公開決定が要件不充足により違法である以上、行政庁であるA市教育委員会は本件文書の公開決定をすべき義務を負うことは、本件条例の規定から明らかである。
よって、義務付け訴訟の本案勝訴要件(行訴法37条の3第5項)を充足する。
以上

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