目次
【答案構成】
第1 設問1について
1 Xによる違法性主張(実体法上の違法・手続法上の違法)の提示
2(1) 実体法上の違法として、法律の留保の原則違反を主張する
(2) 規範定立:法律の留保の原則(侵害留保説)
(3) 当てはめ(本件調査における有形力行使の事実を指摘し、砂利採取法が間接強制調査の仕組みを採ることから、直接強制を許容しない趣旨であると解釈)
(4) 小結論(法律の留保原則に反し違法)
3(1) 手続法上の違法として、令状主義違反を主張する
(2) 規範定立(行政調査に対する憲法35条1項の保障が及ぶ場合とその判断基準)
(3) 当てはめ(①~③に関する事実の指摘)
第2 設問2について
1 A県による反論の導入
2(1) 反論の提示(処分の適法性は、処分の根拠法令の要件充足性のみによって判断されるべき)
(2) 調査(事実行為)と処分(法律行為)は別個の行為であり、調査の違法は処分の効力に影響を及ぼさないと主張
(3) 小結論(計画違反の事実が存在する以上、処分は要件を充足し適法)
3 政策的議論として、処分を取り消しても同じ処分が繰り返されるだけであり、訴訟経済・行政効率の観点から妥当ではないと主張
4 結論
第3 設問3について
1 Xの再反論の提示(一連の行政過程論と重大な違法による取消事由の主張)
2 規範定立(一連の行政過程論と重大な違法)
3 当てはめ(一連の行政過程であることを認定→違法の重大性を重要な人権侵害・法律の留保原則違反・令状主義違反・行政手続の不公正さから認定)
4 結論
【参考答案】
第1 設問1について
1 Xは、本件調査の違法性について、実体法上の違法及び手続法上の違法の2点を主張することが考えられる。
2(1) 実体法上の違法について、本件調査は法律の留保の原則に反し違法であると主張することが考えられる。
(2) 行政活動には法律の根拠を要するところ、迅速・円滑な行政運営を確保しつつ、国民の自由・権利保護を図るためには、国民の自由・権利を制約し、または新たな義務を課する行政活動に法律の根拠を要すると解する。
(3) 本件調査においては、A県職員BがXを羽交い絞めにしている。これは、相手方の抵抗を物理的に排除する実力行使であり、強制調査としての実質を有する。
そもそも、砂利採取法(以下「法」という。)34条2項に基づく立入検査は、これを拒んだ者に対して罰則を科すことでその実効性を担保する、いわゆる間接強制調査(法46条4号)の仕組みを採っている。法が、あえて間接強制調査という手段を設けているということは、直接強制を許容しない趣旨と解される。
(4) よって、本件調査は法律上の根拠なく行われた、Xの身体の自由を制約する行政活動を伴うものであり、法律の留保の原則に反し違法である。
3(1) 手続法上の違法として、令状主義違反(憲法35条1項)を主張することが考えられる。
(2) 憲法35条は、その文言上、直接には刑事手続についての規定である。しかし、強制による刑事手続を司法権による事前抑制の下に置くという趣旨が行政調査にも及ぶ場合がある。
具体的には、①調査目的、②調査の強制の程度、③目的と手段との比例性等を総合考慮し、憲法35条1項の令状主義の法意が行政調査に及ぶか否かを判断する。
(3) 本件調査は、Xが採取計画に違反しているか否かを確認するという、砂利採取法上の監督という行政目的のための調査であって、直ちに刑事責任を追及する目的ではない(①調査目的)。
また、本件調査においては、A県職員BがXを羽交い絞めにしており、人の身体の自由を制約する有形力の行使であり、その強制の程度は極めて強いものといえる(②調査の強制の程度)。
そして、行政目的の達成のためとはいえ、採取計画の違反という事実の調査のために、人の身体を直接拘束するという強力な手段を用いることは、著しく均衡を欠くものといわざるを得ない。法が間接強制調査という手段しか用意していないことも、このような直接強制は比例性を欠くことから想定されていないためであると解される(③目的と手段との比例性)。
以上を総合考慮すれば、本件調査には、令状主義の保障が及ぶべき事案であると解される。
にも関わらず、本件調査は令状なく行われていることから、本件調査は憲法35条に違反し違法である。
第2 設問2について
1 設問1における本件調査が違法であるというXの主張は争わないという前提に立った場合、A県としては、以下の反論をすることが考えられる。
2(1) 本件処分が適法であるか否かは、あくまで処分の根拠法令である法26条1号の要件を満たすか否かによって判断されるべきである。
本件処分の根拠法令である法26条1号は、処分の要件として「第21条の規定に違反したとき」と規定しており、「砂利採取業者」が「採集計画……に従って砂利の採取を」行わなかったことが、法21条違反となる。
(2) 確かに、Xが採集計画に違反したという事実は違法な本件調査によって得られた情報である。
しかし、調査という事実行為と、処分という法律行為は、その性質を異にする別個の行為であり、法34条2項に基づく本件調査は、法26条1号の処分要件となっていないことから別個の行為である。
そのため、先行する調査手続の違法性は、後行する処分の効力に当然には影響を及ぼさず、違法な本件調査が行われたことによって、Xが計画に違反したという客観的な事実そのものが消滅するわけではない。
(3) よって、法21条違反となるXの採取計画違反の事実が存在する以上、本件処分は要件を充足し、適法な処分である。
3 また、仮に本件調査の違法を理由として本件処分を取消したとしても、Xによる法21条違反がある以上、A県が再度適法な調査を行えば、結局は本件処分と同様の処分が行われる可能性が高い。そうだとすれば、本件処分を取り消すことは、同じ結論を導く手続を繰り返させるにすぎず、無益な手続の反復を強いることになる。これは訴訟経済・行政効率の観点から妥当ではない。
4 よって、本件処分は違法とならない。
第3 設問3について
1 Xは、本件調査(法34条2項)と本件処分(法26条1号)とは一連の行政過程を構成し、本件調査における重大な違法は、後続する本件処分の取消事由となると再反論することが考えられる。
2 憲法31条の定める適正手続の保障は、行政手続にも及ぶと解される。
そして、行政調査とそれに基づく不利益処分が、原因調査から処分に至るまでの一連の手続として行われる場合、先行する調査手続に、後続する処分の効力をも覆すに足りるほどの重大な違法が認められるときには、当該処分もまた適正手続の原理に反し、違法となると解する。
3 前提として、本件調査は、本件処分の前提となる計画違反の事実を把握するために行われたものであり、両者は一体不可分の一連の行政過程を構成する。
本件調査は、Xを羽交い絞めにするという有形力の行使を伴うものであり、身体の自由という重要な人権を制約するものであって、設問1の通り、法律の留保原則違反、令状主義違反が認められる。また、法が定める間接強制手段によらず安易に有形力の行使に及んだという事実は、行政手続全体の公正さに対する国民の信頼を著しく損なうものである。
以上より、本件調査の違法性は、単なる手続上の瑕疵にとどまらず、重大なものであると評価できる。
4 よって、重大な違法を帯びた本件調査に基づいて行われた本件処分は、適正手続の原理に反するものであり、違法として取り消されるべきである。
以上

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