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参考答案 基礎演習行政法〔第2版〕第Ⅳ部 国家補償 第3問 損失補償

目次

【答案構成】

第1 設問1について

1 結論(実質的当事者訴訟(行訴法4条後段)を提起すべき)

2 結論の理由(憲法を根拠とする公法上の法律関係に関する争いかつ、個別法の定めがないため)

第2 設問2について

1 結論(昭和49年判決が補償を不要とした理由は、許可の取消しが財産権の侵害にあたらないと判断したため)

2 理由(目的外使用許可に基づく使用権には、内在的制約あり。公用の必要が生じたことによる取消し=内在的制約の具体化という権利の性質に従った消滅である)

3 判決の論理の提示(財産権の侵害自体が観念できないため、補償は不要)

第3 設問3について

1 A市の主張の枠組み提示(昭和49年判決の射程が本件に及ばず、財産権の侵害も特別の犠牲も観念できない)

 2(1) 昭和49年判決との比較(継続的な使用権の存在⇔一日ごとの単発的な許可)

  (2) Xの利益の法的性質の確定(財産権⇔反射的利益)

3 特別の犠牲の不存在認定

4 結論

 

【参考答案】

第1 設問1について

1 XがA市に対して憲法29条3項に基づき損失補償を請求する場合、その訴訟形式は、実質的当事者訴訟(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)4条後段)によるべきである。

2 Xの請求は、憲法という公法上の根拠に基づき、A市との間に金銭支払義務という法律関係の存否を争うものであるから、当事者訴訟(行訴法4条)に当たる。
 そして、当事者訴訟のうち、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とする形式的当事者訴訟(行訴法4条前段)は、個別の法律にその旨の定めがある場合に限られるところ、本件では、問題文の前提上、損失補償に関する個別法の規定は存在しないから不適である。
 したがって、Xの請求は、当事者訴訟のうち「公法上の法律関係に関する訴訟」(行訴法4条後段)として、実質的当事者訴訟によるべきである。

第2 設問2について

1 最判昭和49年2月5日判決(以下「昭和49年判決」という。)が、行政財産の使用許可の取消しによって被る損失の補償を不要とした理由は、当該使用許可によって与えられた使用権が有する内在的制約に鑑みれば、許可の取消しは補償の対象となる財産権の侵害にはあたらないと判断したためである。

2 行政財産の目的外使用許可は、当該行政財産の「用途又は目的を妨げない限度において」のみ認められるものである(地方自治法238条の4第7項)。そのため、これによって与えられる使用権には、行政財産本来の用途または目的上の必要(公用の必要)が生じた場合には、使用権それ自体が消滅するという内在的制約が課されている。
 したがって、現実に公用の必要が生じたために使用許可が取り消されたとしても、それは内在的制約が具体化したにすぎず、もともと制約を課された権利がその制約に従って消滅したにすぎない。
 これに加えて、使用権者が、なお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情も存しない。

3 以上の理由により、憲法29条3項が補償を要求する「財産権」の侵害自体が観念できず、損失補償は不要であると判示した。

第3 設問3について

1 A市は、Xによる損失補償の訴えを退けるため、以下の主張をすべきである。
 本件のように行政財産の利用に関する損失補償が問題となる事案は、昭和49年判決が先例となるところ、同判決の射程は本件には及ばない。そこで、A市は、同判決との比較して、本件では補償の対象となる財産権(憲法29条1項)の侵害自体が存在せず、したがって特別の犠牲(同条3項)も観念できないと主張すべきである。

 2(1) 昭和49年判決は、目的外使用許可に基づく継続的な使用権の存在を前提として、その権利に内在する制約が具体化したにすぎないとして、財産権の侵害を否定した。
 一方、本件では、Xの利用許可は、A市食肉センター条例施行規則2条2項に基づき「利用日ごとに、その都度、申請し、許可を取得する」仕組みとなっている。
 これは、日々成立・消滅する単発的な法律関係の連続にすぎず、同判決が前提としたような継続的な権利関係は認められない。

  (2) したがって、Xが長年にわたり食肉センターを利用できていたという事実は、A市が当該施設を公共の用に供していたことから生じる反射的利益を享受していたにすぎない。つまり、将来にわたり継続的に利用しうるという法的に保護された地位が、Xに保障されていたわけではないから、A市食肉センターの廃止は、Xが現に有していた権利を奪うものではなく、補償の対象となる「財産権」の侵害には当たらない。

3 また、損失補償とは、適法な公権力の行使により課された財産上の「特別の犠牲」を全体の公平負担の見地から調整する制度であるところ、本件では、上記2の通り、そもそも補償の対象となる財産権への侵害が観念できない以上、その損失が社会生活上一般に受忍すべき限度を超える「特別の犠牲」に当たるということもできない。

4 以上より、Xによる損失補償請求には法的根拠がなく、A市はこれに応じる義務を負わない。

以上

 

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