目次
【答案構成】
第1 設問1について
1 問題提起(本件都市計画決定に行政裁量が認められるか)
2 規範定立(行政裁量の有無)
3 当てはめ(文言、内容・性質の解釈)
4 結論
第2 設問2について
1 設問2に対する端的な解答(Xは本件認可の取消訴訟の本案で、裁量権の逸脱濫用を主張すべき)
2 規範定立(行政裁量の逸脱濫用が違法となる場合)
3(1) 考慮遺脱該当事由
(2) 反論
(3) 小括(本件都市計画決定は裁量権の逸脱濫用として違法)
4 本件都市計画決定違法性と本件認可との関係について
(1) 本件認可の要件規定について
(2) 規範定立(法61条1号「都市計画」の解釈)
(3) 当てはめ(法61条1号の要件不充足)・結論
【参考答案】
第1 設問1について
1 本件において、A県が行った都市計画決定(以下、「本件都市計画決定」という)(法18条1項)に裁量が認められるか。
2 行政裁量の有無は、行政活動の根拠法令の文言、行政活動の内容および性質等を考慮して決される。
3 法2条は、「健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべき」等の基本理念を定め、その理念の下、都市計画は「当該都市の特質を考慮し、……都市施設の整備……に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを、一体的かつ総合的に定めなければならない」(13条1項柱書)とする。そして、都市計画策定の際の考慮事項として「土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置」(同条項11号)することや「調査結果に……配慮する」(同条19号)ことが定められている。
これらの規定は包括的・抽象的であり、A県に判断の余地を与えている文言となっている。また、将来の人口予測や交通量予測といった技術的判断のみならず、地域の特性、農林漁業との調和といった様々な要素を比較衡量し、総合的かつ政策的に判断し、都市計画を決定することが不可欠である。
4 したがって、本件都市計画決定には、裁量が認められる。
第2 設問2について
1 Xは本件認可の取消訴訟の中で、本件都市計画決定には設問1の通り裁量が認められるものの、裁量権の逸脱濫用があり違法であると主張すべきである。
2 仮に裁量が認められる場合であっても、逸脱濫用があれば違法となる(行政事件訴訟法30条)。具体的には、裁量判断の前提となる事実に重大な事実誤認がある場合、裁量判断の過程において、行政庁が考慮すべき事情を考慮せず(考慮遺脱)、考慮してはならない事情を考慮して(他事考慮)裁量処分を行っている場合には、当該行政行為は裁量権の逸脱濫用により違法となる。
3(1) A県は本件都市計画決定を行うにあたり、平成25年の基礎調査結果を用いた一方で、審議会では平成28年1月には算出されていた将来人口が半分程度にまで減少するという最新の人口予測を考慮しなかった。これは、考慮遺脱に該当する。
(2) これに対し、A県は「おおむね5年ごとに」行われた基礎調査に基づき(法6条1項)、都市計画の中で都市施設を定める(法13条1項11号、同条項19号)と規定しており、平成28年1月算出の人口予測は法6条1項に規定された基礎調査はないから、考慮せずとも考慮逸脱とはならないと反論すると考える。
(3) しかし、法が基礎調査(6条1項)や他の調査への配慮(13条1項19号)を定める趣旨は、都市計画を常に変化する社会の実情に合わせて適切なものにする点にある。
そうであるならば、将来人口が半分になるという計画の根幹、特に「適切な規模」(法13条1項11号)に関わる重大な最新情報が存在する以上、それを全く考慮しないことは、この法の趣旨に反すると言わざるを得ない。そのため、平成28年の最新人口予測は、本件において考慮すべき事情であるといえる。
これらのことから、考慮すべき重要たる最新の人口予測を全く考慮しなかったことは、本件都市計画決定の判断過程における重大な瑕疵であり、その結果として下された本件都市計画決定は、将来の必要性を著しく欠く可能性のある道路計画であり、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといえる。
仮にA県が「最新データを考慮しても結論は変わらなかった」と反論したとしても、将来人口が半減すれば道路の規模や必要性そのものに影響が出る可能性は十分にあり、結論が変わらなかったとは断定できない。
したがって、本件都市計画決定は、裁量権の逸脱・濫用として違法である。
4(1) 上記の通り、本件都市計画決定は裁量権の逸脱・濫用により違法である。
そして、本件認可は、国土交通大臣が都市計画事業の施行を認めるものであり、その認可にあたっては、「事業の内容が都市計画に適合」していることが要件とされている(法61条1号)。
(2) 法61条1号が事業の都市計画への適合を求めるのは、法律による行政の原理に基づき、都市計画法が目指す適正な都市整備を実現するためであるから、ここにいう「都市計画」とは、適法な都市計画を指すと解すべきである。
(3) そうであるならば、本件のように、その前提となる本件都市計画決定自体が違法である場合には、本件事業が適法な都市計画に適合しているとはいえず、本件認可は法61条1号の要件を欠くものとして違法となる。
したがって、Xは、本件認可の取消を求めることができる。
以上

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