参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題9 株主平等の原則

目次

【答案構成】

第1 小問(1)について

1 問題提起(本件契約は、株主平等原則違反として無効とならないか)

2 規範定立(株主平等原則違反行為の効力と判断基準)

 3(1) 当てはめ(行為の目的についての評価)

  (2) 当てはめ(不平等の程度についての評価)

4 結論

第2 小問(2)について

1 問題提起(本件株主優待制度が株主平等原則違反として無効か)

2 規範定立(株主平等原則違反の効力と判断基準)

 3(1) 当てはめ(行為の目的についての評価)

  (2) 当てはめ(不平等の程度についての評価)

4 結論

 

【参考答案】

第1 小問(1)について

1 株主X・Y社間の本件契約は、他の株主にはない経済的利益をXにのみ与えるものであり、株主平等の原則(会社法(以下法令名省略)109条1項)に反し、無効とならないか。

2 109条1項は、株式会社が株主を、その有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱わなければならないという株主平等の原則を定めている。同原則は、会社の基本原則であり、強行法規と解されるため、これに違反する会社の行為は原則として無効となる。
 ただし、株主平等原則も絶対のものでなく、合理的理由に基づく一定の区別は許容される。具体的に株主平等原則に反するか否かは、目的・不平等の程度等を考慮して合理的理由があるか否かにより判断する。

 3(1) 本件契約は、取締役の再任議案に不満を示す大株主Xの賛成を取り付け、株主総会の円滑な運営を図るという目的で締結されている。加えて、この契約は取締役会等の正規の意思決定を経ておらず、代表取締役Aの独断で、他の株主には秘密裏に進められている。このことから、本件契約が会社の正当な業務執行とは到底いえないと評価できる。
 したがって、本件契約の目的は、会社の事業運営上の合理的な理由に基づくものではなく、特定の株主の権利行使(議決権行使)に影響を与えるための、不当な目的であるといわざるを得ない。

  (2) また、Y社は業績悪化により、X以外の他の株主に対しては剰余金の配当を一切行っていない。にもかかわらず、本件契約は、Xに対してのみ過去の配当額とほぼ同額の金員を支払うという内容になっている。本件契約により、他の株主との間に生じている経済的な不利益の差は極めて大きく、その不平等の程度は著しい。

4 以上より、本件契約はその目的において合理性がなく、不平等の程度も甚だしいことから、合理的理由なく特定の株主を優遇するものといえ、株主平等原則に違反する。
 よって、本件契約は無効であるから、XはYに対し、本件契約に基づく金員の支払を請求することはできない。

第2 小問(2)について

1 金員の支払いに代えて、持株数に応じて傾斜配分される株主優待制度を導入した場合、株主平等の原則(109条1項)に反し、無効とならないか。

2 株主平等原則は、会社の基本原則であり、強行法規と解されるため、これに違反する会社の行為は原則として無効となる。
 そして、株主優待制度は、株主数の増加や自社製品の宣伝といった合理的な経営上の目的があり、株主間の不平等の程度が社会通念上相当な範囲にとどまるものであれば、実質的には株主平等の原則に違反しないと解される。

 3(1) 本件株主優待制度は、その導入経緯が小問(1)と同様であることから、株主数の増加や宣伝といった合理的な経営上の目的があったとは考え難い。むしろ、取締役再任議案に不満を示す大株主Xを優遇し、その賛成を取り付けるという特定の株主の権利行使に関する不当な目的があったと評価すべきである。
 加えて、その内容は、持株数が多い株主ほど1株あたりの優待額が著しく高くなるように設計されている。具体的には、1000株株主の配当額から1株あたり0.05円が配当額となるところ、200万株株主には、1株あたり10倍の額が支払われている。このような極端な不平等は、社会通念上の相当性を逸脱している。
 以上のように、本件優待制度は、その目的においても、内容においても合理性を欠くことから、その実質において剰余金の配当と評価するのが相当である。

  (2) そして、ある行為が実質的に現物配当と評価される場合には、会社の裁量が広く認められる株主平等原則(109条1項)ではなく、剰余金配当の場合における具体的規定である454条3項の厳格な持株数比例原則が直接適用されるべきである。
 本制度は、1株あたりの優待額が株主間で全く平等ではないから、この持株数比例原則に明白に違反している。

4 よって、本件株主優待制度は無効である。

以上

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