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参考答案 基礎演習行政法〔第2版〕第Ⅱ部 本案前の主張 第6問 狭義の訴えの利益(2)

目次

【答案構成】

第1 設問1について

1 結論(執行停止の申立て(行訴法25条2項)をすべきであった)

2 理由(執行不停止原則(行訴法25条1項)より、訴えの利益が消滅するのを防止するため)

第2 設問2について

1 導入部分

2 理由(建築確認(先行処分)と後行手続は一体のものではないことを指摘→建築確認の法的効果効果=工事の一般的禁止の解除のみであり、工事完了により法的効果が消滅するため、訴えの利益が認められない)

第3 設問3について

1 B県による主張①・②の提示

2 B県主張①への反論(判例と異なり、先行処分と後行手続が一体として、工事完了後も法的効果が残存→訴えの利益が認められる。)

3 B県主張②への反論(原状回復が社会通念上困難であるとの事情は、訴えの利益を否定する事情ではない)

4 結論

 

【参考答案】

第1 設問1について

1 本件で狭義の訴えの利益の問題が生じないようにするため、Xは、本件免許の取消訴訟の提起にあわせて、執行停止の申立て(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)25条2項)をすべきであった。

2 取消訴訟の提起は、処分の効力や手続の続行を妨げない(執行不停止原則、行訴法25条1項)ため、埋立工事が続行し、完了することで、「処分……の効果が期間の経過……によりなくなつた後」(行訴法9条1項括弧書)」に当たり、狭義の訴えの利益が消滅するという問題が生じるおそれがある。
 そのため、Xは執行停止の申立てを併せて行い、本件免許の効力や埋立工事の続行を暫定的に停止させることで、訴訟係属中に工事が完了してしまう事態を防ぎ、取消判決によって得られる法律上の利益を保全しておくべきであったといえる。

第2 設問2について

1 判例が、建築工事の完了によって建築確認の取消しを求める狭義の訴えの利益が消滅すると判示した理由は、以下の通りである。

2 建築基準法上の手続きを見ると、工事完了後に行われる検査済証の交付(建築基準法7条)や、特定行政庁による違反建築物に対する是正命令(建築基準法9条1項)は、いずれも、現に存在する建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているか否かを基準として判断される。これらは、過去になされた建築確認が適法であったか否か、あるいは建築確認に係る計画どおりのものであるかを直接の判断基準とするものではない。
 このことから、たとえ本案判決で建築確認が違法であるとして取り消されたとしても、そのこと自体から、行政庁に対して検査済証の交付を拒否したり、是正命令を発したりすべき法的な拘束力が当然に生じるわけではない。そのため、先行処分たる建築確認と、工事完了後の後続手続きとは、法的に切断されているといえる。
 したがって、建築確認には、それを受けなければ当該工事をすることができないという一般的禁止を解除する法的効果のみが付与されており、建築工事の完了により禁止解除という建築確認の法的効果は消滅し、残存しないから「回復すべき法律上の利益」が認められないと判示した。

第3 設問3について

1 B県は、①設問2判例の射程が及び、狭義の訴えの利益が認められない、または②工事完了後の原状回復は社会的・経済的観点から不可能であるから訴えの利益が認められないと主張するものと考える。このB県の主張に対し、Xは以下のように反論すべきである。

2 確かに、公有水面埋立免許(以下「本件免許」)は、埋立工事を行うための禁止を解除する法的効果を有する(公有水面埋立法(以下「法」という。)2条1項)が、それに加えて、有効な免許の存在を前提として、竣功認可の申請(法22条1項)がなされ、竣功認可の告示によって免許を受けた者は埋立地の所有権を原始取得する(法24条1項)という法効果が認められている。さらに、その所有権の移転等も定められており(法27条1項)、知事による是正命令等の監督権限(法32条1項)も、有効な免許の存在と、そこに付された条件を基準として行使される。
 上記のように、本件免許と竣功認可や所有権取得といった後行手続・法的効果とは、法的に密接に連動している。したがって、先行処分と後続手続が法的に切断されており、法的効果の残存がないことを理由に訴えの利益を否定した設問2判例の射程は、本件には及ばない。
 そして、本件免許を取り消すことで、その後に残存する所有権取得等の法的効果の前提を覆すことができるから、「回復すべき法律上の利益」があり、訴えの利益が認められる。

3 また、原状回復は社会的・経済的観点から不可能であるとの主張は、実質的には、取消判決を出すことが公共の福祉に適合しないという主張に他ならない。
 このような事情は、訴えの利益の有無という訴訟要件の段階で考慮されるべきものではなく、本案判決において裁判所が事情判決(行訴法31条1項)を下すか否かを判断する際に考慮されるべき事項である。
 したがって、たとえ原状回復が社会通念上困難であるとしても、そのことを理由に狭義の訴えの利益を否定することはできず、B県のこの主張は失当である。

4 よって、Xは上記の通り反論し、訴えの利益が認められると主張すべきである。

以上

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