目次
【答案構成】
第1 設問1について
1 問題提起(本件処分は行手法3条3項の適用除外となるか)
2 規範(行手法3条3項+同条括弧書の提示)
3 当てはめ(本件処分の根拠規定は、法律(食品衛生法54条))・結論
第2 設問2について
1 導入文
2 趣旨①:恣意抑制機能
3 趣旨②:不服申立便宜機能
第3 設問3について
最判平成23年6月7日民集65巻4号2081頁の規範提示
第4 設問4について
1 問題提起(Xの主張:本件処分には理由付記の瑕疵があり、行手法14条1項本文に違反して違法である。)
2 規範定立(理由提示の程度・判断基準)
3(1) 当てはめ1(根拠法令の規定内容・処分基準の不存在・処分の不利益の重大性・原因事実が複数存在する点から、本件で求められる理由提示水準の確定)
(2) 当てはめ2(本件命令書の記載内容が上記理由提示水準を充足しているか)
4(1) 規範定立(手続的瑕疵が取消訴訟の取消事由に当たるか)
(2) 当てはめ(理由提示の意義から、重要な手続違反となり、取消事由に当たる)
5 結論
【参考答案】
第1 設問1について
1 本件処分は、地方公共団体である甲山県の機関である知事による処分である。そこで、行政手続法(以下「行手法」という。)3条3項により、行手法の適用除外となるかが問題となる。
2 行手法3条3項は、地方公共団体の機関がする処分について行手法の規定を適用しない旨を定める。しかし、その括弧書で、適用除外となる処分を「その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る」と限定している。
そのため、処分の根拠規定が法律に置かれている場合、処分主体が地方公共団体の機関であっても、行手法が適用される。
3 本件処分の根拠規定は、法律である食品衛生法54条である。したがって、本件処分は行手法3条3項括弧書により適用除外の対象とならない。
よって、本件処分に適用されるのは、行政手続法である。
第2 設問2について
1 行手法が不利益処分等について理由付記を要求する趣旨は、以下の2点にある。
2 第一に、行政庁に対し、処分理由の提示を義務付けることで、判断の慎重さと合理性を担保させ、もって行政庁の恣意を抑制することにある(恣意抑制機能)。
3 第二に、処分の名宛人に対して、処分の理由を具体的に示すことで、不服申立てを行うべきか否かの判断や、攻撃防御の対象を明確にするなど、不服申立ての便宜を図ることにある(不服申立便宜機能)。
第3 設問3について
不利益処分の場合に付記されるべき処分の理由の具体性の程度は、名宛人において、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して処分がされたかを知ることができるものでなければならず、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して決定される。
第4 設問4について
1 Xは、本件処分の取消訴訟における本案上の主張として、本件処分には理由付記の瑕疵があり、行手法14条1項本文に違反して違法であると主張すべきである。
2 行手法14条1項は、理由提示の程度につき明示的に規定していない。しかし、理由提示制度の趣旨が行政庁の判断の慎重・合理性を担保し、その恣意を抑制する点と、処分理由を相手方に知らせて不服申立に便宜を与える点にあることに鑑み、理由提示の程度は、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規及び審査基準を適用して当該処分を行ったかを、申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならないと解すべきである。
3(1) 根拠法令である食品衛生法(以下「法」という。)54条1項の要件は「営業者が第6条……の規定に違反した場合」と定められ、その処分内容も「必要な処置」として広範な裁量が認められている。また、法6条は違反類型を複数定めている。
また、本件処分の内容は、販売済み製品の回収等を命じるものであり、Xが受ける財産上の不利益は重大である。加えて、その原因事実も、事故米穀の加工行為と米澱粉の販売行為という複数の要素を含んでいる。
このような状況で、本件では、処分基準が定められていないことから、Xは行政庁の判断過程を推知する手がかりを持たない。
そのため、いかなる事実関係が法6条の何号に該当すると判断され、いかなる考慮に基づき本件処分が選択されたのかを、名宛人たるXが命令書の記載自体から了知できる程度に理由を提示する必要があったといえる。
(2) 命令書は、Xの一連の行為を包括的に記載するのみで、Xの行為のうち、非食用米を米澱粉に「加工」した行為(法6条後段)か、加工後の米澱粉を「販売」した行為(法6条前段)のいずれが問題かが不明確である。また、違反対象物が原料の「事故米穀」か、製品の「米澱粉」なのかも判然としない。
また、命令書は、単に「食品衛生法第6条に違反」と指摘するのみで、複数定められている違反類型のうち、具体的にどの号に該当するのかを全く示していない。
これらの事実から、本件処分はいかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して行われたかにつき、Xにおいて命令書の記載自体から了知できる程度に処分理由が提示されているといえない。
したがって、本件処分は行手法14条1項本文に違反する。
4(1) 手続的瑕疵は、原則として取消事由にはあたらないが、例外として、当該手続的瑕疵が処分結果に変更可能性をもたらす場合か、重要な手続きに重大な瑕疵がある場合に限り、取消事由となると解する。
(2) 理由提示の意義は、行政庁の慎重な判断を担保し、不服申立てに便宜を与える点にあることに鑑みれば、極めて重要な手続きといえ、独立の取消事由となると解すべきである。
5 よって、本件における上記手続的瑕疵は、本件処分の取消事由に該当する。
以上

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