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参考答案 基礎演習行政法〔第2版〕第Ⅱ部 本案前の主張 第2問 処分性(2)

目次

【答案構成】

第1 設問1について

1 結論(条例あるいは条例制定行為が取消訴訟の対象とならない理由は、「処分」性要件を充足しないため)

2 規範定立(「処分」の定義と判断基準)

3 当てはめ(条例は通常、一般抽象的な規範であり、①個別具体性を欠く)

第2 設問2について

1 問題提起(平成21年判決が保育所廃止条例の処分性を肯定した理由は2の通りである)

 2(1) 理由①(児童福祉法の解釈上、保護者には「特定の保育所で保育を受けることを期待し得る法的地位」が認められる。)

  (2) 理由②(上記法的地位を有する特定人の法的地位を直接奪うものであり、その者にとっては、保育所廃止条例が①個別具体性を有する)

  (3) 理由③(「処分」性を認めることで、取消訴訟の第三者効により、実効的な権利救済が図れるという補強)

第3 設問3について

 1(1) A町の主張の提示(本件条例は「処分」にあたらない)

  (2) Xが本件条例を取消訴訟で争う前提は、平成21年判決に依拠している。
→本件の場合、特定の小学校で教育を受けさせることを保障する法的地位は認められないから、平成21年判決の射程が及ばない。

  (3) 特定の小学校で教育を受けさせることを保障する法的地位が不存在=④法効果性否定

2 結論

 

【参考答案】

第1 設問1について

1 一般に条例あるいは条例制定行為が取消訴訟の対象にならないと解される場合の理由は訴訟要件である「処分」(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条2項)性要件を充足しないことによる。

2 「処分」(行訴法3条2項)とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し、または、その範囲を確定することを法律上認められているものをいう。
 具体的には、①個別具体性、②対外性、③権力性、④法効果性の要件を充たすものをいう。
 ただし、実効的な権利救済の必要性がある場合には、これを柔軟に解すべきである。

3 条例は、通常、不特定の者を対象として、抽象的な法規範を定立する行為であり、規範という形式から、一般抽象的な法効果しか持たない。条例によって国民の権利義務に具体的な変動が生じるのは、多くの場合、条例に基づいて行政庁が個別具体的な執行行為を行った段階である。
 したがって、条例制定行為それ自体は、通常、「処分」の要件である①個別具体性要件を欠き、取消訴訟の対象となる「処分」にはあたらないと解される。また、国民は、後続の執行行為を対象として訴訟を提起すれば権利救済を図ることができるためである。

第2 設問2について

1 最高裁平成21年11月26日判決(以下「平成21年判決」という。)は、以下の理由づけにより、保育所廃止条例の処分性を肯定した。

 2(1) 当時の児童福祉法24条1項が、保育に欠ける児童について保護者から申込みがあったときは、市町村は児童を保育所において保育する義務を負う旨を定めていること等を踏まえ、保育所に入所中の児童及びその保護者は、当該市町村が設置する特定の保育所において、保育の実施期間が満了するまでの間、保育を受けることを期待し得る法的地位を有すると解した。

  (2) その上で、当該保育所廃止条例は、当該保育所の廃止のみを内容とし、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、保育を受けることを期待し得る法的地位を奪う結果を生じさせるものであり、①個別具体性を充足する。そのため、このような条例の制定行為は、行政庁が特定の個人に対して行う処分と実質的に同視できるものであり、「処分」にあたると判示した。

  (3) 加えて、当事者訴訟等では判決の効力が当事者間にしか及ばず紛争の抜本的解決にならないのに対し、取消訴訟の第三者効(行訴法32条)によれば、他の児童等との法律関係も画一的に処理できるという実効的な権利救済の観点も考慮されている。

第3 設問3について

 1(1) A町は本案前の主張として、以下に述べる通り、本件条例が取消訴訟の対象となる「処分」にはあたらない旨を主張すべきである。

  (2) 原告は、保育所廃止条例の処分性を認めた平成21年判決を根拠に、本件条例の処分性を主張することが想定される。
 しかし、平成21年判決が処分性を肯定したのは、当時の児童福祉法24条1項等の解釈上、保育所に現に入所中の児童及びその保護者には、「当該保育所において保育を受けることを期待し得る法的地位」が認められることを前提としていた。
 これに対し、本件の小学校への就学に関しては、学校教育法16条及び17条1項が定めるのは、子に普通教育を受けさせる保護者の義務であり、特定の学校で教育を受けさせる権利を保障したものではない。また、どの市町村立小学校に就学するかを指定する権限は、全面的に市町村の教育委員会に専属しており(学校教育法施行令5条2項)、教育委員会は、学校を指定するにあたり、あらかじめ保護者の意見を聴取することができるとされているにすぎず(学校教育法施行規則32条1項)、任意的な手続である上、聴取した意見に法的に拘束されるものでもない。
 つまり、就学すべき小学校の指定は、教育委員会の合理的な判断に基づき一方的に行われるものであって、保護者に「特定の小学校」で教育を受けさせることを保障する法的地位は存在しないから、平成21年判決と本件とは事案を異にし、その射程が及ばない。

  (3) そして、本件条例の制定行為は、西山小学校を廃止するという事実行為ではあって、これにより原告の有する権利ないし法律上の地位が直接剥奪されるわけではないから、本件条例は④法効果性を欠き、「処分」にはあたらない。

2 よって、本件条例は取消訴訟の対象となる「処分」にはあたらず、Xの提起した本件取消訴訟は訴訟要件を欠く不適法なものであるから、却下されるべきである。

以上

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