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参考答案 基礎演習行政法〔第2版〕第Ⅱ部 本案前の主張 第3問 原告適格(1)

目次

【答案構成】

第1 設問1について

1 取消訴訟の原告適格の根拠条文の提示

2 最高裁判例(最判平成4年9月22日民集46巻6号571頁)の判旨の提示

第2 設問2について

1 問題提起(処分の名宛人ではない第三者Xが「法律上の利益を有する者」に当たるか)

2 規範定立(「法律上の利益を有する者」の意義と判断基準)

 3(1) 当てはめ①(利益の特定と特定した利益が根拠法令により保護されているか)

  (2) 当てはめ②(特定した利益が一般的公益のみならず、個々人の個別的利益としても保護されているか)

  (3) 当てはめ③(特定した利益がXの個別的利益として保護範囲内にあるか)

4 結論

 

【参考答案】

第1 設問1について

1 行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条1項は、処分の取消訴訟は、「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」に限り、提起することができると規定している。

2 最高裁判例によると「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有すると説明される。

第2 設問2について

1 Xは、B県知事による宅地造成工事の許可(以下「本件許可」という。)の名宛人ではない第三者である。そこで、Xが本件許可の取消訴訟を提起するためには、行訴法9条1項の「法律上の利益を有する者」に当たる必要がある。

2 設問1の解答を踏まえると、処分の取消しを求めるにつき、「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項参照)とは、処分の根拠法規において法律上保護された利益を侵害される者をいい、処分の根拠法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、個々人の個別的利益としてもこれを保護している場合も含まれる。なお、この判断は同法9条2項の考慮勘案事項に沿って判断されなければならない。

 3(1) 本件許可は宅地造成等規制法(以下「法」という。)8条1項に基づくものである。
 法は、その目的として「宅地造成に伴う崖崩れ又は土砂の流出による災害の防止」を掲げ(法1条)、この目的を達成するための具体的な規制手段を設けている。すなわち、許可の要件として、工事計画が災害防止のための詳細な技術的基準に適合することを要求し(法8条2項、9条1項)、さらに知事は災害防止目的で許可に条件を付すこともできる(法8条3項)と規定されている。
 以上の規定群は一体として、宅地造成工事が周辺に及ぼす危険を未然に防止するための規制体系を形成しているといえ、法は宅地造成工事許可に際して、工事現場周辺住民が宅地造成工事に伴う崖崩れ等の災害から生命、身体及び財産に対する侵害を受けないという利益を少なくとも公益として法律上保護しているといえる。

  (2) 宅地造成に伴う災害は、不特定多数の国民に広く薄く影響を及ぼすものではなく、むしろ、その被害は工事現場の近隣という限定された地域の住民に集中的かつ甚大なものとして及ぶという性質を有している。
 また、法は(1)で述べたとおり、単に抽象的な安全確保を命じるにとどまらず、擁壁の設置や地盤の締め固めなどに関する極めて詳細かつ具体的な技術的基準を定めている。このような具体的な規制は、限定された範囲の住民を、具体的かつ現実的な危険から個別に保護することを強く意図しているからに他ならない。
 したがって、一般的公益の保護に加えて、崖崩れ等により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命・身体・財産を、個々人の個別的利益としても保護する趣旨であるといえる。

  (3) 本件において、Xは、宅地造成工事が行われる崖に隣接する崖下の土地に家屋を建て、居住している。かかる事実に鑑みれば、Xは、万一崖崩れ等が発生した場合に、その生命、身体又は財産に直接的かつ重大な被害を受けるおそれが極めて高い場所にいる者といえる。
 したがって、Xは、法が個別的利益として保護する趣旨の範囲に含まれる者に他ならない。

4 よって、Xは本件許可の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に当たり、本件取消訴訟の原告適格を有する。

以上

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