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参考答案 基礎演習行政法〔第2版〕第Ⅲ部 本案上の主張 第11問 行政指導

目次

【答案構成】

第1 設問1について

1 問題提起(本件行為(行政指導)に処分性が認められるか。)

2 規範定立(処分性の定義・判断基準)

 3(1) 当てはめ1(①個別具体性(Xによるマンション建築計画に対するもの)・②対外性(事業者Xは行政外部)の肯定)

  (2) 当てはめ2(③権力性の否定事情(開発協力金負担は任意であること+制裁条項不存在・過去の不利益取扱いの不存在))

  (3) 当てはめ3(④法効果性の否定事情(協力金納付は合意によるものである))

  (4) 当てはめ4(実効的権利救済の必要性の否定(実質的強制の不存在、他の手段による救済可能性))

4 結論

第2 設問2について

1 問題提起(本件行為が「公権力の行使」(国賠法1条1項)に該当するか。)

2 規範定立(「公権力の行使」の意義)

3 当てはめ(公共団体の機関による作用たる行政指導≠私経済活動・公営造物の設置管理作用)・結論

第3 設問3について

1 結論の提示(本件行為に適用されるのは、A村行政手続条例)

2 規範(行手法3条3項)

3 当てはめ(本件行為=行政指導=行手法3条3項の適用除外)

第4 設問4について

1 問題提起(行手法36条の2第1項に相当するA村行政手続条例の条項に基づき、本件行為の中止を求めることができるか。)

2 規範定立(中止等の求めの要件①・②)

3 当てはめ(開発協力金負担要請は①に該当しない、根拠規定は本件要綱=②に該当しない)

4 結論

第5 設問5について

1 武蔵野市教育施設負担金事件が教育施設負担金納付請求行為を違法とした理由の大枠の提示(宅地開発等に関する指導要綱の内容及びその運用の実態に照らし、実質的な強制を伴うものであった。)

2 宅地開発等に関する指導要綱の内容(文言・金額が任意でない点、制裁の強度)

3 運用実態(過去の制裁の事実、支払の義務的取り扱い)

4 結論

第6 設問6について

1 A村の主張(本件行為は武蔵野市教育施設負担金事件と事案を異にする。)

2 本件要綱の内容(負担額が協議により定まる点、文言が任意的表現)

3 運用実態(負担が任意であることを明示、過去の不利益取扱いの不存在、減免の申出に対する交渉・協議)

4 結論

 

【参考答案】

第1 設問1について

1 本件行為の取消訴訟(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条2項)の提起に際し、本件行為が取消訴訟の対象たる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行訴法3条2項)に当たるかが問題となる。

2 「処分」とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し、または、その範囲を確定することを法律上認められているものをいう。
 具体的には、①個別具体性、②対外性、③権力性、④法効果性の要件を充たすものをいう。
 ただし、実効的な権利救済の必要性がある場合には、これを柔軟に解すべきである。

 3(1) まず、本件行為は、A村長が特定の開発事業者Xの特定のマンション建築計画に対して行うものであるから、①個別具体性を有する。また、行政内部の行為ではなく事業者Xという外部の者に対して行うものであるから、②対外性も認められる。

  (2) しかし、本件行為は、開発協力金の負担を「要請」するものであり、任意であることから行政指導(行政手続法(以下「行手法」という。)2条6号)に当たる。加えて、本件要綱には不遵守に対する制裁条項がなく、過去に要請に応じなかった事業者に対する不利益取扱いもなされていない。
 これらの事情からすれば、本件行為は、村がXに対して一方的に行う権力的なものとは到底いえず、③権力性を欠く。

  (3) また、本件行為は、法令に基づかない指導要綱を根拠とする事実行為にすぎず、Xに対して協力金を支払うべき法律上の義務を直接発生させるものではない。
 Xが協力金を納付したのも、村長との交渉の末の合意によるものであって、本件行為という行政の行為によって直接権利義務が変動したわけではないから、④法効果性を欠く。

  (4) 行政指導であっても、不利益の大きさや、事実上従わざるを得ないという状況に鑑み、実効的な権利救済の必要性から例外的に処分性を肯定した裁判例もある。
 しかし、本件においては、村長が任意性を明言し、不利益な取扱いの実績がないと伝えていることなどから、Xが本件行為に従うことを事実上余儀なくされるような実質的強制があったとは評価できない。
 また、仮に本件行為が違法なものであったとしても、Xは国家賠償請求訴訟等の手段によって事後的救済を図ることが可能である。
 したがって、本件行為に処分性をみとめ、取消訴訟の対象とする必要性は低いといえる。

4 よって、本件行為には処分性が認められず、取消訴訟の訴訟要件を欠くから、Xが提起しようとする本件行為の取消訴訟は不適法である。

第2 設問2について

1 Xは、本件行為が違法であるとして、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づく損害賠償請求訴訟を提起しようとしている。そこで、本件行為が「公権力の行使」に該当するか、その意義が問題となる。

2 国民の権利救済を広く図るという国賠法の趣旨に鑑み、「公権力の行使」(国賠法1条1項)とは、国または公共団体の作用のうち、純然たる私経済活動及び公営造物の設置管理作用(国賠法2条)を除くすべての作用をいうと解する。

3 本件行為は、A村長が開発事業者Xに対して開発協力金の負担を要請した行政指導である。これは、A村という公共団体の機関による作用にほかならず、純然たる私経済活動や公営造物の設置管理作用に当たらないのは明らかである。
 よって、本件行為は国賠法1条1項の「公権力の行使」に該当する。

第3 設問3について

1 本件行為に適用されるのは、A村行政手続条例である。理由を以下に示す。

2 行手法3条3項は、「地方公共団体の機関がする……行政指導……については、次章から第6章までの規定」を適用しないとする。

3 本件行為は、A村村長という地方公共団体の機関が行う行政指導(行手法2条6号)である。
 よって、本件行為は行手法の適用除外に当たり、A村行政手続条例が適用される。

第4 設問4について

1 本件行為にはA村行政手続条例が適用されることから、行手法36条の2第1項に相当するA村行政手続条例の条項に基づき、本件行為の中止を求めることができるか。

2 A村行政手続条例における行政指導の中止等の求めの規定は、行政手続法36条の2と同様の要件を定めていると考えられる。
 したがって、中止等の求めが認められるのは、①法令又は条例等に違反する行為の是正を求める行政指導であり、かつ、②その根拠となる規定が法律又は条例に置かれているものに限られる。

3 本件行為は、開発協力金の負担を求めるものであり、法令等に違反する行為の是正を求めるものではない(①不充足)。また、その根拠は本件要綱であり、法律又は条例に根拠規定が置かれているものでもない(②不充足)。

4 よって、XはA村行政手続条例に基づき、本件行為の中止を求めることはできなかった。

第5 設問5について

1 武蔵野市教育施設負担金事件において、最高裁が教育施設負担金の納付を求めた行為を違法と判断した理由は、当該行政指導が、宅地開発等に関する指導要綱の内容及びその運用の実態に照らし、事業者の任意の協力を求める限度を超え、実質的な強制を伴うものであったと認められた点にある。具体的には、以下の通りである。

2 宅地開発等に関する指導要綱は、事業主に対し「費用を負担するものとする」と断定的に規定しており(宅地開発等に関する指導要綱3-5)、相手方の任意の協力を求める文言にはなっていない。また、負担金の金額も市の基準により一方的に算出され、事業者に交渉の余地を与えていなかった。
 また、要綱に従わない事業者に対し「上下水道等必要な協力を行なわないことがある」という、極めて強力な制裁措置を定めている(地開発等に関する指導要綱5-2)。上下水道等は住居するにあたり必須の設備であり、マンションを建てても水道が使えなければ居住できず、事業目的を達成できなくなるから、事実上、事業の断念を迫るに等しい制裁といえる。

3 上記の指導要綱の運用実体として、過去に指導要綱に従わなかった事業者が、現に水道の供給等を拒否されるという制裁を受けており、その事実は報道もされていた。これにより、制裁は単なる脅し文句ではないことは、事業者に認識されていた。
 また、事業者が負担金の減免を要請した際も、市の担当者は「前例がない」として一切応じなかった。これは、市が負担金をあくまで任意による寄付金としてではなく、支払義務を当然に負うものとして扱っていたことを示している。

4 以上より、事業者は本件行政指導に従う以外に事実上選択肢がなく、その任意性は著しく損なわれていたといえる。よって、違法な公権力の行使に当たると判断した。

第6 設問6について

1 A村はXの訴えを退けるため、本件行為はXの任意性を損なうものではなく、武蔵野市教育施設負担金事件と事案を異にする点、主張すべきである。

2 本件要綱は、負担額を「協議の上定める」ものとし(本件要綱23条2項)、要請も「求めることができる」という任意的な表現にとどめている(本件要綱1条1項)。加えて、要請に応じなかった際の制裁条項が、本件要綱には存在しないことから、武蔵野市の要綱とは異なり、任意性を確保する仕組みとなっている。

3 また、その運用においても、村長は本件行為に際し、負担が任意であることを明確に伝えている。さらに、過去に指導に従わなかった事業者に対し不利益な取扱いをした前例がなく、減免の申し出にも交渉・協議を行っている。

4 これらのことから、本件行為は、その根拠規定である本件要綱の内容・運用実体において、実質的強制を伴うとは評価できない。
 よって、本件行為は事業者の任意性を損なうものではなく、適法な行政指導である。

以上

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