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参考答案 基礎演習行政法〔第2版〕第Ⅲ部 本案上の主張 第12問 行政契約

目次

【答案構成】

第1 設問1について

1 Xの主張の提示(本件拒否行為は、法29条にいう「正当な理由」なく拒否するものであり、違法である。)

2 規範定立(「正当な理由」の解釈)

3 当てはめ(A県が主張する「他県の畜産農家である」という理由≠客観的・合理的な理由(衛生上の問題等))

4 結論

第2 設問2について

1 A県の主張の提示(本件拒否行為は、法29条にいう「正当な理由」に基づくものであり、適法である。)

2 規範定立(「正当な理由」の解釈・県の裁量)

3 当てはめ(県の税金等で維持・改良されたブランド牛の精液を、まずは県内農家に優先供給することは、県に課された責務の正当な遂行といえる。)

4 結論 

 

【参考答案】

第1 設問1について

1 家畜改良増殖法(以下「法」という。)29条は、家畜人工授精所の開設者に対し、精液提供の求めがあった場合に「正当な理由」なくしてこれを拒むことを禁じている。
 そこで、A県がXからの甲川牛の人工授精用精液(以下「本件精液」という。)の提供の申込みを拒否した行為(以下「本件拒否行為」という。)は、「正当な理由」が認められないとして法29条に違反し、違法である。

2 法は、その目的を「家畜の改良増殖を促進し、もって畜産の振興を図り、あわせて農業経営の改善に資すること」(法1条)と規定する。この目的は特定の地域に限定されるものではなく、日本全体の畜産業の振興を企図するものと解される。そして、法は国にも家畜改良増殖の促進義務を課し(法2条)、都道府県の計画実施を援助するよう努めるものとしている(法3条の4)。これらの規定は、家畜の改良増殖が特定の都道府県の利益に留まらず、全国的な見地から推進されるべきものであることを示している。したがって、法の趣旨からすれば、特定の遺伝資源を特定の都道府県内に封じ込めるような運用は、法の目的に反する。
 また、法は、特定の家畜の改良増殖を特定の都道府県に限って行わせる旨の明文規定を置いていない。むしろ、家畜人工授精所の開設許可要件(法25条)や管理者の設置義務(法28条)、精液採取場所の限定(法12条)といった規定は、精液の品質や衛生管理を確保し、安全な流通を図る点に主眼がある。
 そうだとすれば、法29条の「正当な理由」も、衛生上の問題や、精液の品質保持が困難であるといった、法の技術的な趣旨に沿った客観的・合理的な理由に限定して解釈すべきである。

3 本件において、A県が本件拒否行為の理由としているのは、Xが他県の畜産農家であるという地域的な属性のみである。このような理由は、法の目的に反し、衛生管理等の技術的な観点からの合理性も有しない。
 したがって、A県がXを他県の畜産農家であることのみを理由として本件精液の提供を拒むことは、不合理な差別的取り扱いにほかならず、法29条の「正当な理由」にはあたらない。

4 よって、本件拒否行為は法29条に違反し、違法である。

第2 設問2について

1 A県は、法29条の「正当な理由」の解釈にあたっては、法の他の規定及び地方自治の趣旨を総合的に考慮すべきであり、本件拒否行為は、法29条にいう「正当な理由」に基づくものであり、適法である旨主張する。

2 法は、国のみならず「都道府県」も、家畜の改良増殖の促進に有効な事項を積極的に行わなければならないと規定し(法2条)、都道府県知事が当該都道府県における「家畜改良増殖計画」を定めることができると規定している(法3条の3)。これらの規定は、都道府県が、その地域の実情に応じた畜産の振興を図るという独自の役割と責務を担っていることを示している。
 また、地方公共団体が「地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」(地方自治法1条の2第1項)という地方自治の本旨に鑑みれば、法が都道府県に課すこれらの責務は、第一次的には当該都道府県内の家畜、畜産及び農業を対象とするものと解するのが当然である。
 加えて、法は県外への提供を明文で禁止してはいないが、それは同時に、県外への提供を義務付けるものでもない。したがって、県の責務の範囲をどのように画するかは、第一次的に県の判断に委ねられていると解すべきである。

3 本件精液の元となる甲川牛は、A県のブランド牛であり、その優良な遺伝資源は、A県が多大な費用と労力を投じて維持・改良してきたものである。その費用には当然、A県の県民が納めた税金が充てられている。そうである以上、A県としては、その成果である本件精液を、まずはA県内の畜産農家の改良増殖のために優先的に供給し、A県内の畜産業の振興を図る責務がある。県外の畜産農家であるXへの提供を拒み、県内への安定供給を優先することは、まさに法が都道府県に要請する責務(法2条、法3条の3)の遂行に他ならない。
 したがって、A県が、当該都道府県の畜産振興という責務に基づき、県内の畜産農家を優先し、県外の畜産農家であるXからの提供の申込みを拒否することは、法29条の「正当な理由」に基づくものと評価すべきである。 

4 よって、本件拒否行為は、法29条の「正当な理由」に基づくものであり、適法である。

以上

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