目次
【答案構成】
第1 設問1について
1 「法令に基づく申請」の意義(行手法2条1号・3号参照)
→①法律等の法規に基づく 、②自己に対し利益処分を求める行為 、③行政庁の応答義務の存在
2 判定方法 →上記①~③の要素が根拠法令の解釈上認められるかで判断。
第2 設問2について
1 Xの主張の提示(異議の申出は「法令に基づく申請」に当たる。)
2(1) 当てはめ1(要件①:異議の申出は入管法49条1項に根拠がある。)
(2) 当てはめ2(要件②:在留特別許可は異議の申出と制度的に連動(入管法50条1項・4項)→異議の申出=在留特別許可(利益処分)を求める行為)
(3) 当てはめ3(要件③:在留特別許可の許否判断は裁決と一体(入管法49条3項)→応答義務を負う。)
3 結論
第3 設問3について
1 被告の主張の提示(異議の申出は「法令に基づく申請」に当たらない。)
2(1) 当てはめ1(要件②不充足:異議の申出と在留特別許可は目的・前提を異にする別個の処分→在留特別許可は職権による恩恵的・裁量的処分=申請権の否定、利益処分を「求める行為」ではない。)
(2) 当てはめ2(要件③不充足:在留特別許可は恩恵的措置である以上、応答するか否かも法務大臣の裁量に委ねられ、応答義務はない。)
3 結論
第4 設問4について
前提(設問3の被告の主張が認められる)=在留特別許可は申請を前提としない職権による処分
→直接型義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)を提起すべき。
【参考答案】
第1 設問1について
1 行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条6項2号にいう「法令に基づく申請」について、同法は定義規定を置いていない。そこで、行政手続法(以下「行手法」という。)2条1号及び3号の定義規定を参考とする。
すなわち、「法令に基づく申請」とは、①法律等の法規に基づき、②自己に対し何らかの利益を付与する処分(利益処分)を求める行為であって、③当該行為に対し行政庁が何らかの応答をすべき法的義務(応答義務)を負うとされているものをいうと解される。
2 したがって、「法令に基づく申請」の仕組みが採用されているか否かは、上記①ないし③の3つの要素が、当該処分の根拠法令の解釈上、認められるか否かによって判断する。
第2 設問2について
1 Xが申請満足型義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)を提起するにあたり、異議の申出が「法令に基づく申請」であることを以下のように主張する。
2(1) まず、Xが行った「異議の申出」は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)49条1項を根拠規定とすることから、①法律等の法規に基づくといえる。
(2) 入管法50条1項は、法務大臣が「前条第3項の裁決に当たつて」と規定し、異議の申出に対する裁決に際して在留特別許可をすることができる旨、規定する。
また、同条4項は、在留特別許可がなされた場合、「異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす」と規定している。
これらの規定から、在留特別許可は異議の申出を契機として、それと一体的に判断されるものであり、両者は制度的に連動する仕組みとなっている。したがって、退去強制事由の不存在を争う異議の申出には、仮にそれが認められない場合でも在留特別許可を求めるという趣旨が合理的に含まれていると解すべきである。そのため、異議の申出は、在留特別許可という利益処分を求める行為でもあるといえる(②自己に対し利益処分を求める行為である)。
(3) 入管法49条3項は、法務大臣が異議の申出に対し「理由があるかどうかを裁決」する義務を定めている。上記(2)のとおり、在留特別許可の許否の判断は、この裁決と一体のものと解されるから、法務大臣は、裁決の一環として在留特別許可を求める趣旨に対しても応答する義務を負っていると解すべきである(③当該行為に対し行政庁が応答義務を負う)。
3 これらのことを主張することで、Xは、異議の申出には「法令に基づく申請」の仕組みが採用されているということを指摘できる。
第3 設問3について
1 被告が、Xの訴えを退けるために、異議の申出が「法令に基づく申請」に当たらないと以下のように主張する。
2(1) 異議の申出(入管法49条1項)は、あくまで退去強制事由の存否に関する判定への不服を申し立てる手続きである。これに対し、在留特別許可(入管法50条1項)は、退去強制事由の存在を前提として、人道上の配慮などから法務大臣が恩恵的・裁量的に行う処分であり、両者は目的・前提条件を異にする全く別個の処分である。
また、入管法50条4項の規定は、単に手続きを簡略化するため、在留特別許可がなされた場合に、異議の申出に対する裁決があったものとみなすにすぎず、この規定をもって、性質の異なる両者が一体であるとか、異議の申出によって在留特別許可を申請できると解するのは、法の文言及び趣旨から逸脱した解釈である。
したがって、在留特別許可は申請に対する処分ではなく、法務大臣が職権で発動する処分であり、外国人に在留特別許可を求める申請権は認められていないから、異議の申出をもって在留特別許可という利益処分を求める行為と法的に評価することはできない(②不充足)。
(2) 第3-2(1)のとおり、在留特別許可は、法務大臣の広範な裁量に委ねられた恩恵的措置である。そうである以上、外国人からの求めに対し、法務大臣が応答するか否かもその裁量に委ねられており、応答すべき法的義務までは認められない(③不充足)。
3 これらのことを主張することで、被告は、異議の申出が「法令に基づく申請」に当たらないと指摘するものと考える
第4 設問4について
上記第3の被告の主張が認められ、異議の申出が「法令に基づく申請」にあたらないと解される場合、在留特別許可は申請を前提としない職権による処分ということになる。
したがって、Xが在留特別許可を得るために提起すべき訴訟は、申請を前提としない処分を求める直接型義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)である。
以上

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