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参考答案 基礎演習行政法〔第2版〕第Ⅰ部 法的手段の選択 第1問 行政不服申立てと行政事件訴訟

目次

【答案構成】

第1 設問1について

1 結論(労働者災害補償保険審査官に対して、審査請求をすべき。)

 2(1) 規範1(不服申立ては、行審法上、原則、審査請求。例外として再調査の請求及び再審査請求。個別法に不服申立てに関する特別規定ありなら、一般法である行審法に特別法である個別法が優先)

  (2) 規範2(個別法の特別規定である労災保険法38条1項の規定の提示)

3 当てはめ(労働者災害補償保険審査官」に対して「審査請求」が可能。再審査請求は不適・再調査の請求は不可。)

4 結論の再提示

第2 設問2について

1 結論(Xは、国を被告として、本件拒否処分の取消訴訟を併合提起(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条2項、37条の3第3項2号)する休業補償給付決定の申請満足型義務付け訴訟(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条6項2号)を提起すべき。)

 2(1) 申請満足型義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)を提起すべき理由

  (2) 本件拒否処分の取消訴訟(行訴法3条2項)を併合提起すべき理由

  (3) 被告適格

3 結論の再提示

第3 設問3について

1 結論(Xは、設問2の訴訟に先立って、設問1の審査請求をすべき)

2 規範(自由選択主義(原則)と審査請求前置主義(例外)の区別)

 3(1) 当てはめ1(労災保険法40条=行訴法8条1項但書の場合に該当)

  (2) 当てはめ2(審査請求前置主義との関係で設問2の訴訟が不適法却下となるため、審査請求が先立つ必要があることの指摘)

4 結論の再提示

 

【参考答案】

第1 設問1について

1 Xが休業補償給付の拒否決定を争うために不服申立てを行うとした場合、労働者災害補償保険審査官に対して、審査請求(行政不服審査法(以下「行審法」という。)2条)をすべきである。以下、理由を述べる。

 2(1) 行政庁の処分に対する不服申立ては、行審法上、審査請求が原則とされ、再調査の請求及び再審査請求は法律に特別の定めがある場合に認められる(行審法5条1項、6条1項)。そして、個別法に不服申立てに関する特別の定めがある場合には、その定めに従うことになる。

  (2) 個別法の特別の定めである労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)38条1項は、「保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。」と規定する。

3 上記規定によると、Xはまず「労働者災害補償保険審査官」に対して「審査請求」をすることが明確に認められている。
 他方、再審査請求は審査請求後の決定に対する不服申立ての手段として規定され、まずもって行うべき申立てではない。また、再調査の請求については労災保険法に定めがないため、行うことはできない。

4 以上の理由から、Xがまずもってすべき不服申立ては、労働者災害補償保険審査官に対する審査請求である。

第2 設問2について

1 Xが提起すべき訴訟は、国を被告として、本件拒否処分の取消訴訟を併合提起(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条2項、37条の3第3項2号)する休業補償給付決定の申請満足型義務付け訴訟(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条6項2号)である。

 2(1) Xの目的は、休業補償給付決定を得ることにある。そのため、行政庁に一定の処分を求める義務付け訴訟を選択すべきである。また、本件は、Xの申請に対して拒否処分がなされた事案であるから、申請を前提とする申請満足型義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)を提起することが適切である。

  (2) 申請満足型義務付け訴訟は、取消訴訟または無効等確認訴訟を併合提起しなければならない(行訴法37条の3第3項2号)。
 本件では、労働基準監督署長による拒否処分という行政庁の「処分」が現に存在し、「直ちに何らかの法的手段をとろうと考えている」とあることから、取消訴訟の出訴期間(行訴法14条1項)内であると考えられる。
 したがって、本件拒否処分の取消訴訟(行訴法3条2項)を併合提起すべきである。

  (3) 処分の取消訴訟及び申請満足型義務付け訴訟の被告は、処分をした行政庁の所属する国または公共団体である(行訴法11条1項1号、38条1項)。
 本件処分庁である労働基準監督署長は、問題文の記載から、国に所属する行政機関である。したがって、被告は国となる。

3 よって、Xは、国を被告として、本件拒否処分の取消訴訟を併合提起し、休業補償給付の決定を義務付ける訴訟を提起すべきである。

第3 設問3について

1 Xは、設問2の訴訟に先立って、設問1の審査請求をすべきである。

2 処分の取消訴訟は、当該処分につき「審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起すること」ができる(行訴法8条1項本文)として、自由選択主義が採られている。
 しかし、「法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあ」り、審査請求前置主義が採られている場合には、審査請求の裁決後でなければ取消訴訟提起ができない(行訴法8条1項但書)。

 3(1) 労災保険法40条は「第38条第1項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する労働者災害補償保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない」と規定する。これは、行訴法8条1項但書の場合に該当する。

  (2) Xが提起すべき申請満足型義務付け訴訟は、取消訴訟の併合提起が適法であることが要件となっている。仮に審査請求を経ずに本件訴訟を提起した場合、併合提起した取消訴訟が審査請求前置の要件を欠き不適法却下され、その結果、義務付け訴訟もまた不適法な訴えとして却下されることになる。

4 よって、Xは、設問2の訴訟提起前に、まず労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定を経る必要がある。

以上

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