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参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題40 代表取締役の解職

目次

【答案構成】

 1 問題提起(XのY社に対する、自己の代表取締役たる地位の確認を求める訴えは、本件決議が無効であることを前提とする。→本件訴えが認められるためには、本件決議に無効原因となる瑕疵が存在することが必要。無効事由として、①招集通知に記載のない議題について決議した点、②決議要件を充足しない点の2点を主張する)

 2 主張①について

(1) 問題提起(会社法上、取締役会の招集通知に議題を記載することは義務付けられていない。⇔Y社定款には、招集通知に会議の目的事項を記載すべき旨が定められている→取締役会招集通知に記載のない議題について決議することが認められるか)

(2) 規範定立(定款所定の議題記載義務の趣旨と限界)

(3) 当てはめ(Gによる緊急動議は、代表取締役Xの経営責任を問うもの=取締役会の監督権能の行使。定款が想定する代表取締役による不意打ちと場面が異なる→招集通知に記載のない議題について決議したとしても、定款の趣旨に反しない=決議を無効とするほどの瑕疵でない。)

(4) 小結論

 3 主張②について

(1) 問題提起(本件決議の賛成者は、出席取締役6名中3名=過半数未満?→Xは会議から排除されている=この排除が認められる場合、過半数に達している。
 →Xが自身の解職議案について「特別の利害関係を有する取締役」(369条2項)に当たり、議決に加わることができないのではないか)

(2) 規範定立(「特別の利害関係を有する取締役」の意義)

(3) 当てはめ(Xは自身の代表取締役解職議案について、その地位を失うか否かという極めて重大な個人的利害関係あり→自己の地位を維持するために、会社の利益を度外視した議決権行使を行うおそれが類型的に高い=忠実義務違反をもたらすおそれがある。
 →Xは「特別の利害関係を有する取締役」に該当。
 →Xは本件議案の議決に加わることができないから「議決に加わることができる取締役」(369条1項)はXを除く6名。そのうち出席したのはCを除く5名であるから、過半数は3名。
 →3名の賛成を得た本件決議は有効。

(4) 小結論

 4 結論

 

【参考答案】 

 1 XのY社に対する、自己の代表取締役たる地位の確認を求める訴えは、当該地位を失わせる原因となった取締役会決議(以下「本件決議」という)が無効であることを前提とする。したがって、本件訴えが認められるためには、本件決議に無効原因となる瑕疵が存在することが必要である。そこで、Xは、①招集通知に記載のない議題について決議した点、②決議要件を充足しない点の2点を主張することが考えられる。
 以下、順に検討する。

 2 主張①について

(1) 会社法上、取締役会の招集通知に議題を記載することは義務付けられていない。もっとも、本件ではY社定款において、招集通知に会議の目的事項を記載すべき旨が定められていることから、取締役会招集通知に記載のない議題について決議することが認められるか問題となる。

(2) この点、会社法が取締役会招集通知に議題を記載することを義務付けなかった趣旨は、取締役が経営の専門家として、常に会社の業務全般について臨機応変に審議・決定することが期待されていることにある。
 一方、定款で議題の記載を要求した趣旨は、取締役会の議長となることが多い代表取締役が、他の取締役にとって不意打ちとなる議題を提出し、審議を形骸化させてしまうことを防止する点にあると解される。
 そうだとすれば、この定款の趣旨に反しない限りにおいて、取締役会が本来有する重要な権能、特に会社の業務執行に対する監督権能(会社法(以下法令名省略)362条2項2号)の機動的な行使を妨げるものでないと解するべきである。

(3) 本件におけるGによる緊急動議は、代表取締役Xの経営責任を問うものであり、取締役会の監督権能の行使そのものである。これは、定款が想定する代表取締役による不意打ちと場面が異なるから、本件において招集通知に記載のない議題について決議したとしても、それは定款の趣旨に反するものではなく、決議を無効とするほどの瑕疵はない。

(4) したがって、Xの主張①は認められない。

 3 主張②について

(1) 本件決議の賛成者は、出席取締役6名中3名であり、過半数に達していないようにも見える。一方、Xは会議から排除されていることから、この排除が認められる場合、過半数に達しているといえる。
 そこで、Xが自身の解職議案について「特別の利害関係を有する取締役」(369条2項)に当たり、議決に加わることができないのではないかが問題となる。

(2) 369条2項の趣旨は、取締役個人の利害と会社利益が衝突し、会社に対する忠実義務(355条)に従った公正な議決権の行使が期待できない取締役を議決から排除することで、決議の公正を担保する点にある。
 そこで、「特別の利害関係を有する取締役」とは、当該決議につき、取締役の忠実義務違反をもたらすおそれのある、会社の利益と矛盾衝突する個人的利害関係を意味すると解する。

(3) Xは自身の代表取締役解職議案について、その地位を失うか否かという極めて重大な個人的利害関係を有している。そのため、自己の地位を維持するために、会社の利益を度外視した議決権行使を行うおそれが類型的に高く、忠実義務違反をもたらすおそれがあるといえる。
 したがって、Xは「特別の利害関係を有する取締役」にあたる。
 そうすると、Xは本件議案の議決に加わることができない。その結果、「議決に加わることができる取締役」(369条1項)はXを除く6名であり、そのうち出席したのはCを除く5名となる。決議の成立に必要な賛成数は、この5名の過半数である3名となるから、3名の賛成を得た本件決議は有効に成立している。

(4) したがって、Xの主張②は認められない。

 4 よって、本件取締役会に違法は認められず、本件決議は有効であるため、XのY社に対する訴えは認められない。

以上

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