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参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題62 宅地建物取引業者の報酬請求権

目次

 

【参考答案】

第1 小問(1)について

 1(1) XのYに対する報酬金請求権(商法(以下法令名省略)512条)が認められるための要件は、①「商人」が、②「その営業の範囲内において」、③「他人のために行為をした」ことである。また、商法上の仲立人(543条)が報酬を請求するには、原則として媒介を完了させて結約書を交付すること(550条1項)が必要となる。

  (2) 本件において、宅地建物取引業者であるXは仲立人として「商人」に当たり(商法502条11号、4条1項)(要件①充足)、本件媒介契約に基づくZとの交渉はXの「営業の範囲内」の行為である(要件②充足)。
 しかし、YはXを排除してZと直接契約を結んでいるため、Xは最後まで媒介を完了していない。そこで、③「他人のために行為をした」といえるか。また、結約書の交付がないことが報酬請求の障害とならないかが問題となる。

2 この点、仲介業者の尽力により契約内容が実質的にまとまり、契約成立がほぼ確実となっていたにもかかわらず、委託者が報酬の支払いを免れるために故意に仲介業者を排除して直接契約を締結したような場合には、信義則上、民法130条1項を類推適用すべきである。
 その結果、仲介業者は媒介による契約成立という条件が成就したものみなされ、報酬請求権を取得すると解する。

3 Xの交渉によってZは当初渋っていた賃料の引下げに応じ、月額50万円で賃貸することを承諾しており、YもZとの契約はほぼ確実だとの印象を抱いていた。にもかかわらず、Yはすぐ個人的にZと接触し、Xが同席しない場で、X・Z間の交渉によりまとまった内容と全く同内容の賃貸借契約を締結している。
 このようなYの行為は、Xの尽力にただ乗りし、Xの媒介による契約成立という条件の成就を故意に妨げるものといえる。

4 したがって、条件は成就したものとみなされ、要件③を満たすとともに、結約書未交付の抗弁も排斥される。
 よって、XのYに対する報酬金請求権は認められる。

第2 小問(2)について

1 前段部分(YおよびZが商人である場合)について

  (1) Yが報酬を支払わない場合、Yからのみ委託を受けていたXが、委託を受けていない相手方当事者であるZに対して報酬請求権を有するか(550条2項)。

  (2) 商人間における事業用不動産の賃貸借は商行為(503条1項)に当たる。そして、これを業として媒介する仲立人は、委託を受けていない相手方当事者に対しても、公平の見地から報酬の半額を請求することができる(550条2項)。

  (3) 本件において、YとZはともに商人であり、結約書の交付等の手続も適法に完了している。そして、ZはXに媒介を委託していないものの、本件賃貸借契約の相手方当事者である。
 したがって、商法上、XのZに対する報酬金請求権は、報酬の半額の限度で認められる。

2 後段部分(YおよびZが商人ではなく、一般私人間の取引である場合)について

  (1) YおよびZがいずれも商人でない場合、本件賃貸借契約は商行為とならず、Xは商行為以外の媒介をする者となるため、商法上の仲立人にはあたらない。したがって、550条2項の適用はない。そこで、商人であるXが、委託を受けていないZに対して、512条に基づき報酬金請求できないかが問題となる。

  (2) 512条が適用されるためには、Xが「他人のために行為をした」ことが必要である。ここで「他人のために」とは、当該他人の利益を図る目的で行為をすることを要し、その者が単なる反射的利益を受けたにすぎない場合は含まれないと解すべきである。

  (3) XはあくまでYとの媒介契約に基づき、Yの希望する条件に近づけるべく交渉を行っている。現に、当初賃料の引下げを渋っていたZに対し、賃料を60万円から50万円に引き下げさせており、XがZの利益に最も適うように行為したとはいえない。
 確かに、ZもYという賃借人を得られているが、これはXがYのために尽力した結果生じた事実上の反射的利益にすぎない。
 したがって、XはZのために行為をしたとはいえず、同条の要件を満たさない。よって、商法上、XのZに対する報酬金請求権は認められない。

以上

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