【参考答案】
1(1) BはAに対し、Aの交渉担当者の不法行為に基づく使用者責任(民法(以下法令名省略)715条1項本文)として、305万円及び賃金相当額・スクラップ費用の損害賠償請求をすると考える。
(2) その要件は、① 権利または法益侵害 ② 故意または過失 ③ 損害の発生およびその額 ④ ①・②と③の間の因果関係、⑤ 使用者と被用者との間に「使用関係」があること ⑥ 加害行為が「事業の執行について」行われたことである。
2(1) 契約自由の原則(民法521条1項)の下、交渉破棄自体は原則として違法とならない。
しかし、契約交渉段階であっても密接な関係が形成された場合、当事者は信義則(1条2項)上、相手方に不測の損害を与えないよう行動すべき注意義務を負う。
したがって、一方当事者が契約が確実に締結されるとの強い信頼を惹起したにもかかわらず、正当な理由なく交渉を破棄した場合、上記注意義務違反として②「過失」が認められ、契約締結への正当な期待という①法益侵害となると解する。
(2) 本件において、AとBは基本的内容について合意に達しており、BはA担当者と打ち合わせ後に作業を開始している。また、過去の契約はすべて役員会決裁が得られていたことから、Bには、契約締結は確実であるとの強い信頼が客観的に惹起されていた。
にもかかわらず、Aは、景気の動向を見極めるという経営方針の変更のみを理由に交渉を破棄しており、契約交渉破棄に正当な理由はない。
よって、Aの交渉担当者には注意義務違反があり、Bの正当な期待を侵害したといえる(要件①・②充足)。
3(1) 契約未成立段階における不法行為により賠償されるべき③「損害」は、契約が有効に成立すると信じたことによって被った信頼利益部分の損害に限られ、履行利益は含まれないと解する(416条類推適用)。
(2) Bが金融業者に弁済した部品調達費用と利息の合計305万円、汎用性がなく他に転売できない機械の組立てに費やした賃金相当額、スクラップ費用は、契約締結を信じたことによる出費であり、信頼利益として③「損害」に当たる。
一方、1100万円の代金は、機械設置等の履行利益に当たるため、請求できない。
4(1) これらの損害は、Aの担当者による不当な交渉破棄「によって」生じたものであり、④相当因果関係も認められる。
(2) また、Aの交渉担当者は、Aと雇用関係にあるため、Aとその担当者の間には⑤「使用関係」が認められる。 そして、本件の契約交渉は担当者がAの業務として行ったものであり、⑥「事業の執行について」なされたものと認められる。
加えて、Aは、担当者の選任および事業の監督について相当の注意をした(715条1項但書)旨の抗弁を立証していないため、免責されない。
5 以上より、BのAに対する上記損害賠償請求は認められる。
以上

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