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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題20 引換給付判決と処分権主義

目次

 

【参考答案】

第1 設問(ⅰ)について

1 裁判所は、Xの申出額である2000万円を超える3000万円の支払と引換えに本件建物の明渡しを命じる判決をすることができるか。民事訴訟法(以下法令名省略)246条は、裁判所が当事者の申し立てていない事項について判決することを禁じている。そこで、原告が2000万円の給付を申し出ているにもかかわらず、これと異なる条件での判決をすることは、原告の申立範囲を超え、同条に違反しないかが問題となる。

 2(1) 処分権主義の趣旨は、私的自治の原則を訴訟面に反映させ、審判対象の設定につき原告の意思を尊重するとともに、被告に対する不意打ちを防止する点にある。
 そこで、原告の申立内容と異なる判決が許されるかは、①原告の合理的意思に合致し、かつ、②被告に不意打ちを与えるものでないか否かによって判断すべきである。

  (2) そして、立退料の提供は、正当事由(借地借家法28条)の一判断要素にすぎない。そのため、申出額と認定額に乖離がある場合でも、それが格段の相違といえず、原告が請求認容のためになお給付をする意思を有すると認められるならば、上記①の要件を満たす。また、立退料の額が争点化され審理されていれば、上記②の要件も満たすと解する。

3 Xは、建物を高層ビルに建て替えて収益を上げることを目的としており、明渡しの実現による経済的利益は大きい。したがって、Xとしては、仮に2000万円では正当事由が不足するとしても、請求棄却となるよりは、裁判所が相当と認める3000万円を支払ってでも明渡しが認められることを望むのが通常であり、Xの合理的意思に合致する(①充足)。また、2000万円と3000万円の差額は、本件建物の建替えによる利益に照らせば、格段の相違とまではいえない。
 そして、Yは正当事由の存否を争っており、その中で立退料の相当額についても審理対象となっている。したがって、裁判所が3000万円の立退料が必要であると認定し、その支払を条件としても、Yにとって不意打ちとはならない(②充足)。

4 よって、裁判所は、3000万円の支払と引換えに明渡しを命じる判決をすべきであり、同判決は、処分権主義(246条)に違反するものではない。

第2 設問(ⅱ)について

1 Xが4000万円の立退料支払を申し出ている場合に、裁判所が3000万円の支払と引換えに明渡しを命じる判決をすることは許されるか。
 原告の申出額を下回る額での引換給付判決をすることは、原告に有利な判決への変更となり、被告への不意打ちや処分権主義違反とならないかが問題となる。

2 変更判決の可否は、第1-2(1)の基準に従い、原告の合理的意思と被告への不意打ち防止の観点から判断する。
 もっとも、原告の申出額は、被告の防御目標たる審判対象の上限を画するため、直ちにこれを下回る判決をすることは、より有利な判決を期待する被告への不意打ちとなり許されないと解する。

3 本件において、裁判所は3000万円で正当事由が認められるとの心証を得ているが、Xは4000万円を申し出ている。この場合、4000万円という申出額は被告Yの防御の目標となっており、Yはこれを前提に訴訟追行を行っている。したがって、裁判所が釈明権(149条)を行使することなく、直ちに3000万円に減額して判決することは、Yの合理的期待に反し、不意打ちとなるため、処分権主義違反として許されない(要件②不充足)。

4 よって、裁判所はまず釈明を行い、Xが申出額を変更しない場合には、4000万円の支払と引換えに明渡しを命じる判決をすべきである。

以上

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