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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題35 損害額の立証

目次

 

【参考答案】

 1(1) 不法行為に基づく損害賠償請求訴訟(民法709条)において、原告は、違法な行
為によって被った損害の発生及びその額について主張・立証責任を負う。
 本件のような独占禁止法違反の価格協定事案における損害は、違反行為によって形成された「現実購入価格」と、当該違反行為がなければ形成されていたであろう「想定購入価格」との差額をいう。
 そこで、この「想定購入価格」の算定にあたり、価格協定直前の市場価格をもってそのまま推認することができるか。

  (2) 市場価格は原油価格や需給バランス等の経済的要因により常に変動するものである。そのため、直前価格をもって想定購入価格と推認するためには、協定実施から購入時までの間に価格形成に影響を与える経済的要因に変動がないこと等の厳格な立証が必要であると解する。

  (3) 本件において、Xは、単に価格協定直前の市場価格と現実購入価格との差額を主張するのみであり、協定期間中における原油価格や需要の変動といった、その他の経済的要因に変動がなかったことまで具体的に立証している事情は見当たらない。
 したがって、Xの主張する算定方法をそのまま採用することはできない。

 2(1) もっとも、厳密な立証ができないことを理由に直ちに請求を棄却することは、被害者の救済を著しく欠き、公平の理念に反する。そこで、民事訴訟法(以下法令名省略)248条の適用が問題となる。

  (2) 248条は「損害が生じたことが認められる場合」であることを要件としている。  不法行為における「損害」とは、違法行為がなければあったであろう利益状態と現在の利益状態との差額をいう。

  (3) 本件では、差額算出の基礎となる「あるべき利益状態」が立証できない以上、差額としての損害の発生自体も立証されていないことになる。したがって、上記要件を欠くため、同条の直接適用は認められない。

 3(1) では、248条の類推適用が認められないか。

  (2) 248条の趣旨は、損害の性質上その額の立証が困難な場合に、裁判所の裁量により認定を可能とし、被害者の救済を図る点にある。そうであれば、損害発生の蓋然性が高いにもかかわらず、額の立証が困難なために請求を棄却することは、同条の趣旨に反する。
 したがって、損害発生の高度の蓋然性が認められ、かつ、その立証が極めて困難である場合には、同条を類推適用できると解する。

  (3) 本件の価格協定は、本来自由競争下で形成されるべき価格を不当に引き上げることを目的とするものである。したがって、これが実施された以上、消費者に損害が生じた蓋然性は極めて高いといえる。それにもかかわらず、前述の通り、想定購入価格という仮定の事実の立証が極めて困難であるために請求を棄却することは、被害者救済の観点から妥当でない。
 よって、同条の類推適用が認められ、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定し、Xの請求を認容することができる。

以上

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