【参考答案】
第1 X会の当事者能力について
1 X会は法人格を有していない団体であるため、当事者能力(民事訴訟法(以下法令名省略)28条)が認められるか。29条の「法人でない社団」に該当するかが問題となる。
2 29条が法人でない社団等に当事者能力を認めた趣旨は、法人類似の実質を有する団体については、当事者能力を付与し、団体自体を訴訟上も当事者とすることが便宜であるという点にある。そして、この趣旨が妥当する「社団」といえるためには、団体としての実体を備えている必要がある。
そこで、同条の「社団」とは、①団体としての組織を備え、②多数決の原則が行われ、③構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、④その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものをいうと解する。
3 X会はA湾近辺の在住者20名を会員とするNPOであり、会としての目的を有し組織を備えている(要件①充足)。また、会の規約において、意思決定方法として多数決が規定され(要件②充足)、構成員の出入りによっても団体の同一性は保たれる(要件③充足)。
さらに、代表がX₁とされ、会費の管理方法も定められている(要件④充足)。
したがって、X会は29条の「法人でない社団」として、当事者能力を有する。
第2 X会の当事者適格について
1 第1の通り、X会に当事者能力が認められるとしても、当事者適格が認められるか。当事者適格とは、訴訟物たる特定の権利又は法律関係について当事者として訴訟追行し本案判決を求めることのできる資格をいい、原則として実体法上の権利義務の帰属主体に認められる。
そこで、X会が主張する環境権のような不特定多数の者が享受する利益については、実体法上の権利義務の帰属主体が明確ではない。そのため、誰に当事者適格を認めるべきかが問題となる。
2 この点、訴訟提起前の紛争過程で重要な役割を果たしたという事実上の関係がある者には、固有の当事者適格が認められるとの見解がある。しかし、法律上の規定ないし権利主体からの授権なくして第三者が訴訟追行権を取得する根拠は乏しく、上記のような事実上の関係のみでは当事者適格は認められない。
もっとも、権利主体からの授権があることを前提として、①弁護士代理の原則(54条1項)及び訴訟信託の禁止(信託法10条)を潜脱するおそれがなく、かつ、②これを認める合理的必要がある場合には、明文の規定がなくとも任意的訴訟担当が許容されると解する。
そして、上記①・②の要件を判断するにあたっては、当該団体が紛争解決過程において果たしてきた役割や専門性などの実績を考慮して判断する。
3 本件において、X会が住民のために訴訟を追行するには、規約等により環境保護に関するA湾地域住民からの包括的な授権、あるいは提訴にあたっての個別的な授権を得ていることが前提となる。
その上で、X会は提訴の5年前から反対派住民とともにYや行政当局と計画の撤回・見直しを求める話し合いを継続し、環境アセスメントに係る情報開示の要請や環境保護計画の提案を行ってきた実績がある。このような長期間にわたる真摯かつ継続的な紛争解決への関与の事実からすれば、みだりに第三者を訴訟に関与させるものではなく、弁護士代理の原則や訴訟信託の禁止の趣旨を潜脱するような不当な目的はないといえる(要件①充足)。
次に、本件で主張されている環境権は不特定多数の者が享受する拡散利益であり、住民各人が個別に提訴することは相手方であるYの応訴の負担を過大にし、法的安定性の観点からも不都合である。他方で、X会は5年間の交渉を通じて環境問題に関する相応の専門性を有していると評価でき、X会が統一的に訴訟を追行しなければ住民の権利・利益の実質的な実現が図られない。したがって、X会に訴訟を追行させる合理的な必要性も認められる(要件②充足)。
4 以上の通り、裁判所は、A湾付近の住民からの適法な授権が存在することを条件として、X会の当事者適格を認めることができる。
以上

コメント