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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題12 確認の利益(1):遺言無効確認の訴え

目次

 

【参考答案】

第1 設問前段部分について

1 X₁のYに対する遺言無効確認訴訟について、裁判所はいかなる判断をすべきか。
 遺言無効確認の訴えは、過去の法律関係を確認対象とすることから、確認対象の適切性との関係で確認の利益が認められるかが問題となる。

2 確認の訴えは、紛争解決の実効性を確保する観点から、その対象は原則として現在の法律関係に限られ、過去の法律関係を対象とする確認の訴えは、確認対象の適切性を欠くのが原則である。過去の法律関係は変動している可能性があり、これを判決で確認しても、現に存する紛争の直接かつ抜本的な解決につながるとは限らないからである。
 もっとも、現在の権利又は法律関係の個別的な確定が必ずしも紛争の抜本的解決をもたらさず、かえって、それらの権利又は法律関係の基礎にある過去の基本的な法律関係を確定することが、現に存する紛争の直接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要と認められる場合には、例外的に確認の利益が認められると解する。

3 本件において、X₁は過去の法律行為である遺言の無効確認を求めているが、本件遺産には、本件遺言に記載された不動産のほかにはめぼしい財産が存在しない。そうすると、X₁が真に求める目的は、当該不動産の持分権の確保ないし返還にあるといえる。
 そうであれば、X₁は、Yに対し、直接的に持分権に基づく所有権移転登記手続請求訴訟を提起すべきであるといえる。なぜなら、給付判決には執行力が伴うため、単に遺言の無効を確認するよりも、紛争の解決としてより直接的かつ実効的であるからである。また、本件では他にめぼしい遺産がない以上、当該不動産の帰属さえ決着すれば、X₁・Y間の紛争は実質的にすべて解決することになる。
 したがって、直接的な権利救済手段である給付の訴えが可能である以上、確認の利益を欠き不適法である。

4 よって、裁判所は、X₁のYに対する遺言無効確認訴訟について、不適法却下と判断すべきである。

第2 設問後段部分について

1 確定判決の既判力は、原則として当事者間においてのみ生じ(民事訴訟法(以下法令名省略)115条1項1号)、当事者ではない第三者には及ばない。したがって、X₁とYとの間の請求棄却判決の効力は、第三者であるX₂には及ばないのが原則である。
 もっとも、当該訴訟の目的である権利関係が、当事者(共同相続人)全員に対し合一にのみ確定すべき場合、すなわち、固有必要的共同訴訟(40条)である場合には、一部の者による訴訟遂行の結果が他の者にも影響を及ぼす、あるいはそもそも単独での訴えが不適法となる可能性がある。
 そこで、遺言無効確認の訴えが固有必要的共同訴訟に当たるかが問題となる。

2 民事訴訟は実体法上の権利関係の存否を判断するものだから、第一次的には訴訟物たる権利関係に関する管理処分権が実体法上共同的に帰属するか否かによって決すべきである。
 もっとも、当事者とならない者の受ける事実上の不利益、相手方の二重の応訴の負担、訴訟経済等の訴訟法的観点も加味すべきである。
 したがって、固有必要的共同訴訟か否かは先の実体法的観点に加えて、訴訟法的観点も加味して判断すべきである。

3 遺言無効確認の訴えは、形式的には遺言という過去の法律行為の効力を対象とするが、その実質は、遺言によって侵害された相続人の相続分(持分権)の回復、すなわち共有持分権の確認ないし所有権の不存在確認を求めるものと解される。相続財産は、共同相続人の共有(民法898条)に属するところ、共有持分権の保存行為は各共有者が単独で行うことができる(民法252条5項)。
 したがって、遺言の無効を主張して自己の持分権を保全する行為について、実体法上、共同相続人全員による共同行使(合一確定)が要請されているとはいえない。
 また、遺言の有効性に関しては、相続人ごとに利害関係や意思が異なることが多く、訴えの提起に際し相続人全員の歩調を合わせることを要求すれば、事実上訴えの提起が困難となり、原告の裁判を受ける権利を害するおそれが高い。加えて、仮に共同相続人間で判決結果が区々に分かれたとしても、それは既判力の相対効(115条1項1号)の帰結として是認されるべきものであり、手続的安定を著しく害するとまではいえない。
 したがって、本件訴えは固有必要的共同訴訟には当たらない。

4 よって、X₁に対する判決の既判力はX₂には及ばないから、X₂は、あらためて本件遺言の無効確認訴訟を提起することができる。

以上

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