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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題76 破棄判決の拘束力

Law Practice 民事訴訟法 〔第5版〕
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【参考答案】

1 差戻しを受けた裁判所は、上告裁判所が破棄の理由とした事実上および法律上の判断に拘束される(民事訴訟法(以下法令名省略)325条3項後段、裁判所法4条)。
 そのため、差戻審が、破棄理由とされた民法94条2項の類推適用についてY₂が善意の第三者に当たるかどうかを審理判断することなく、民法100条・177条という全く別の法律構成により請求を棄却したことが、上告審の破棄判決の拘束力(325条3項後段)に反しないかが問題となる。

2 325条3項後段の趣旨は、控訴審と上告審の法律判断が異なる場合に、差戻しを受けた控訴審が再び独自の解釈を採り、再度上告されて事件が両裁判所を往復することを防止し、審級制度の機能を確保する点にある。
 かかる趣旨に鑑みれば、上告審の破棄判決の拘束力は、破棄の理由となった範囲でのみ生じる。すなわち、同一の確定事実を前提とする限りにおいて、破棄理由とされた法律上の判断に反する判断をすることが許されないという限度で拘束力が及ぶにとどまり、差戻審が当該法律構成の適用を義務付けられるものではない。

3 本問において、上告審の破棄理由は、XのがY₁名義で登記させた行為につき民法94条2項の法意に照らし、Y₂が善意の第三者に当たるかどうかを審理判断しなかったことが審理不尽・理由不備に当たる、というものであった。
 そうすると、拘束力が及ぶのは、同一の確定事実を前提とする限り、Y₂が善意であると認められるならば民法94条2項の類推適用を否定することは許されないという限度にとどまる。
 一方、差戻審は事実審として新たな審理を行った結果、元の控訴審が「Y₁はXの代理人でありXが所有権を取得した」と認定したのに対し、「Y₁は代理人であるがX本人のためにすると示していなかったという顕名要件不充足により、所有権を取得したのはY₁である」と事実認定を変更している。そして、Y₁はXへの登記移転義務とY₂への登記移転義務を負う二重譲渡の関係にあるとして、民法100条・177条を適用している。
 このように、差戻審において確定事実が変わった以上、拘束力の前提を欠くこととなるから、差戻審が破棄理由とされた民法94条2項の類推適用を審理することなく、民法100条・177条を適用して判決をすることも破棄判決の拘束力に反するものではなく、許される。

以上

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