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【参考答案】
1(1) Xは、本件訴訟上の和解につき、要素の錯誤(民法95条)または詐欺(民法96条)を理由として、その効力を否定することがみとめられるか。民事訴訟法(以下法令名省略)267条が「確定判決と同一の効力」を有すると規定していることから、和解に既判力が生じ、瑕疵の主張が遮断されないかが問題となる。
(2) 訴訟上の和解は、期日において当事者が訴訟終了の合意をするという訴訟法的側面と、争いの対象となっている権利関係について相互に譲歩して合意をするという実体法的な側面(民法695条)の双方の性質を併せ持つものである。そうすると、当事者の自律的な紛争解決手段たる和解の内容に重大な瑕疵がある場合にまで既判力を肯定し、効力を維持することは当事者の意思を害し妥当でない。
したがって、和解の内容に実体法上の無効・取消原因等の瑕疵がある場合には、当該和解は無効となり、既判力は生じないと解するのが相当である。
(3) Xは甲土地上にテナントビルを建設する予定である旨をYに明示して和解交渉を行っているところ、この動機は和解契約の内容となっているといえる。しかし、実際には建築不可の規制があり、Xの認識と実体との間に齟齬があるため、Xには錯誤がある。当該事情は土地譲り受けの重要な目的であるから、法律行為の基礎とした事情についての錯誤に当たる(民法95条1項2号)。
また、Yはこの事実を知りつつ秘匿しており、詐欺(民法96条1項)も成立しうる。
よって、本件和解には実体法上の無効・取消原因が存在するため、既判力は発生せず、Xは和解の無効・取消しを主張して訴訟上の和解の効力を争うことができる。
2(1) では、Xはいかなる手続によって和解の無効を主張すべきか。和解が無効であるとすれば、訴訟終了効も生じないため、旧訴訟が係属したままであるとして「期日指定の申立て」(93条1項)をすべきとも思えるが、別途「和解無効確認の訴え」等を提起することも許容されるかが問題となる。
(2) 期日指定の申立ては、従前の訴訟手続や裁判資料を利用できるため簡易迅速に紛争を解決できる利点がある。他方、別訴提起を認めれば、審級の利益が確保される等の利点がある。紛争の形態や旧訴の利用価値は多様であり、どちらの手続が適切かは一概には言えないため、当事者の便宜を尊重すべきである。
したがって、当事者は、期日指定の申立てと別訴提起のいずれの方法も選択することができると解する。
(3) そうすると、Xは、①本件売買代金請求訴訟に関する期日指定の申立て、または、②和解無効確認の訴えのいずれかを選択して主張することができる。
以上

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