【答案構成】
第1 設問1について
1 規範定立(法規命令と行政規則の定義と判断基準)
2 当てはめ・結論
第2 設問2について
行政規則の裁判規範性の否定→結論(Xの主張は不適切)
第3 設問3について
1 Xの主張すべき内容の提示
2(1) 前提問題の処理(本件処分である懲戒処分における効果裁量の肯定)
(2) 規範定立(裁量権逸脱・濫用の判断枠組み)
3(1) 当てはめ①(比例原則違反部分)
(2) 当てはめ②(信頼保護原則違反部分)
4 結論
【参考答案】
第1 設問1について
1 行政立法は、行政主体と私人との関係を規律する外部的効果を有する法規命令と外部的効果を有さず行政機関相互を拘束する内部的効果のみを有する行政規則に大別される。
そして、行政機関により定立された規範が法規命令に当たるかは、①当該規範が法規を内容に含むか、②当該法規が法令に基づいて定められているかによって判断する。
2 本件指針は、第1において「具体的な量定の決定」について規定し、第2-4-ウにおいて、「職員」を「免職又は停職とする」と規定する。確かに、A市「職員」は、A市との関係で内部関係にあるものの、免職・停職処分は職員の身分や重要な権利義務に重大な影響を与える外部的効果をも有する。この点において、職員の一国民としての権利義務に関する規範といえ、法規を内容に含むようにみえる。
しかし、本件指針はA市市長部局で作成され、市長が決裁したもので、法令に基づいて定められたものではない。そうすると、法律の法規創造力の原則から、法律に淵源をもたない本件指針に基づいて、国民の権利義務を変動させることは認められないから、本件指針は法規を内容に含まないといえ、行政規則である。
第2 設問2について
設問1より、本件指針は行政規則であるから、裁判規範とならない。そのため、本件指針に違反していることをもって、本件処分の違法性を主張したことにならないから、Xの主張は適切でない。
第3 設問3について
1 Xは、本件処分の取消訴訟の本案上の主張として、裁量権の逸脱濫用として違法であると主張すべきである。
2(1) 前提として、地方公務員法29条1項は、「……懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる」と規定しており、その文言上、懲戒処分につき、行為裁量及び選択裁量を認める規定ぶりとなっている。
また、懲戒処分の性質上、行為の態様・動機や結果等の広範な事情を総合的に考慮してなされるものであるから、平素から庁内の事情に通暁し、職員の指揮監督の衝にあたる者の裁量に任せるのでなければ、とうてい適切な結果を期待することができないものであるから、効果裁量が認められる。
(2) 上記のとおり、本件処分には効果裁量が認められるものの、裁量権の行使は無制約ではなく、当該処分が社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権の逸脱・濫用と認められる場合には違法となる(行訴法30条)。
具体的には、非違行為の態様や結果、当該公務員の日頃の勤務態度、処分歴、非違行為後の態度といった諸般の事情を総合的に考慮して、比例原則や信頼保護原則違反となる場合には、社会観念上著しく妥当性を欠くと解する。
3(1) 本件において、Xの酒気帯び運転は強く非難されるべき非違行為に該当する。
一方、Xには、これまで懲戒処分歴がなく、結果として人身・物損事故を一切起こしておらず、勤務時間外の私生活上の行為であったこと、行為後、自主的に申告し調査に誠実に対応するなど深く反省した態度をみせていたという事情がある。
これらの事情を総合すれば、公務の規律維持という目的は、戒告、減給、停職といった処分によっても十分に達成可能であるといえる。
にも関わらず、公務員の身分を完全に剥奪する最も重い懲戒免職処分を課すことは、Xの行った非違行為の程度に比して著しく均衡を失しており、比例原則に違反する。
(2) また、本件指針は行政規則であるが、市長が決裁し、公表の上で職員に周知徹底されている以上、職員がこれに準拠した処分が行われると信頼することは当然であり、その信頼は法的に保護されるべきである。
そして、本件指針の第1 基本指針は、「自主的な申告」や「調査に協力」するなどして「全容解明に寄与した」場合には量定を軽減する旨を明記している。Xには、この規定を信頼し、その通りに行動している。
にも関わらず、任命権者がこの信頼を裏切り、これらの軽減事由を正当に評価することなく懲戒免職処分を行ったことは、Xの合理的な信頼を侵害するものであり、信頼保護の原則に違反する。
4 以上の通り、本件処分は比例原則及び信頼保護の原則に違反し、社会観念上著しく妥当性を欠くものであるから、裁量権の逸脱・濫用として違法である。
以上

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