目次
【答案構成】
第1 設問1について
1 問題提起(X₁は「法律上の利益を有する者」に当たり、原告適格が認められるか)
2 規範定立(「法律上の利益を有する者」の意義と判断基準)
3(1) 当てはめ①(利益の特定と特定した利益が根拠法令により保護されているか)
(2) 当てはめ②(特定した利益が一般的公益のみならず、個々人の個別的利益としても保護されているか)
(3) 当てはめ③(特定した利益がX₁の個別的利益として保護範囲内にあるか)
4 結論
第2 設問2について
1 問題提起(X₂は「法律上の利益を有する者」に当たり、原告適格が認められるか)
2 規範定立(第1-2と同一)
3(1) 第1-3(1)・(2)で確定した利益の提示
(2) 当てはめ(特定した利益がX₂の個別的利益として保護範囲内にあるか)
4 結論
【参考答案】
第1 設問1について
1 X₁は、本件占用許可(以下「本件許可」という。)の取消訴訟(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条2項)を提起するにあたり、原告適格が認められるか。X₁が当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)に当たるかが問題となる。
2 処分の取消しを求めるにつき、「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項参照)とは、処分の根拠法規において法律上保護された利益を侵害される者をいい、処分の根拠法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、個々人の個別的利益としてもこれを保護している場合も含まれる。なお、この判断は同法9条2項の考慮勘案事項に沿って判断されなければならない。
3(1) 本件許可の根拠法令は、法定外公共物管理条例(以下「条例」という。)5条1項1号に基づく。条例は、その目的を「法定外公共物の保全と適正な利用を図ること」(条例1条)と掲げている。そして、この目的を達成するための具体的な規制手段として、一定の工作物を設置する際には市長の許可を要する許可制を採用し(条例5条1項)、許可申請にあたっては設計書や構造図面の提出を義務付け(法定外公共物管理条例施行規則((以下「施行規則」という。)3条2項2号)、さらに市長は管理上の必要がある場合には許可に条件を付すこともできる(条例5条2項)と定めている。
これらの規定群は一体として、法定外公共物の「適正な利用」の一環として、そこに設置される工作物の安全性を確保し、周辺に危険が及ぶことを未然に防止するための規制体系を形成しているといえる。
したがって、条例及び施行規則は、許可に際して、当該工作物の倒壊等によって生命、身体及び財産に対する侵害を受けないという利益を、少なくとも一般的公益として法律上保護しているものと解される。
(2) 本件広告塔の倒壊等によって生じうる被害は、不特定多数の市民に広く薄く影響を及ぼすものではなく、むしろ、その被害は広告塔の設置場所に隣接するという、極めて限定された範囲の住民に集中的かつ甚大なものとして及ぶという性質を有している。
そして、「占用が隣接の土地又は建物所有者に利害関係があると認められるものについては、当該土地又は建物所有者の同意書」(施行規則3条2項4号)を添付すべきことを定めている。このように、不特定多数の周辺住民の中から「隣接者」という特定の個人を名指しし、その意思を手続に反映させる仕組みを設けていることからすると、特定範囲の住人を具体的かつ現実的な危険から個別に保護すること趣旨としていると解される。
したがって、条例及び施行規則は、工作物の倒壊等により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民、とりわけ隣接者の生命・身体・財産を、個々人の個別的利益としても保護する趣旨であるといえる。
(3) X₁は、広告塔が建設される本件土地に隣接する土地を所有し、そこに居住している者である。本件広告塔は高さ10メートルに及ぶものであり、万一倒壊した場合、X₁は、その生命、身体、財産に直接的かつ重大な被害を受ける蓋然性が高い。
したがって、X₁は、根拠法令が個別的利益として保護する工作物の倒壊等によって生命、身体又は財産に直接的かつ重大な被害を受けるおそれのある範囲の者に該当する。
以上から、X₁は本件許可の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に当たる。
4 よって、X₁は「法律上の利益を有する者」として、原告適格を有する。
第2 設問2について
1 法人格を有する地元自治会X₂は、処分の名宛人以外の第三者であるところ、「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)として、原告適格が認められるか。
2 「法律上の利益を有する者」の判断基準は第1-2と同一の基準による。
3(1) 第1-3-(2)のとおり、本件許可の根拠法令である条例及び施行規則が保護する個別的利益は、工作物の倒壊等によって生命、身体又は財産に直接的かつ重大な被害を受けるおそれのある範囲の者がかかる被害を受けないという利益である。
(2) X₂は法人であるから、自然人たる個人とは異なり、生命・身体という利益を観念することができず、これらの利益が侵害されるおそれはない。
また、X₂は本件土地周辺に一切土地建物を所有していないから、財産上の利益が侵害されるおそれもない。
したがって、X₂は、工作物の倒壊等によって生命、身体又は財産が侵害されるおそれが認められないから、本件許可により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の者に含まれない。
4 よって、X₂は本件許可の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」には当たらず、原告適格を有しない。
以上

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