目次
【答案構成】
第1 設問1について
1 問題提起(自己の名誉・信用侵害が「回復すべき法律上の利益」に当たるか)
2 規範定立(「回復すべき法律上の利益」の判断基準)
3 当てはめ(最判昭和55年11月25日民集34巻6号781頁に従い判断)
4 結論
第2 設問2について
1 Xが「回復すべき法律上の利益」を基礎づけるため主張すべき内容
2 規範定立(第1-2と同一)
3(1) 当てはめ①(法令等の規定・仕組み解釈)
(2) 当てはめ②(Xの受ける法的効果とその除去による不利益からの回復可能性)
(3) 小結論(Xは、「回復すべき法律上の利益」を有する)
4 問い(「Xは1の主張以外に、訴えの利益があることを指摘するために、どのような主張することが考えられるか」)に対する回答
【参考答案】
第1 設問1について
1 本件訴訟は、本件処分の業務停止期間が経過した後に提起されたものである。そのため、「処分……の効果が期間の経過……によりなくなつた後」(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条1項括弧書)に当たる。そこで、自己の名誉または信用が侵害されたことが「なお処分……の取消しによつて回復すべき法律上の利益」に当たり、訴えの利益が認められるか問題となる。
2 「回復すべき法律上の利益」が存在するかは、法令等の規定・仕組みから、除去されるべき法的効果が残存しているかによって判断する。
3 本件処分たる懲戒処分を受けたことにより生じる名誉・信用等の低下は、当該処分がもたらす事実上の効果にすぎず、法的効果に当たらない。そのため、本件処分の法的効果である業務停止が期間経過によりなくなった後においては、回復しうる法律上の利益は認められないとするのが判例である(最判昭和55年11月25日民集34巻6号781頁)。
4 よって、Xの主張する自己の名誉または信用の侵害回復は「回復すべき法律上の利益」に当たらないから、Xの主張は適切といえない。
第2 設問2について
1 Xは、訴えの利益を基礎づけるため、本件処分により相談員になることができなくなるという法的効果が残存していることを主張すべきである。
2 「回復すべき法律上の利益」の有無は、第1-2と同一の基準により判断する。
3(1) A県司法書士会司法書士総合相談センター設置規則(以下「本件規則」という。)5条4項4号は、「司法書士法第47条第2号の懲戒処分を受け、その処分の期間が終了した日の翌日から2年を経過しない者」を相談員名簿から削除等をしなければならないと規定する。そして、本件規則5条2項により、相談員名簿に登載されなければ、相談センターが開催する相談会における相談員になることができないという仕組みとなっている。
この相談員になることができないという効果は、本件規則が司法書士法及びそれに基づく会則を受けて定められた法規としての性格を有することから、法的効果といえる。
(2) 上記仕組みから、本件処分により、Xは相談員名簿に登載されず、相談員になることができないという法的効果を処分期間終了日の翌日から2年間、受けることとなる。
そして、仮に、本件訴訟においてXの請求が認容され、本件処分が取り消されれば、Xは本件処分を受けなかったことになる。その結果、Xは本件規則5条4項4号の適用を受けず、結果として相談員になることができないという法的効果が除去され、回復される。
(3) したがって、Xには、法的効果を処分期間終了日の翌日から2年間においては、相談員になることができないという法的効果が残存しているから、「回復すべき法律上の利益」を有するといえる。
4 よって、Xは、相談員になることができなくなるという法的効果からの回復根拠として、訴えの利益を有することを主張することが考えられる。
以上

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