スポンサーリンク

参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題48 会計帳簿・株式名簿の閲覧請求

目次

【答案構成】

第1 会計帳簿(有価証券元帳)の閲覧請求について

1 前提処理(X社は、Y社に対し、会計帳簿の閲覧請求をする。X社はY社の議決権総数の10%=100分の10を有する株主→要件「総株主の議決権の100分の3」以上の株式を有する株主に該当。
 →要件である「株式会社の営業時間内」に請求することで、X社は原則、会計帳簿の閲覧謄写請求権あり。
 ⇔Y社の反論:X社=「会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するとき」(433条2項3号)に該当。)
問題提起(「実質的に競争関係にある」の意義+主観的意図として競業目的の要否が問題となる。)

 2(1) 規範定立1(「実質的に競争関係にある」の意義)

  (2) 規範定立2(主観的意図として競業目的の要否)

 3(1) 当てはめ1(X社=通信販売業、Y社=放送事業→現時点で両者の事業は競争関係にない。
 ⇔X社は、Y社の買収が実現しなかった場合でも、放送事業へ進出することを具体的に計画。→「近い将来競業関係に立つ可能性がある」といえ、X社はY社との関係で「実質的に競争関係にある」(433条2項3号)者に該当。)

  (2) 当てはめ2(X社の請求目的=「安定株主工作の状況を調査すること」→主観的意図として競業目的は認められない。しかし、主観的意図は不要であるから、客観的競争関係の事実により、拒絶可能。)

4 結論

第2 株主名簿の閲覧謄写請求について

1 株主名簿閲覧謄写請求の要件充足性(X社=Y社の「株主」→原則「株式会社の営業時間内」に、株主名簿の閲覧謄写請求が可能(125条2項)。)

2 Y社の反論(X社が「実質的に競争関係にある」ことを理由として、この請求を拒絶。⇔株主名簿の閲覧謄写請求の拒否事由は、125条3項各号に限定列挙されているところ、「実質的に競争関係にある」ことは含まれていない。
 =Y社が主張する拒絶理由は、そもそも法律上の根拠を欠いている。)

3 事実上拒絶事由が存在するか(X社の目的=「株主提案につき委任状勧誘を行うこと」→株主の権利である株主提案権(303条)や議決権(296条1項)行使のための準備行為。→125条3項1号・3号の目的には当たらない。株主の正当な権利行使である以上、原則、2号にも当たらない。加えて、4号の事実も存在しない。)

4 結論

 

【参考答案】

第1 会計帳簿(有価証券元帳)の閲覧請求について

1 X社は、Y社に対し、会計帳簿の閲覧請求(会社法(以下法令名省略)433条1項)をしている。X社はY社の議決権総数の10%、すなわち100分の10を有する株主であるから、「総株主の議決権の100分の3」以上の株式を有することという要件を充足する。
 したがって、「株式会社の営業時間内」に請求することで、X社には原則として会計帳簿の閲覧謄写請求権が認められる。
 これに対して、Y社は、X社が「会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するとき」(433条2項3号)に該当するとして、この請求を拒絶している。そこで、Y社の拒絶が正当なものとして認められるか、「実質的に競争関係にある」の意義および主観的意図として競業目的の要否が問題となる。

 2(1) 433条2項3号の趣旨は、閲覧請求により知り得た情報を競業に利用する危険を未然に防止する点にある。したがって、「実質的に競争関係にある」とは、現に競業関係にある場合のみならず、近い将来競業関係に立つ可能性がある場合も含まれると解する。

  (2) また、主観的意図の立証は困難であり、請求者・会社間に客観的な競業関係が存在することで、競業に利用する危険は認められる。したがって、433条2項3号に基づいて閲覧を拒絶するためには、請求者が客観的に「実質的に競争関係にある」ことを主張・立証すれば足り、請求者がその情報を競業に利用しようとする主観的意図を有していることまでを主張・立証する必要はないと解する。

 3(1) 本件では、X社は通信販売業を営んでおり、Y社は放送事業を営んでいるから、現時点において両者の事業は競争関係にはない。
 しかし、X社は、Y社の買収が実現しなかった場合でも、他の会社の買収や自ら放送事業の免許を取得するなどの方法により、放送事業へ進出することを具体的に計画している。このことから、「近い将来競業関係に立つ可能性がある」といえ、X社はY社との関係で「実質的に競争関係にある」(433条2項3号)者に該当する。

  (2) X社の今回の請求目的が「安定株主工作の状況を調査すること」にあり、直接の競業目的が認められないとしても、Y社は、X社が将来の競争関係にあるという客観的な事実をもって、閲覧を拒絶できる。

4 よって、Y社による閲覧謄写請求の拒絶は正当と認められるから、X社の有価証券元帳の閲覧請求は認められない。

第2 株主名簿の閲覧謄写請求について

1 X社はY社の「株主」であるから、原則として「株式会社の営業時間内」に、株主名簿の閲覧謄写を請求することができる(125条2項)。

2 これに対し、Y社は、X社が「実質的に競争関係にある」ことを理由として、この請求を拒絶している。 しかし、株主名簿の閲覧謄写請求の拒否事由は、125条3項各号に限定列挙されているところ、「実質的に競争関係にある」ことは含まれていない。
 したがって、Y社が主張する拒絶理由は、そもそも法律上の根拠を欠いている。

3 また、X社の目的は「株主提案につき委任状勧誘を行うこと」であるところ、これは株主の権利である株主提案権(303条)や議決権(296条1項)行使のための準備行為そのものである。そのため、「権利の確保又は行使に関する調査以外の目的」(125条3項1号)や「利益を得て第三者に通報する」(3号)目的には当たらない。そして、株主の正当な権利行使である以上、原則として2号の「株主の共同の利益を害する目的」にも当たらない。加えて、4号の過去2年以内に通報したという事実も存在しない。

4 よって、Y社による拒絶には正当な理由がなく、X社の株主名簿の閲覧謄写請求は認められる。

以上

コメント