目次
【答案構成】
1 X社の株主Y₁・Y₂に対する請求(それぞれ受領した配当金1500万円および150万円の支払請求)
X社の取締役Y₃・Y₄に対する請求(連帯して配当総額1億5000万円の支払請求)
2 株主Y₁およびY₂に対する請求について
(1) 規範(461条1項8号、同条1項柱書、462条1項柱書、462条2項対比)
(2) 当てはめ(X社の分配可能額=5000万円⇔総額1億5000万円の剰余金配当→461条1項の財源規制違反。
Y₁は、違法な剰余金配当により1500万円の交付を受けた。→462条1項柱書に基づき、1500万円全額の支払義務を負う。
Y₂は、分配可能額を超えることにつき善意で150万円の交付を受けた。→462条1項柱書に基づく株主の責任は、主観的事情に左右されない。→150万円全額の支払義務を負う。)
(3) 小結論(X社のY₁に対する1500万円、およびY₂に対する150万円の支払請求は、いずれも認められる。)
3 取締役Y₃およびY₄に対する請求について
(1) 規範(461条1項柱書、461条1項8号、462条1項柱書、462条1項6号イ、会計規160条1号、会計規160条3号、462条2項)
(2) 当てはめY₃(Y₃=違法な配当議案を株主総会に提出した取締役=会計規160条1号=「職務を行った業務執行者」。
→違法な配当議案は、Y₃による粉飾決算という不正な手段を用いて提出されたもの→職務について注意を怠らなかったことの証明は不可能。
(3) 当てはめY₄(Y₄=Y₃が提出した配当議案を承認した取締役会決議に賛成した取締役=会計規160条3号=「職務を行った業務執行者」。
→Y₄は計算書類の虚偽記載につき善意⇔取締役は、配当議案に賛成するにあたり、計算書類の内容が適正か、分配可能額の算定に誤りがないか等を監視・確認する監視義務を負う。→Y₄が責任を免れるためには、Y₄自身が注意を怠らなかったが虚偽記載を発見できなかったことを証明する必要がある→単に知らなかったというだけでは、無過失の証明としては不十分。
(4) 小結論(Y₃およびY₄は、株主が交付を受けた金銭等の総額である1億5000万円全額について、X社に対し、連帯して支払義務を負う。)
4 結論
【参考答案】
1 X社は、株主Y₁およびY₂に対し、それぞれ受領した配当金1500万円および150万円の支払いを請求する(会社法(以下法令名省略)462条1項柱書)。
また、取締役Y₃(462条1項6号イ、会社計算規則(以下「会計規」という。)160条1号)および取締役Y₄(462条1項6号イ、会計規160条3号)に対し、連帯して配当総額1億5000万円の支払いを請求する。
以下、これらの請求の当否を検討する。
2 株主Y₁およびY₂に対する請求について
(1) 「剰余金の配当」(461条1項8号)として、株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない(同条1項柱書)。この規定に違反して株式会社が剰余金の配当をした場合、当該配当により金銭等の交付を受けた株主は、当該株式会社に対し、交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う(462条1項柱書)。
この株主の支払義務は、会社の財産的基礎を維持し、会社債権者を保護するため、主観的事情に関わらず発生する厳格責任である(462条2項対比)。
(2) 本件では、X社は分配可能額5000万円であるにもかかわらず、総額1億5000万円の剰余金の配当を行っており、461条1項の財源規制に違反している。
Y₁は、この違法な配当により1500万円の交付を受けているから、462条1項柱書に基づき、X社に対して1500万円全額の支払義務を負う。
また、Y₂は、分配可能額を超えることにつき善意で150万円の交付を受けているが、462条1項柱書に基づく株主の責任は、主観的事情に左右されないから、X社に対して150万円全額の支払義務を負う。
(3) したがって、X社のY₁に対する1500万円、およびY₂に対する150万円の支払請求は、いずれも認められる。
3 取締役Y₃およびY₄に対する請求について
(1) 461条1項の規定に違反して、剰余金の配当(同項8号)がされた場合、当該配当に関する職務を行った業務執行者は、株式会社に対し、連帯して、株主が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う(462条1項柱書)。
剰余金の配当の場合、上記「職務を行った業務執行者」には、剰余金の配当に関する議案を株主総会に提案した取締役(462条1項6号イ、会計規160条1号)や、当該配当議案を承認した取締役会の決議に賛成した取締役(462条1項6号イ、会計規160条3号)が含まれる。
ただし、これらの取締役の責任は過失責任であり、「その職務を行うについて注意を怠らなかったこと」を自ら証明したときは、この支払義務を免れる(462条2項)。
(2) 本件配当は、上記2-(2)で見た通り、分配可能額を超えた違法な配当である。
Y₃は、違法な配当議案を株主総会に提出した取締役であるから、会計規160条1号に該当する取締役であり、「職務を行った業務執行者」に当たる。
この違法な配当議案は、Y₃による粉飾決算という不正な手段を用いて提出されたものであるから、職務について注意を怠らなかったことの証明は不可能である。
(3) Y₄は、Y₃が提出した配当議案を承認した取締役会決議に賛成しているため、会計規160条3号の取締役であり、「職務を行った業務執行者」に当たる。
Y₄は計算書類の虚偽記載について知らなかったものの、取締役は、配当議案に賛成するにあたり、計算書類の内容が適正か、分配可能額の算定に誤りがないか等を監視・確認する監視義務を負っている。 Y₄が責任を免れるためには、Y₄自身が注意を怠らなかったが虚偽記載を発見できなかったことを証明する必要があるところ、本問の事情によれば、単に知らなかったというだけでは、無過失の証明としては不十分である。
(4) したがって、Y₃およびY₄は、株主が交付を受けた金銭等の総額である1億5000万円全額について、X社に対し、連帯して(462条1項柱書)支払義務を負う。
4 よって、X社のY₁、Y₂、Y₃、Y₄に対する請求は、すべて認められる。
以上

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