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【参考答案】
1 Xらは、Y₂社の親会社であるY₁社に対し、Y₂社との雇用契約(民法623条)に基づき発生した未払給与等の支払を請求(以下「本件支払請求」という。)する。
もっとも、Y₁社とY₂社は別個の法人格を有する会社であり、Y₁社は、XらとY₂社間での契約に基づき発生した債務につき責任を負わない。そのため、XらはY₁社に本件支払請求をすることができないのが原則である。
しかし、本件では、Y₁社とY₂社を同視し得る事情が見受けられる。このような場合に、Y₁社とY₂社が別人格として責任を免れることは、信義に反する。そこで、例外的にY₂社の法人格を否認し、Y₁社に対して本件支払請求することが認められないか。いかなる場合に法人格が否認されるか明らかでないことから、問題となる。
2 会社は、その構成員である株主とは別個の独立した法人格を有し(会社法(以下法令名省略)3条)、株主は原則として会社の債務について責任を負わない。
もっとも、法人格が全くの形骸にすぎない場合や、違法・不当な目的のために濫用される場合にまで、会社と株主が別人格であることを貫くと、著しく正義・衡平に反する結果となり得る。
そこで、そのような例外的な場合には、当該事案の解決に限って、信義則(民法1条1項)に基づき会社の法人格の独立性を否定し、会社とその背後にいる株主とを同一視して、特定の法律関係をその株主等に帰責することが認められる。
具体的には、濫用事例の場合、株主が会社を自己の意のままに道具として支配できること、及び違法・不当な目的で法人格を利用することが必要となる。
また、形骸化事例の場合、株主による会社の支配の程度、会社と株主の義務や財産の混同の有無・程度、強行法規的な組織規定の履行状況等の事情を総合考慮して判断する。
3(1) Y₁社がY₂社を作ったのは、もともと関東方面の事業拠点づくりのためであった。そうすると、Xらの給与債務の免脱の目的でY₂社を設立したとは評価できず、違法・不当な目的で法人格を利用したとはいえない。
よって、法人格濫用には当たらない。
(2) 次に、Y₁社はY₂社株式を100%保有する完全親会社である。加えて、Y₂社取締役5人のうち4人はY₁社取締役との兼任であり、2022年1月からは、Y₁社代表取締役であるQがY₂社代表取締役にも就任し、Y₁社営業要員を使用してY₂社の営業活動を全面的に指揮していた。これらのことからすると、Y₁社がY₂社を現実的かつ統一的に管理支配していたと評価できる。
また、QはY₂社本社に姿を見せなくなり、Xらとの話し合いにも応じなかった。このことからすると、Y₂社における代表取締役としての義務より、Y₁社社長としての都合を優先していたといえ、義務の混同があったといえる。さらに、Y₁社の営業要員をY₂社において用いていたことからすると業務の混同も認められる。
一方、財産の混同は認められず、解散にあたっても臨時株主総会を開催するなど、会社法上の手続は遵守されていることからすると、Y₂社の法人格が全くの形骸に過ぎないとはいえず、法人格を否認することは認められない。
4 よって、Xらは、Y₁社に対して本件支払請求をすることは認められない。
以上

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