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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題10 筆界確定訴訟

目次

 

【参考答案】

第1 設問前段部分について

1 裁判所が、網掛け部分についてYの時効取得を認める場合、Xの主張する筆界cdはYの所有地内となり、当事者適格が認められないのではないか。

2 係争地を時効取得したとしても、それが隣接地の「一部」にとどまる限り、両当事者が「隣接する土地の所有者同士」であるという関係に変わりはない。また、筆界確定訴訟は公法上の境界を確定するものであり、所有権の範囲とは区別されるべきであるから、所有権界の変動が直ちに筆界確定の利益を失わせるものではない。  
 したがって、隣接関係が失われない限り、当事者適格は失われないと解する。

3 本件では、Xが主張する筆界がYの取得時効によってYの所有地内に存することとなっている。しかし、甲地の全部がYによって時効取得されたわけではないため、XとYは依然として隣接土地所有者としての関係を有する。
 したがって、Xの当事者適格は失われず、裁判所はcdを筆界とする判決を出すことができる。

第2 設問後段部分について

1 本問において、Yのみが控訴しているにもかかわらず、控訴審がcdを筆界とした第一審判決よりも控訴人Yに不利益なアイを筆界とする判決をすることは、不利益変更禁止の原則(民事訴訟法(以下法令名省略)304条)に反し、許されないのではないか。

2 304条は、控訴審は当事者の不服申立ての限度においてのみ第一審判決の取消し・変更をすることができると定め、控訴人に不利益な変更を禁止している。これは、私的自治の訴訟的反映である処分権主義(246条)が、控訴審においても妥当することの現れである。
 もっとも、筆界確定訴訟は、公法上の境界である筆界を確定する形式的形成訴訟であり、その公益性から、裁判所は当事者の主張に拘束されず、自ら真実の筆界を発見・確定すべきものである。このように筆界確定訴訟には処分権主義の適用がない以上、処分権主義を根拠とする不利益変更禁止の原則もまた、適用されないと解する。

3 そうすると、控訴審裁判所は、控訴人Yの不服申立ての範囲に拘束されることなく、審理の結果得られた心証に基づいて筆界を定めることができる。したがって、たとえ第一審判決よりもYに不利益な結果となるとしても、裁判所がアイを真実の筆界と判断した以上、その通りに判決することに問題はない。

4 よって、控訴審裁判所は、アイを筆界とする判決をするべきである。

以上

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