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参考答案 Law Practice 憲法〔第3版〕 基本問題1 外国人と基本的人権

Law Practice 憲法〔第3版〕
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【参考答案】

 1(1) まず、Xは、本件不許可処分がXの在留権を侵害するものとして、憲法(以下法令名省略)22条1項に反し、違憲であると主張することが考えられる。

  (2)ア 憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについては何ら規定していない。また、国際慣習法上も、国家は外国人の入国を許可する義務を負わず、外国人の入国の許否は当該国家の裁量に委ねられている。
 したがって、憲法上、外国人はわが国に入国する自由を保障されていないことはもちろん、在留の権利ないし引き続き在留を要求し得る権利を保障されているものでもないと解すべきである。

   イ Xは米国籍の外国人であり、外国人には憲法上、在留権ないし我が国に引き続き在留することを要求し得る権利は保障されていない。
 したがって、Xの在留権は22条1項の保障範囲には含まれず、本件不許可処分は、Xの在留権を侵害するものとして22条1項に反しない。

 2(1) 本件では、法務大臣が、Xによる米軍基地反対、自衛隊の海外派遣反対等のデモ行進や集会への参加(以下「本件政治活動」という。)を消極的事情として考慮して本件不許可処分をしている。そこで、本件不許可処分は、Xの政治活動の自由を侵害するものとして21条1項に反し、違憲であると主張することが考えられる。

  (2)ア 本件不許可処分は、Xが行った本件政治活動を消極的事情として考慮してなされたものである。もっとも、Xは米国籍の外国人であり、憲法第3章の表題も「国民の権利及び義務」とされている。そこで、外国人であるXにも政治活動の自由が保障されるかが問題となる。

   イ 人権には前国家的性格を有する権利があることに加え、国際協調主義(98条2項)を採用していることから、第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶと解すべきである。
 そして、表現の自由の一内容たる政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位に鑑みこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶと解される。

   ウ 本件政治活動は、我が国の外交・安全保障政策に対する自己の政治的意見を表明する活動であるから、政治活動の自由に当たる。
  確かに、その内容は我が国の外交・安全保障政策に関するものであり、我が国の政治的意思決定又はその実施と無関係とはいえない。
  しかし、Xはデモ行進や集会に参加して自己の意見を表明したにすぎず、選挙その他の我が国の政治的意思決定過程に直接参加したものではない。また、その活動が違法又は暴力的なものであったとの事情もない。
  したがって、Xの本件政治活動は、外国人に認めることが相当でない政治活動であるとまではいえず、21条1項の保障が及ぶ。

  (3) 確かに、本件不許可処分は、Xによる政治活動そのものを禁止したり、刑罰等を科すものではなく、過去に行われた政治活動を在留期間更新の際の消極的事情として考慮したものにすぎない。そのため、政治活動の自由に対する直接的な制約ではない。
 もっとも、憲法上保障される政治活動を行ったことを理由として、在留期間の更新について不利益に取り扱われるのであれば、在留期間の更新において不利益に扱われることをおそれ、政治活動を差し控えるおそれがある。
 したがって、憲法上保障される政治活動を在留期間更新の消極的事情として考慮することは、政治活動に対する萎縮効果を生じさせるものであり、政治活動の自由に対する間接的な制約に当たる。

  (4)ア 在留期間の更新については、在留状況、治安、外交関係等の諸般の事情を総合考慮する必要があるから、その判断について法務大臣に裁量が認められる。
 一方、本件不許可処分は、21条1項によって保障される政治活動の自由を間接的に制約する処分であるから、法務大臣は、裁量権行使に当たり、政治活動の自由が憲法上保障されること及びその重要性を十分に考慮する必要がある。
 そこで、本件政治活動を在留期間更新の消極的事情として斟酌する必要性、当該政治活動の内容・性質及びこれを不利益に考慮することによる制約の態様・程度等について、法務大臣が考慮すべき事情を適切に考慮し、考慮すべきでない事情を考慮していないか、各考慮要素の評価・重み付けが明白に合理性を欠いていないかを審査し、法務大臣の判断が社会通念上著しく妥当性を欠く場合には、裁量権の逸脱・濫用として違法になると解する。

   イ 本件において、Xが参加したのは、沖縄の米軍基地反対、自衛隊の海外派遣反対等のデモ行進や集会である。これらは、外交・安全保障政策に直接関わる政治活動であるから、わが国の政治的意思決定、実施等に一定の影響を及ぼす可能性がある。そのため、Xの在留の適否を判断するに当たり、本件政治活動の内容・態様を考慮する必要性が認められる。
 他方、本件政治活動は、21条1項により保障される政治的意見の表明であり、その活動が違法又は暴力的なものであったとの事情はない。また、憲法上保障される政治活動を行ったことを在留期間更新の消極的事情として過度に考慮すれば、Xのみならず、我が国に在留する外国人一般に対し、更新時の不利益をおそれて政治活動を差し控えさせる萎縮効果を生じさせるため、慎重な評価が必要である。
 もっとも、Xは、英語教師として語学学校に勤務するために在留を認められたにもかかわらず、無届けで短期間のうちに転職したという在留状況を消極的に評価し得る事情が存在する。また、本件不許可処分は、Xの政治活動そのものを禁止し、又はこれに刑罰等を科すものではなく、その活動を在留期間更新の判断における一事情として考慮したものである。
 そうすると、法務大臣は、Xの政治活動のみを過度に重視したものではなく、その内容・性質に加えて、無届転職等の在留状況を併せて考慮したといえる。
 これらの事情に照らせば、本件政治活動を消極的事情の一つとして評価したことが、その憲法上の重要性を不当に軽視し、又は同活動を過度に重視したものとして、明白に合理性を欠くとまではいえない。
 したがって、法務大臣の判断過程に、考慮不尽又は衡量不均衡があるとはいえず、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くものともいえないから、裁量権の逸脱・濫用は認められない。

  (5) 以上より、本件不許可処分は21条1項にも反しない。よって、Xの主張は認められない。

以上

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