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参考答案 事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕 問題19 類似事実証拠排除法則

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【参考答案】

1 被告人は、高級輸入ドイツ車ベンツに対する器物損壊罪計10件で起訴され、うち4件については事実を認めたが、残りの6件については犯人性を争っている。そこで、裁判所は、被告人が自認する4件の犯罪事実(以下「類似事実」という。)を、残りの6件の器物損壊(以下「証明対象事実」という。)について被告人と犯人の同一性を推認するための間接事実として用いることが許されるか。

2 類似事実証拠は、被告人の犯罪性向の立証を介して、被告人がそのような犯罪性向に沿って本件被告事件を犯したことを窺わせるものとして犯人性との関係で自然的関連性を有する。
 しかし、犯罪性向は、実証的根拠の乏しい人格的評価につながりやすく、不確実な推認により事実認定を誤らせるおそれがある。また、そのような事態を回避するための立証により、争点が拡散するおそれもある。
 そこで、類似事実証拠を犯罪性向の立証を媒介とする犯人性立証に用いることは、法律的関連性を欠くものとして許されないと解する。
 もっとも、①類似事実証拠が顕著な特徴を有し、かつ、②その特徴が起訴に係る犯罪事実と相当程度類似する場合には、例外的に犯人性立証の証拠とすることが許されると解する。
 なぜなら、①②を満たす場合、起訴に係る犯罪事実が被告人以外の第三者により行われた蓋然性が極めて低くなるため、起訴に係る犯罪事実が被告人以外の第三者によって行われることは考え難いという経験則の適用により、①②自体から被告人の犯人性を合理的に推認できるからである。

 3(1) 類似事実は、いずれも、鎌倉市内の海岸沿いの高級マンションの駐車場に駐車中のベンツの右又は左の後輪タイヤを千枚通しで数回刺してパンクさせ、ボンネットをバタフライナイフでZ状に傷つけるというものである。犯行日時は、7月下旬及び8月上旬の午後9時ころから午後10時ころまでの間である。これらの事情は個々にみると、顕著な特徴とまではいえない。
 しかし、被害対象が高級輸入ドイツ車ベンツに限定されており、後輪タイヤを千枚通しで刺してパンクさせるという手口と、ボンネットを刃物でZ状に傷つけるという手口を組み合わせて行っていること、犯行地域が鎌倉市内の海岸沿いの高級マンション駐車場に限定されていること、犯行日時が7月下旬から8月上旬の午後9時ころから午後10時ころという特定の時期・時間帯に集中していることを総合すると、第三者による模倣を含め、同様の行為を行う者が他に存在する可能性は著しく低いといえる。
 したがって、①類似事実は顕著な特徴を有するといえる。

  (2) 次に、証明対象である6件の犯罪事実は、いずれも、令和2年7月下旬から8月中旬にかけて、午後9時ころから午後10時ころまでの間に、鎌倉市内の海岸沿いの高級マンションの駐車場に駐車中のベンツの右又は左の後輪タイヤを千枚通し様の刃物で数回刺してパンクさせ、ボンネットをナイフ様の刃物でZ状に傷つけるというものである。
 そうすると、6件の犯罪事実は、被害対象、犯行手口・態様、犯行地域、犯行の時期・時間帯のいずれにおいても、類似事実4件と共通している。
 したがって、類似事実の顕著な特徴は、②証明対象事実と相当程度類似しているといえる。

4 したがって、裁判所は、被告人の自認する4件の犯罪事実を、他の6件の器物損壊について被告人と犯人の同一性を推認するための間接事実として用いることが許される。

以上

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