スポンサーリンク

参考答案 事例研究 行政法〔第4版〕第1部 行政法の基本課題 第1問 予備校設置認可をめぐる紛争

事例研究 行政法〔第4版〕

目次

 

【参考答案】

第1 設問1について

 1(1) Aは、本件処分の取消事由として、行政手続法(以下、「行手法」という)5条1項及び同条3項違反を主張することが考えられる。

  (2) 本件処分は認可許否処分であって、学校教育法134条2項が準用する同法4条1項に基づき都道府県知事が行うことから、行手法上の申請に対する処分(行手法2条3項)に該当する。そして、行手法3条・4条の場合に該当せず、学校教育法上の適用除外規定も存在しないことから、行手法が適用される。
 上記によると、行手法上の手続履践が要求されるため、行手法第2章の規定が適用される。

2 本件では、「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」は「申請により求められた許認可等をするかどうかを……判断するために必要とされる基準」(行手法2条8号ロ)にあたるため、審査基準である。 そのため、行手法5条3項によれば、審査基準たる上記考慮要素は公表しなければならないが、本件では予め定めていなかったか、定めていたとしても公表されていなかった。
 また、本件は「行政上特別の支障がある」(行手法5条3項)といえる事情も見当たらない。
 よって、行手法5条1項及び3項違反となる手続的瑕疵があるといえる。

 3(1) では、処分の手続における瑕疵が、処分の取消事由となるか。

  (2) 法律上、手続規定が設けられている意義は尊重されなければならないが、他方、手続の瑕疵をとらえて処分がやり直されたとしても処分結果に変更が生ずる可能性がない場合等においてまで処分を取り消すと、訴訟経済・行政経済に反するといえる。
 したがって、手続的瑕疵は、原則として取消事由にはあたらないが、例外として、当該手続的瑕疵が処分結果に変更可能性をもたらす場合か、重要な手続きに重大な瑕疵がある場合に限り、取消事由となると解する。

  (3) 本件では、Aは、上記基準が設定され公表されていた場合には、過当競争による教育水準の低下をもたらさないための方策を具体的に申請段階で申請書に記載できたはずである。そうすると、不認可という結果を左右する瑕疵であったといえる。
 以上より、本件上記手続的瑕疵は、本件処分の取消事由に該当する。

4 また、上記主張が認められAが勝訴した場合、取消訴訟の拘束力により、B県知事は判決の趣旨に従い、審査基準を設定・公表し、必要がある場合にはAからの追加書類を受理し、再度申請を審査する義務を負う(行訴法33条1項)。

第2 設問2について

1 Aは本件処分の取消事由として、「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」を考慮することは、他事考慮であって、裁量権の逸脱濫用(行訴法30条)となり違法であると主張すると考える。

2 行政裁量の有無は、処分の根拠法令の文言、処分の内容および性質を総合考慮して判断される。そして、仮に裁量が認められる場合であっても、逸脱濫用があれば違法となる(行訴法30条)。具体的には、重大な事実誤認や考慮逸脱・他事考慮がなされた場合に裁量権の逸脱濫用として、処分は違法になると解する。

 3(1) 本件処分は、学校教育法134条が準用する同法4条1項に基づきなされるところ、これらの規定は許可権者を定めるにとどまる。また、同条3項は、「各種学校に関し必要な事項」についての定めを委任する規定であり、委任を受けて各種学規定も定められているが、各種学校の設置認可の要件についての定めがない。このような規定形式から、各種学校の認可については許可権者に広範な裁量を認める趣旨かと思われる。
 しかし、学校教育法は、学校(学校教育法1条)と各種学校(学校教育法134条1項)とを別個定義している。そして、学校は国、地方公共団体、学校法人のみが設置でき(学校教育法2条)、公の性質を持つとされている(学校教育法6条1項)のに対し、各種学校にそのような定めはない。
 これらによると、学校教育法は、学校と各種学校と区別して考えており、公の性質を有する前者には、国が相当程度運営に関与することが予定されている。
 そのような性質を有さない各種学校の設置は、職業選択の自由(憲法22条)の行使として、原則として自由でなければならない。
 したがって、各種学校の設置要件としては、各種学校規程に定められた事項以外の事を考慮してはならない。

  (2) そして、「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」は、各種学校規程に定められていない事項である。
 もっとも、B県知事側は、各種学校規程9条1項が定める「教育上及び保健衛生上適切な環境」という要件の解釈上、「適正配置」を考慮することは許されると反論することが考えられる。しかし、同項の趣旨は、騒音、歓楽街、不衛生な場所など、教育活動を行う上での物理的・衛生的な環境が適切であることを求めるものと解される。これに対し、「過当競争の防止」という考慮は、既存の事業者保護という経済的・産業政策的な観点に基づくものであり、同項が予定する「教育上適切な環境」の趣旨とは全く異なる。
 したがって、かかる点を考慮することは、考慮すべきでないことを考慮した他事考慮にあたる。 そのため、裁量の逸脱濫用があり、違法である。

4 また、以上の主張が認められてAが勝訴した場合、B県知事は「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」を考慮要素から除外し、改めて申請を審査する義務を負う(行訴法33条)。

以上

コメント