スポンサーリンク

参考答案 事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕 問題29 違法収集証拠排除法則(2)

事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕
スポンサーリンク

【参考答案】

1 本件証拠物は、Z国捜査機関がZ国内で収集したものである。国際司法共助によって獲得された証拠であっても、我が国の刑事裁判における証拠能力は、我が国の刑事訴訟法等に基づいて判断される。
 もっとも、日本の憲法及び刑事訴訟法は、外国の領域内で活動する外国捜査機関に直接適用されるものではないから、本件捜索が無令状で行われたことをもって、日本の法令に違反するものと評価することはできず、通常の違法収集証拠排除法則を適用することはできない。そこで、日本法上違法とは評価できない外国捜査機関の証拠収集手続についても、その証拠を我が国の刑事裁判で使用することを禁止すべき場合があるかが問題となる。

2 この点、外国捜査機関によって収集された証拠であっても、著しく非人道的な手続によって獲得された証拠を我が国の裁判所が使用することは、正義の観念に反し、司法に対する国民の信頼を害し得る。他方、国際捜査共助は、各国の証拠収集手続が我が国の手続と異なることを当然の前提としているから、単に我が国で同様の手続が行われれば違法となるというだけで証拠能力を否定すべきではない。
 そこで、外国の捜査機関が外国において収集した証拠については、その証拠能力の判断に当たり、証拠収集手続を日本国憲法及び刑事訴訟法の基本理念に照らして実質的に評価し、当該手続が個人の尊厳を害するなどこれらの根本理念に著しく反し、その証拠を日本の刑事裁判で使用することが正義の観念に反し、司法に対する国民の信頼を損なう場合に限り、証拠能力が否定されると解する。

3 本件では、Z国捜査機関はYの自宅を無令状で捜索しており、我が国で同様の捜索が行われれば令状主義との関係で問題となり得る。
 しかし、Z国法は、証拠物が存在する蓋然性が高い場所について無令状で捜索し、発見した証拠物を差し押さえることを認めており、本件捜索もこの制度に従って行われている。また、拷問、暴行その他個人の人格を著しく害する方法が用いられた事情もない。
 これらのことから、本件捜索は、個人の尊厳を害し、我が国の憲法及び刑事訴訟法等の根本理念に著しく反する捜査とはいえない。したがって、その証拠を我が国の刑事裁判で使用することが、正義の観念に反し、司法に対する国民の信頼を損なうともいえない。
 よって、本件証拠物の証拠能力は否定されず、Xの公判において証拠として用いることができる。

以上

コメント