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【参考答案】
1 本件において、XはB医師のルンバール施術により障害を負ったとして損害賠償を求めている。民事訴訟法(以下法令名省略)247条は、裁判所は弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を参酌し、自由な心証により事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断すると規定する。もっとも、裁判官による事実認定が恣意に流れることは許されないため、事実認定には客観的な裏付けが必要となる。
一方、本件では、医学的鑑定において因果関係を肯定できるとまでは断言されていない。このような状況下で、裁判所がいかなる程度の心証を得れば事実を認定することができるか、「証明」の程度が問題となる。
2 訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものと解する。
なぜなら、民事訴訟は法的な紛争解決を目的とする手続であり、真理の探究を目的とする自然科学的な証明とはその性質を異にするからである。
3 本件では、以下の間接事実が認められる。
第一に、時間的近接性として、Xは一時重篤状態を脱し軽快しつつあったにもかかわらず、本件施術のわずか15分後に突如発作を起こしている。
第二に、施術の態様とXの身体状況として、施術はXの食事直後に実施され、Xが嫌がって泣き叫ぶなどしたため長時間かかっており、かつXには出血傾向があった。これらは、施術が脳出血等のショックを引き起こす危険性を高める事情といえる。
第三に、B医師の認識として、発作後、B医師はXの症状を脳出血によるものとして治療を行っており、専門家である担当医自身が当初は施術による脳出血を疑っていたことが推認される。
第四に、他原因の可能性の欠如として、Yが主張する化膿性髄膜炎の再燃については、その可能性は通常低く、当時再燃するような特段の事情も認められなかった。
以上の事実を総合すれば、医学的な鑑定意見において因果関係が断定されていないとしても、本件施術とXの発作・障害との間には、経験則上、因果関係があることについて高度の蓋然性が認められるといえる。他原因の可能性が排斥され、施術と結果との間に密接な関連性が認められる以上、通常人が疑いを差し挟まない程度の真実性の確信を得るに足りるといえるためである。
4 よって、裁判所は、Xの障害等とルンバールの施術との因果関係を肯定することができる。
以上

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