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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題66 類似必要的共同訴訟

目次

 

【参考答案】

第1 X₄~X₇提起の住民訴訟の取扱いについて

1 X₄らの提起した訴訟は、X₁らの提起した訴訟と別の手続として進行させることが認められるか。

 2(1) 住民訴訟は、普通地方公共団体の数人の住民が当該地方公共団体に代位して提起する訴訟であり、その判決の効力は当事者となった住民のみならず、当該地方公共団体の全住民に及ぶ。このように、住民訴訟においては、一人の住民に対する判決が確定すれば他の者もこれに反する主張をすることができなくなる関係にあることから、数人の住民が共同して訴えを提起した場合には、判決が合一にのみ確定すべき類似必要的共同訴訟に当たると解される。

  (2) 合一確定の要請及び住民訴訟は元来提訴者各人が個別的な利益を有しているものでないという性質に鑑み、地方自治法242条の2第4項は、先行する住民訴訟が提起されている場合、他の住民による別訴の提起を禁止する。

3 本件では、X₁らの提起した玉串料支出相当額の損害賠償の請求をすることをA県知事に対して求める住民訴訟が先行しており、その後、X₄~X₇が提起した訴訟も、同様の主張をして同額の損害賠償を求めるものである。そうすると、X₄らの訴えは、先行するX₁らの訴訟と同一の請求についての別訴に該当することが明らかである。
 したがって、後から提起されたX₄らの訴訟を、X₁らの訴訟と別の手続として進行させることは認められない。

第2 X₄の死亡による影響について

1 X₁らの訴訟とX₄らの訴訟とが併合された後、X₄が死亡した場合、訴訟手続にいかなる影響があるか。

2 上述の通り、住民訴訟は、判決の合一確定が要請される類似必要的共同訴訟であるため、「共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる」(40条3項)。そして、訴訟係属中に当事者が死亡した場合、原則として、訴訟手続は中断し、相続人等の法令で定める者がこれを受け継ぐべきことになる(124条1項1号)。
 住民訴訟は、普通地方公共団体の住民であること(地方自治法242条の2第1項)を要件として認められるものであり、この原告適格は、当該地方公共団体の住民としての地位に付随する一身専属的なものである。したがって、住民訴訟を提起した者が死亡した場合、その地位は相続人に承継されることはないため、受継の余地はなく、当該当事者に係る訴訟は当然に終了する。

3 本件において、X₄は死亡しているが、住民訴訟の性質上、X₄の地位を相続人が承継することはない。そのため、相続人の受継を待つための中断という事態は生じず、X₄に係る訴訟部分は死亡により当然に終了する。40条3項は「中断又は中止の原因があるとき」に適用される規定であるところ、本件ではX₄についてそもそも中断が生じない以上、同項の適用はない。
 よって、X₄の死亡による終了は、他の共同訴訟人には波及せず、残余の当事者との関係で訴訟手続はそのまま進行する。

第3 X₂を除く上告の適法性とその地位について

1 類似必要的共同訴訟において、共同訴訟人の一人がした上訴の提起は、「全員の利益」となる行為として、全員について効力を生じる(40条1項)。では、共同訴訟人の一部のみが上告を提起した場合、上告をしなかったX₂に効力が及び上告人となるか。

2 上訴の提起は、印紙代の納付や主張立証活動など、上訴審における訴訟追行の負担を伴うものであるから、本人の意思を無視して上訴人の地位を強制すべきではない。また、住民訴訟においては、個々の住民が公益の代表者として訴訟を追行するものであり、一部の者が上訴人として追行すれば、違法な財務会計行為の是正という訴訟の目的は達せられる。
 したがって、自ら上告しなかった共同訴訟人は、上告人にはならないと解するのが相当である。

3 よって、本件においてX₂抜きの上告の提起は適法であり、X₂は上告人としての地位を有しない。ただし、X₁らの上告により判決の確定は遮断され、事件全体が移審しているため、合一確定の要請から、X₂による請求も上告審の審判の対象として残ることになる。

第4 X₅の上告取下げの適法性とその地位について

1 必要的共同訴訟において、上訴の取下げは「不利益な行為」にあたるため、原則として全員が共同して行わなければ効力を生じない(40条1項)。そこで、住民訴訟において、共同上告人の一人であるX₅が単独で上告を取り下げることは許されるか。

2 類似必要的共同訴訟である住民訴訟においては、各住民が独立して原告適格を有しており、本来単独で訴えを提起しうる地位にある。そうであれば、上訴を取り下げて訴訟から離脱したいという者の意思を制約してまで、訴訟追行を強制する理由はない。また、他者が上訴を維持している限り、判決の確定は遮断され続けるため、単独での取下げを認めても他の共同訴訟人の不利益にはならない。
 したがって、類似必要的共同訴訟においては、単独での上訴の取下げが認められると解すべきである。

3 よって、X₅による上告の取下げは適法である。これにより、X₅は上告人の地位を失う。もっとも、X₁らの上告により判決の確定は遮断されているため、X₅はX₂と同様、上告人ではないが、合一確定に必要な限度で手続に関与すべき当事者として扱われ、上告審判決の効力はX₅にも及ぶことになる。

以上

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