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参考答案 事例演習 刑事訴訟法〔第3版〕 問題24 伝聞法則(2)

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【参考答案】

第1 領収書の証拠能力について

1 裁判所は、本件領収書を証拠採用することができるか。
 本件領収書は、SがYから現金を受領した旨の記載のある書面であり、刑事訴訟法(以下法令名省略)320条1項の「公判期日外における他の者の供述を内容とする書面」に形式的に該当する。そこで、320条1項により排除される証拠に該当しないか。320条1項の意義が問題となる。
 なお、弁護人は不同意の意見を述べているため、326条1項によっては証拠とできない。

2 供述証拠は、知覚・記憶・表現・叙述を経て公判廷に顕出されるところ、これらの各過程には誤りが混入しやすい。それゆえ、反対尋問等により、そのような誤りがないかを吟味する必要がある。ところが、公判廷外供述を内容とする書面は、そのような吟味をすることができない。そこで、誤判防止のためにそのような証拠を排除するのが320条1項の趣旨である。
 したがって、320条1項により証拠能力が否定される証拠とは、公判廷外供述を内容とする書面であって、その内容の真実性が問題となるものをいうと解する。そして、真実性が問題となるか否かは、要証事実との関係で相対的に決せられる。

3 検察官は、本件領収書の立証趣旨を「領収書の存在と内容」としている。これを「SがYから現金1000万円を受領した事実」という記載内容の真実性を立証する趣旨だと解すれば、本件領収書は伝聞証拠となる。
 しかし、領収書は、通常はそこに記載された事実が存在しなければ作成されない性質の書面である。そのため、領収書の存在・記載自体とその領収書が作成者から相手方に交付された事実から、作成者と相手方との間で記載内容通りの金員の授受があった事実を推認することができる。
 本件領収書には、SがYから現金を受領した旨の取引内容が記載されており、これがSからYに交付され、さらにR社のX使用の机の施錠された引き出しから発見・保管されている事実が認められる。そうだとすれば、本件領収書は、その存在自体が記載内容の真実性から独立した固有の証拠価値を有し、上記間接事実から金銭授受の事実を推認することは経験則に適う合理的な推認である。
 したがって、検察官の立証趣旨のとおり「領収書の存在と内容」を要証事実と捉えても、証拠として自然的関連性を有し、この要証事実との関係では作成者Sの公判廷外供述の内容の真実性は問題とならず、本件領収書は非伝聞証拠であり、証拠能力が認められる。

4 よって、本件領収書は伝聞法則(320条1項)により排除されず、証拠能力が認められ、裁判所は、本件領収書を証拠として採用することができる。

第2 メモの証拠能力について

1 裁判所は、本件メモを証拠採用することができるか。
 本件メモは、X・Y間でなされた利益供与の計画等が記載された書面であり、320条1項の「公判期日外における他の者の供述を内容とする書面」に形式的に該当する。そこで、第1の領収書と同様に320条1項により排除される証拠に該当しないかが問題となる。 
 なお、弁護人は不同意の意見を述べているため、326条1項によっては証拠とできない。

2 320条1項により証拠能力が否定される証拠に当たるかは、第1-2の基準により判断する。

3 検察官は、本件メモの立証趣旨を「メモの存在と内容」としている。これを、記載内容のとおりX・Y間で共謀が成立したという「内容の真実性」を立証する趣旨だと解すれば、作成者Yの公判廷外供述の内容の真実性が問題となるため伝聞証拠となる。
 しかし、犯行前に作成された犯行計画メモは、その記載内容が現実の犯罪事実と一致し、かつ被告人の支配領域内で発見された場合には、メモの存在自体が被告人の犯行への関与を推認させる情況証拠としての固有の証拠価値を有すると解される。
 そして、本件メモには「Sに現金1000万円を供与し、Y宛の領収書を徴する」旨の計画が記載されており、これは前述の領収書の存在から推認される実際の犯行内容と符合している。また、本件メモは、R社の総務部長室にある「X使用の机の施錠された引き出し」の中から発見されており、X以外の関与が困難な支配領域内で厳重に保管されていた事実が認められる。
 そうだとすれば、メモの存在と記載自体から、犯行と無関係な者が実際の犯行と符合する計画メモを入手し、自らの施錠された引き出しに隠し持つことは考え難いという経験則を経て、Xが本件利益供与の共謀に関与していた事実を合理的に推認することができる。
 よって、検察官の立証趣旨のとおり「メモの存在と内容」を要証事実と捉えても証拠として自然的関連性を有し、この要証事実との関係では作成者Yの供述内容の真実性は問題とならないため、本件メモは非伝聞証拠である。

4 よって、本件メモは伝聞法則(320条1項)により排除されず、証拠能力が認められ、裁判所は、本件メモを証拠として採用することができる。

以上

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