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参考答案 事例研究 行政法〔第4版〕第1部 行政法の基本課題 第9問 太陽光発電設備の設置をめぐる紛争

事例研究 行政法〔第4版〕
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【参考答案】

第1 設問1 小問1について

1 本件事業に対する町としての結論を早く出してもらうため、乙町を被告として(行政事件訴訟法(以下、法令名省略)38条1項、11条1項)、同意の申し込みに対する不作為の違法確認訴訟(3条5項)を提起するべきである。

2 不作為の違法確認訴訟の訴訟要件は、① (応答行為の)処分性(行訴法3条5項)、② 原告適格(行訴法37条)、③ 狭義の訴えの利益、④ 被告適格(行訴法38条、11条)、⑤ 裁判管轄(行訴法38条、行訴法12条)である。

3 本件において、町長の同意の法的性質は「行政処分」であることが前提とされている(要件①充足)。
 そして、本件条例は「申請」の文言を用いていないものの、開発者が条例4条に基づき協議書を提出した場合、条例5条は町長に対し「同意の可否を決定し、その旨を通知しなければならない」と応答義務を課している。したがって、A社による開発行為協議書の提出は「法令に基づく申請」(行訴法3条5項)に当たり、A社は自ら当該申請をした者として原告適格を有する(要件②充足)。また、A社はいまだ申請に対する何らの応答も受けておらず、速やかに結論を求める客観的利益が認められる(要件③充足)。
  そのため、処分庁たる町長の所属する公共団体である乙町を適法な被告として(要件④充足)、⑤管轄裁判所に訴訟提起することで訴訟要件を充足する。
 したがって、本件不作為の違法確認の訴えは適法である。

 第2 設問1 小問2について

1 不作為の違法確認訴訟の本案勝訴要件は、「相当の期間」(行訴法3条5項)が経過しているにもかかわらず、行政庁からの応答がないことである。
 そこで、「相当の期間」の経過の有無はいかなる基準により判断されるべきか。また、行政指導により処分の判断が留保されていることが「相当の期間」の経過を阻却する特段の事情となるかが問題となる。

2 「相当の期間 の有無は、特段の事情がない限り、当該処分をなすに通常必要とする期間を経過しかた否かにより判断されるべきであり、行政手続条例上の標準処理期間の徒過が目安となる。
 もっとも、処分庁が処分を留保して行政指導を行っている場合には、上記特段の事情にあたり、上記期間を徒過しても直ちに違法となるわけではない。しかし、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を真摯かつ明確に表明した場合には、それ以降の処分の留保は、他に特段の事情がない限り違法となると解する(乙町行政手続条例31条1項参照)。

3 乙町の標準処理期間は3か月とされているところ、A社が協議書を提出してから既に約1年が経過しており、期間を大幅に超過している。
 確かに、町長は地元の承諾を得るよう行政指導を継続しているが、A社は説明会を3度開催した上で、2019年12月1日に「これ以上説明会を重ねても地元は納得しようとしない。1日も早く結論を出してほしい」と内容証明郵便で通知しており、行政指導に従えない旨を真摯かつ明確に表明している。
 そして、行政指導を理由とする処分の留保の他に考えられる特段の事情としては、地元の承諾書が未提出であることや、翌年の町長選挙への影響に対する懸念が挙げられる。
 しかし、「地元の承諾書」(条例7条)は、条例6条の同意基準とは関連せず、同意・不同意を判断するための必要書類でもない。したがって、承諾書がないことのみを理由とした不作為の継続理由とならない。
 また、仮に翌年の町長選挙への影響を考慮して留保しているとすれば、それは不当な他事考慮である。
 したがって、本件において遅延を正当化する特段の事情は認められない。

4 よって、A社が明確に拒絶を示した2019年12月1日以降、処分の留保を正当化する特段の事情は認められず、本件申請に対する処分をするために通常要すべき「相当の期間」は既に経過しているといえる。にもかかわらず、町長は現在に至るまで本件申請に対して何らの処分もしていないのであるから、「相当の期間」が経過しているにもかかわらず行政庁からの応答がないという本案勝訴要件を満たす。
 以上より、本件不作為は違法であり、本件訴訟におけるA社の勝訴の見込みは極めて高いといえる。

 第3 設問2について

 1(1) A社は、本件不同意処分の取消訴訟(行訴法3条2項)において、本件処分は町長の裁量権の逸脱・濫用(行訴法30条)に当たり違法であると主張すべきである。

  (2) 本件処分は条例4条及び5条に基づくものである。条例5条1項は、条例6条「に定める同意の基準に従い審査し」と規定している。一方、問題となっている「地元の承諾」は、同意基準を定める条例6条とは別個の条例7条において「原則として……得るものとする」と定められるにとどまり、罰則等の規定もない。
 かかる規定の位置づけ・文言に照らせば、条例7条は開発者に対する努力義務を定めたものであり、町長の同意の要件を定めたものではないと解される。
 本件においてA社の事業計画は、条例6条及び同施行規則が定める細目基準に適合していることが乙町によっても確認されている。以上を前提とすると、A社としては、法定の要件を満たしているにもかかわらず、要件ではない条例7条の「地元の承諾がないこと」のみを理由として不同意処分とすることは違法であると主張すべきである。
 そこで、細目基準を充足している場合において、町長に同意の可否を決定する裁量が認められるか。また、認められるとして、地元の承諾がないことを理由に不同意とすることが、裁量権の逸脱・濫用に当たらないかが問題となる。

2 裁量の有無及び範囲は、処分の根拠法令の文言、処分の内容および性質を総合考慮して判断される。そして、仮に裁量が認められる場合であっても、逸脱濫用があれば違法となる(行訴法30条)。具体的には、他事考慮や平等原則違反がなされた場合には、裁量権の逸脱濫用として、処分は違法になると解する

 3(1) まず、本件同意の可否について町長に裁量が認められるか。
 土地の利用は本来自由であり、開発行為の不同意は侵害的性質を有する。一方で、本件条例は、土地開発行為の「適正化と秩序ある土地利用を図り、もって良好な環境の確保に寄与すること」(1条)を目的としており、その判断には行政の専門的・政策的判断が求められる。また、同意の基準として「町長が町民の適正な生活環境の確保のため特に必要と認める基準」(条例6条1項5号)という包括的な規定が置かれているほか、同意に条件を付すことも認められている(条例5条2項)。
 以上より、町長には同意の可否について一定の効果裁量が認められると解される。もっとも、上記5号に基づく裁量判断として例外的に不利益処分を行うことが許されるのは、その事由が「生活環境を害することが客観的に明白である場合」に限られると解すべきである。

  (2) では、本件不同意処分に裁量権の逸脱・濫用が認められるか。
 町長は「地元丙地区から承諾を得られないこと」を理由に不同意としているが、本件においては太陽光発電設備の設置によって生活環境を害することが客観的に明白であることの主張・立証は一切なされていない。客観的な被害の立証がないにもかかわらず、要件でない「地元の承諾」の不存在を決定的理由として不同意とすることは、条例6条1項5号の解釈を誤るものである。また、利害関係者の主観的な反対感情のみをもって客観的要件を満たす開発行為を拒むことは、実質的に地元住民へ事業の是非についての拒否権を与えるに等しい。これは、秩序ある土地利用を図るという条例の目的(1条)に反し、A社の営業の自由や財産権を正当な理由なく過度に制約するものであり、許されない他事考慮に当たる。
 乙町内では既に他社の4つの施設設置が認められている。本件計画は細目基準に適合しており他社に劣る点はないにもかかわらず、本来同意の要件ではない「地元の承諾」の有無という一事をもって、A社の申請にのみ不同意とすることは、合理的理由のない差別的取扱いであり、平等原則にも違反する。

4 以上からすると、本件不同意処分は裁量権の逸脱・濫用に当たり違法である。よって、本件不同意処分の取消訴訟におけるA社の勝訴の見込みは極めて高いといえる。

以上

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