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【参考答案】
1 Xの後訴請求は、Yが前訴において虚偽の事実を主張して勝訴判決(以下「前訴判決」という。)を取得したことが不法行為に当たるとして、前訴判決に基づき強制執行された金銭相当額の損害賠償を求めるものである。
もっとも、前訴判決たるYのXに対する損害賠償請求権の存在につき、既判力(民事訴訟法(以下法令名省略)114条1項)が生じ、後訴裁判所は前訴判決の判断内容に拘束され、当事者はこれに反する主張・立証を許されないのが原則である。一方、後訴におけるXの請求が認容されるためには、前訴判決の基礎となったYの損害賠償請求権が存在しなかったことが論理的前提となる。したがって、Xの請求は前訴判決の既判力と実質的に矛盾・抵触する関係にある。
そこで、前訴判決既判力の遮断効が及ぶ後訴において、前訴確定判決の不正取得を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求が許容されるかが問題となる。
2 既判力の趣旨は、紛争の蒸し返しを防止し、法的安定性を図る点にある。そのため、確定判決の内容に誤りがあるとしても、再審の訴え(338条)によって判決が取り消されない限り、その効力を否定できないのが原則である。
もっとも、判決が当事者の不正な行為によって取得された場合にまで、常に既判力を貫徹させることは、具体的妥当性を著しく害する。そこで、確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情がある場合に限り、例外的に、判決の効力を排除し、不法行為に基づく損害賠償請求が許容されると解する。
具体的には、①当事者の一方が相手方の権利を害する意図をもって、②相手方の手続関与を妨げ、又は虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔するなどの不正行為を行い、③その結果、本来あり得べからざる内容の確定判決を取得・執行した場合であって、④その行為が刑事罰に触れるなど高度な違法性を有し、実質的に相手方の手続的権利を侵害したと評価できる場合に、上記特別の事情に当たると解する。
3 Yは、本来Xらに対して有しない損害賠償請求権を行使し、強制執行によりXらから金銭を徴収しようとしていることから、Xらの財産的権利を害する意図(要件①充足)が認められる。また、Xの主張によれば、Yは、実際にはBから建築制限の具体的内容について説明を受け、また知人からも話を聞いてこれを知っていた。にもかかわらずYは前訴において「建築制限の具体的内容について説明がなく、居住・建替えが可能であると誤信して購入した」旨の虚偽の事実を主張し、これにより裁判所をして説明義務違反および因果関係等の要件事実が存在すると誤信させ、欺罔したといえる(要件②充足)。そして、上記欺罔の結果、裁判所はYの請求を正当なものと認めて認容判決を下した。仮にYが真実を述べていれば請求は棄却されていたはずであるから、Yは本来あり得べからざる内容の確定判決を取得し、さらにこれに基づいて強制執行を行い認容額を取り立てたといえる(要件③充足)。
しかし、Xは訴訟代理人を選任して手続に関与し、Yは建築制限について説明を受けており、具体的内容を知り得た旨の反論を行い、十分な防御活動を展開している。裁判所は、これらのXの主張や証拠を審理した上で、Yの請求を認容する判決を下し、これが確定したものである。そうすると、Xが後訴で主張する内容は、前訴ですでに争点となり審理判断された事項そのものであり、実質的に前訴の蒸し返しにすぎず、Xの手続的権利が実質的に侵害されたとは評価できない。また、Yの行為について、刑事罰に触れるような高度な違法性を帯びているといった事情も見当たらない。
したがって、本件においては上記④の要件を満たさず、「特別の事情」があるとはいえないため、Yの行為は不法行為法上の違法性を欠く。
4 よって、裁判所はXの請求を棄却すべきである。
以上

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