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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題33 訴訟手続の中断・受継

目次

 

【参考答案】

 1(1) 本訴の原告は誰か。第1審係属中に日本政府がX国からZ国へ政府承認を変更したことに伴い、Z国を新たな当事者とみるべきか、それとも当事者の同一性は維持されているか。当事者の確定基準が問題となる。

  (2) 当事者は、当事者能力(民事訴訟法(以下法令名省略)28条)や既判力の主観的範囲(115条1項)等の判断の基礎となることから、訴訟当初から明確に判断できる基準によって確定されるべきである。
 したがって、訴状の当事者欄の記載(134条2項)を基準として判断すべきである。
 ただし、具体的妥当性を図る見地から、訴状全体の記載等を合理的に考慮して判断すべきである。

  (3) 訴状の原告欄には「X国」と記載され、代表者としてX国駐日大使A、訴訟代理人として弁護士Bが記載されている。
 一方、国家という法主体は、革命等によって政府に変更があっても、通時的に同一性を保つものである。とすれば、本件訴状の表示を合理的に解釈すれば、当事者として確定されるべき者は、本訴提起当時にその国名を「X」としていたが、その後「Z」に変更されたにすぎない、「一定の支配地域を統治する国家たる法主体」であると解される。
 したがって、政府承認前後を通じて当事者は、XないしZの支配地域を統治する国家たる法主体であり、当事者の変更は生じていない。

 2(1) もっとも、日本政府がZ国を承認したことにより、当該国家を代表する政府がXからZへ交替したことになる。これは、法人における代表者の変更(37条、36条1項)と同視することができる。これにより、Xの代表権は消滅する。したがって、Z国承認以降のX国による訴訟行為は、代表される国家との関係では当然に無効となるはずである。
 一方、代表権消滅の効果は、本人又は代表者から相手方に通知をしなければ生じないと規定されている(37条、36条1項)。そこで、Yへの通知がなされていない場合であっても、条約によるZ国承認をもって代表権消滅の効果が生じるといえるか。

  (2) 36条1項の趣旨は、代表権という外観に対する相手方の信頼保護にある。一方、本件のような条約締結による政府承認は、客観的に認められる公知の事実であるから、相手方の不知を保護する必要はない。
 したがって、通知がなくとも、承認の時点で代表権消滅の効果が発生する。

 3(1) 代表権の消滅により、法人の代表者が資格を喪失した場合と同様に、原則として訴訟手続は中断し、新たな代表者が受継するまで進行しない(124条1項3号)。
 もっとも、原告には訴訟代理人Bが存在するため、手続は中断しないのではないか(124条2項)。

  (2) 124条2項の趣旨は、代理権は本人の死亡等により消滅せず(58条1項各号)、事件に通暁した代理人が承継人のためにも誠実に訴訟追行することが期待できる点にある。
 もっとも、本人が選任した代理人が承継人となる者との関係で誠実に訴訟追行することが期待できない事情が認められる場合には、124条2項を適用する前提を欠き、同項の適用は例外的に排除され、手続は中断すると解すべきである。

  (3) 本件では、原告たる国家を代表する権限を巡り、旧代表者であるX政府と新代表者であるZ政府は競合関係にある。したがって、両者の間には国家を代表する地位を巡る根本的な利害の対立が存在すると認められる。
 そうすると、旧代表者Xから委任を受けた訴訟代理人Bが、対立関係にある新代表者Zの利益のために従前の訴訟状態を引き継ぎ、誠実に訴訟追行をすることは到底期待できない事情があるといえる。したがって、本件では124条2項を適用する前提を欠いており、同項の適用は例外的に排除されると解すべきである。
 よって、本件訴訟手続はZ国承認の時点で中断し(124条1項3号)、新たな代表者Zが受継するまで進行しないことになる。

 4(1) そうすると、第1審は手続が中断しているにもかかわらず、これを進行し、判決を下したことになる。中断期間中になされた訴訟行為は原則として無効であるため(132条1項)、承認時以降の第1審手続および判決は無効な訴訟行為の積み重ねによってなされた法定代理人を欠く重大な違法状態にある。

  (2) 一方、判決が外形上存在している以上、訴訟経済の観点から、上訴によりこれを取り消すべき瑕疵ある判決と構成するのが妥当である。
 したがって、控訴審は本件控訴を有効に係属したものと扱った上で、手続違反のある第1審判決を取消し、Zに受継させるため、事件を第1審へ差し戻すべきである(307条1項類推適用)。

以上

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