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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題23 公示送達

目次

 

【参考答案】

1 本件において、Yは公示送達(民事訴訟法(以下法令名省略)110条1項1号、111条)により訴訟係属を知らないまま欠席判決を受け、判決が確定している。そこで、Yがこの確定判決の効力を争うための訴訟法上の救済手段として、①再審の訴え(338条1項3号類推適用)と、②控訴の追完(97条1項)が考えられる。

 2(1) 公示送達においては、受送達者が実際に裁判書類を受領する可能性は極めて低く、被告は手続に関与する機会を与えられないまま不利益な確定判決を受けることになる。このような被告の手続保障が欠ける事態は、訴訟代理権の欠缺により手続保障が与えられなかった場合と実質的に同視し得る。そこで、338条1項3号類推適用により、再審事由が認められないかが問題となる。

  (2) 338条1項3号の趣旨は、当事者が適切な訴訟関与の機会を奪われた場合に、救済の途を開くことにある。そこで、訴訟代理権の欠缺の場合に限らず、当事者に手続関与の機会が実質的に保障されていなかった場合には、同号の類推適用が認められると解する。
 もっとも、公示送達(110条)は、被告が訴訟係属を現実に知り得ないことを制度的に予定しているため、単に訴訟に関与できなかったことのみをもって直ちに手続関与の機会が奪われたとはいえない。一方で、公示送達の要件(110条1項各号)を満たしていないにもかかわらず、訴状等が公示送達の方法によって送達された結果、被告が訴訟に関与する機会を与えられないまま判決がされた場合には、当事者に手続関与の機会が実質的に保障されていなかったものとして、同号の再審事由が認められると解する。

  (3) 本件において、Xは、公示送達の申立てに先立ち、Yの住所について3回の調査報告と上申を行い、それぞれ判明した住所で送達を試みている。このようなXの真摯な調査の経緯に照らせば、本件申立ての時点において、客観的に「当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合」(110条1項1号)に該当し、公示送達の要件を充足するといえる。
 確かに、Xの訴訟代理人Aは、その後にBからYの住所通知を受けたにもかかわらず、これを放置している。しかし、その時点ですでに第1審の口頭弁論は終結しており、かつ、通知された住所はすでに送達が試みられ失敗していた場所であった。そのため、かかる通知を放置した事実をもって、遡って本件公示送達が要件を欠く不適法なものになったとは評価できない。

  (4) 以上より、本件公示送達は110条1項1号の要件を欠くものとはいえず、実質的に手続関与の機会が保障されていなかったとはいえないため、338条1項3号類推適用による再審事由は認められない。
 よって、Yは再審の訴えによる救済を求めることはできない。

 3(1) では、Yは「その責めに帰することができない事由」(97条1項)により不変期間である控訴期間を遵守できなかったとして、控訴の追完をなし得るか。
 いかなる場合に「その責めに帰することができない事由」が認められるか、条文上明らかでなく、問題となる。

  (2) 97条1項の趣旨は、両当事者の公平を図る点にある。
 そして、公示送達においては、被告がその事実を知らないのが通常であるから、単に公示送達の事実を知らなかったことのみをもって常に「その責めに帰することができない事由」があるとすれば、手続の安定を著しく害し、公示送達制度を不安定化させるおそれがある。他方で、原告が故意に不実の住所を申し立てたような事案においてまで、被告に一律に不利益を強いることも妥当ではない。
 そこで、「その責めに帰することができない事由」の有無は、受送達者の帰責性のみならず、申立人側の故意・過失の有無等を総合考慮して決すべきである。

  (3) まず、申立人であるX側の事情として、Xは公示送達の申立てに先立ち、Yの住所につき3回の調査報告と上申を行い、判明した各住所で送達を試みるなど真摯な調査を行っている。確かに、訴訟代理人Aが後にBからの住所通知を放置した事実があるものの、その時点ですでに第1審の口頭弁論は終結しており、かつ通知された住所はすでに送達が失敗した場所であった。これらに照らせば、X側に公示送達制度を悪用しようとする故意や重大な過失があったとはいえない。
 他方、受送達者であるY側の事情として、Yは第1訴訟の時点でXから第2訴訟を提起することを匂わされており、自己に対する訴訟提起を十分に予測できた。さらに、Yの訴訟代理人であるBは、職務上第1訴訟の経過を了知しているため第2訴訟がYに不利益な内容であることを容易に推測できた上、Aから住所を尋ねられたことでXが送達に苦労している事実も知っていた。にもかかわらず、Y及び職務上の責務を負うBは、送達場所の届出(104条)を行うなどの適切な対応をとることなく、漫然とこれを放置していた。したがって、Y側には早晩判決が言い渡されるであろうことへの高い予測可能性があったにもかかわらず、必要な手続上の対応を怠った帰責性が認められる。
 以上の事情を総合考慮すると、X側に強い非難可能性がないのに対し、Y側には訴訟の進行を予見しながら放置したことにつき強い帰責性が認められる。したがって、Yが控訴期間を遵守できなかったことについて、「その責めに帰することができない事由」があるとはいえない。

  (4) よって、Yによる控訴の追完も認められない。

4 以上より、Yは本件において、再審の訴え及び控訴の追完のいずれの救済も求めることはできない。

以上

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